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第2章
テリアと謎の男性と火に油3
しおりを挟むーー完全に油断していた。
何故だろうか。
その原因はぼんやりとしている。アリスティナの言っていた『カルロお兄様の本質はお優しい。』この言葉を信じきっていたから?カルロの過去を聞いて、アリスティナへのカルロを見てきたから、実物のカルロと軽口を叩く仲になっていたから?
理由は漠然としていているけれど、何処かで謎の信頼があった。
私に理不尽な事をカルロはしないのではないだろうかー…と。
しかしそれは思い違いで、カルロが王宮内で立場をより安定させる為に早急に私を排除しようと思われていたら。
子爵は罠で、カルロが私を手っ取り早く廃妃にする為に用意された罠。難癖をつけて私をスパッと処刑しようと言う魂胆だったのではないだろうか。
早くまともで政略的に必要な皇妃を得る為に。
ー…と言う、先程から威圧的なカルロの態度を見て、原因に心当たりのなかったテリアはあり得ない程超絶ネガティブな妄想に舵を切ろうとしている中、次に紡がれた言葉は予想に反するものだった。
「おまえの寝所は本殿に移す。」
「…ん?」
被害妄想にストップがかかった。
先程の超ネガティブな妄想通りテリアを廃妃にして迅速に良い縁談を持ち込みたいなら今の命令は周りの貴族からの縁談を遠ざけてしまう悪手である。という事はテリアにもわかる。
頭の上には多数のはてなマークが浮かんでしまう。
(カルロが何をしたいのかさっぱり分からないわ。わからないけど、そんな事をしたら周りにカルロが私にベタ惚れであると誤解をされて、後任皇妃を見つける足枷になるわね。)
前にも聞いた提案だが、テリアの身を考えてのものだった。なら何でこんなに怖い目をしているのだろう?
思えばさっきからカルロの様子が変だ。先程から紅蓮の瞳に宿る鋭く怒りを宿した瞳は感情的になっている。冷静なカルロとは程遠い。冷静さを欠いてしまう程の事があったという事だろうか。
「カルロ陛下、待って。何をそんなに危惧して怒っているのかわからないけど。
今の貴方は冷静さを欠いてるみたい「黙れ。」
カルロの様子がおかしい事に気が付いて、肩に手を置いて落ち着かせようとしたテリアの言葉は遮られ、伸ばした右腕はガシリと捕まれ引き寄せられる。
カルロの顔が間近まで迫る。反射的に後ろへ退こうとしても柱に当たってしまいそれ以上は下がれない。
「おまえは皇妃であり皇帝の妻だ。
つまり俺のものだと言う事を自覚しろ。
おまえの意思など関係なくな。
スピア、こいつを本殿に連れて行け。」
今までなら、怒りながらもテリア言い分を聞いてくれていたカルロが、今は何の聞く耳も持たない。それ程に怒っているのだ。
ーー何故カルロが此処まで怒っているのか。何が逆鱗に触れてしまったのか。テリアには検討もつかなかった。
あまりの横暴な言い分が頭にきて頬でも叩いてやろうかと思ったが、間近に見えるカルロの顔は今にも泣きそうで、自身の吐いた言葉に傷付いているように見えた。
カルロのそんな表情を見ていると自分の方がとてつもなく悪い事を言ってしまった気がしてきたテリアは居心地の悪さを感じ、返す言葉を引っ込めて俯いた。
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