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第2章
テリアと謎の男性と火に油2
しおりを挟むしんと静まり返った空間の中、はじめに口を開いたのはカルロだった。
「ほぅ…?おまえに愛人が居たとは初耳だな。」
「そりゃ、わざわざそんなー…モゴッ
ーーちょ、さっきからユラの手が喋るのを凄い邪魔してくるんだけど?!どう言う事?
視線をユラに向けると、その顔には〝それ以上余計な事言わないでください。〟と、まるで書いてあるかのように文字が見える
チラリとカルロを見ると、確かに此奴から放たれる空気が重苦しい。目元が髪の影になって見えないせいか余計に不安が立ち込めている。
どうやら、私が先程から処刑回避の為の必死な言い訳している内容が、ひたすら逆効果である事はそこでやっと気付いた。
「…ーてのは冗談でして。子爵と一緒に月見をし…モゴッ
(え!?これも不正解なの??じゃあ何が正解か教えて!!)
テリアが慌てふためきながら、様子を伺っているとカルロはそんなテリアを見て大きく長い息を吐いた。
そして片手を頭にやり、グシャリと髪を握り潰しかき上げる様子をも黙って見ていると、カルロはようやく落ち着気を取り戻したのか息をつくかの如く静かに声を発した。
「…成る程……、わかった。
俺はどうやら思い違いをしていたらしい。
男慣れしていないであろうおまえを慮って今まで俺なりにおまえの意思を尊重してきた。
本殿へ移って来るのを拒んで居たのは相引きするのに好都合と言う訳か?」
「ん?。」
私はいつカルロに慮られただろうか?
とんと検討もつかないけれど、どうやらカルロなりに気を使ってくれていたらしい。
顎に手を当てて首を傾げるテリアを尻目に、
「今よりおまえの宮は封鎖する。」
私の宮を…封鎖?封鎖も何も私の元へ訪れる人など殆ど居ないと言うのに、そんな事をして何がしたいのだろうか。
ーーいや、まって。今から封鎖って、誰も入れないようにする訳だからつまりは、私も立ち入れないという事なの?
いやいくら何でも急に横暴が過ぎる!
「待って、それじゃあ私は今日何処で眠れと言うの?
まさか、王宮内の庭園にでも野宿しろとでも言うの??」
そこでテリアはハッとした。
もしかして、今夜私は牢屋に繋がれるのでは??妹のフェリミアの時よりもカルロが皇帝になるには時期が数年早い。もしも、あの処刑がカルロが主導していたものだとしたならば
処刑の頃合いが早くなる事も十分にあり得る。
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