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第2章
テリアと謎の男性1
しおりを挟むカルロがテンペル公爵令嬢と話をしている時間とほぼ同時刻。
テリアは王宮の舞踏会場を抜け出して、外廊下にて1人夜空を見上げていると、舞踏会に招待された1人であろう貴族の男性から声をかけられていた。
「ー…ですから、そう言う訳で、私は貴方を慰める為に此処へ来たんです。」
急に「貴方を慰めたい」と言い出すから、変な人が出て来たなと警戒しながらも話を一通り聞いた結果、やはり感想は第一印象から動かなかった。
(うん、やっぱり変な人だ。)
会場の扉付近を護衛している兵士がいる事に、ひとまず安心しながらも男性に問いかけた。
「まだ皆様のお名前を全員把握しておらず申し訳ありません。
お名前をお伺いしても良いですか?」
「えっ?」
まるで知っていて当然だと言わんばかりに驚いた顔をされた。確かに皇妃として舞踏会参加者の顔と名前が一致していないのは不味いと自分でも思うけれど。
皇妃になって初めての舞踏会参加なのだから大目に見てくれら人でありますように。
「…確か、まだ会場でもお話はした事無いです。よね?」
「いや、先程カルロ陛下とご挨拶してくださいました。」
「………。」
「………。」
…気まずいやつだコレ。
沢山居たから覚えきれなかったようだ。参加者の名前は覚えたけれど顔を一致させて覚えきれなかった自分の記憶力が憎い。
これが、他の貴族令嬢だったなら。妹のフェリミアであれば挨拶をした全員の顔を瞬時に覚えきれるのだろう。そうで無くとも、普通皇妃になれるようなご令嬢は幼い頃から社交の場に出て顔を覚えていて当然だったりするのだと思う、多分。
瞬時に覚えられるような優秀さもなければ、幼い頃からの教養もない付け焼き刃。
(やっぱり、私に皇妃は向いていない。)
皇妃の適正が自分にあるかないかなど深く考えた事が無かったと言うのに何故かこの瞬間、痛烈に痛感してしまい俯き、無意識に自嘲的な笑みを浮かべる。テリアは今まで感じた事のない、虚しさを感じていた。
(…?何でこんなに気持ちになるんだろう。
前世からわかっていた事じゃない
そもそも近い将来此処から去る身なのに。
私は、今更何を…ー)
「ははっ!
皇妃様は王宮へ嫁がれてから初めての舞踏会参加であらせられます。
一度にあんな沢山は覚えられないのも当然ですよね。」
(…何、この人。もしかして良い人なの?)
「では改めてご挨拶申し上げます。アネス子爵領当主をしております、ロイ・アネスと申します。」
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