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第2章

テリアと謎の男性2

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「アネス子爵は、私にどのようなご用件があって此処へ参られたのですか?」


 
 単刀直入に言ってください、と言う眼差しを向けるとアネス子爵は少し照れたのか鼻筋をこすり、ほんのりと頬を染めた。


(やっぱり、不審者なのかな…?)

 怪訝に眉を潜めているテリアに気付いて、慌てながらも意を決して答えてくれた。


「その……、単刀直入と言われますとそれは…憚られると申しますか。
先程も申し上げましたように、皇妃様をお慰めしたいのです。」

 その結果先程から変な人認定が外れない。この人は一体此処へは何をしに来たのだろう。私に用事がある事だけは伝わってくるけれど。


「いえ。ですから、私は見ての通り泣いておりません。
よって慰めはいりません。

申し訳ありませんが…今は1人になりたいのです。もし此処をお使いになりたいとの事であれば私は移動しー…「愛人になりたいのです。」


「私は、皇妃様の愛人になりたいのです。」


「…あい……じん……??」

 聞き間違いかしら。私の人生において程遠いと思っていた別世界のワード。〝愛人〟って聞こえたような気がしたけれど、アネス子爵は否定せずただ頷いた。

「正気ですか?」
 
 アネス子爵の評判は聞いた事がある。と言うよりも、今夜の舞踏会に出る際の事前知識として学ばされている。

 確か、数多のご令嬢と浮名を共にした後、最近では未亡人の女性と噂になっていると言う近年評判のプレイボーイだとか。


(噂や他人の評価を全部間に受けるのは好きではないけれど、女性の影が多いのは本当の事なのよね。
もしも噂が本当なら、次は皇妃にも手をつけようと思い立ってしまったのかしら。
それとも、本当にただ私を心配していて、色んな女性に優しく声をかけるから凄くモテるとか…。)

 

「不遇な扱いを受け続けている貴女の話を聞く度に、私の胸は痛みました。」


「……。」

 

「そして先程、不躾な会場の視線に耐え忍んでいるお姿をお見かけした時に思ったのです。
皇妃様のお力になりたいと。」



「それで、私の愛人になりたいと…。」

「はい、既に聞き及んでいるかも知れませんが、近くカルロ陛下は側室を設けられるでしょう。
その後皇妃様がどうなるのかを考えると、余りにも気の毒でならないのです。

この王宮は、貴女のようなか弱き女性が1人で耐え続けるには寒すぎます。」


 

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