身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

文字の大きさ
上 下
81 / 121
第2章

皇帝に恋している大臣の娘の思惑《ケスラー公爵令嬢side》

しおりを挟む

 私はケスラー公爵家に生まれたリリィ・ケスラー。先日この国の皇帝になったカルロ陛下とは2歳違い。
 私は皇太子だったカルロ様の婚約者最有力候補だったのに、一度子供同士で会わされた直ぐ後に、第2王子が生まれて王宮の情勢がゆっくりと、変わっていった。

 カルロ様とは三度顔合わせをしたけれど、最初婚約に前向きだったお父様は最終的に婚約をさせてくれなかった。

 私は初めて出会ったころから、カルロ様に好意を抱いていたのに。泣いて嫌だ、カルロ様と結婚すると駄々をこねると、いつも私に甘いお父様は困り果てて、カルロ様の敵にはならない事で精一杯だと言った。

 本当は第2王子派につこうとしていたお父様を、中立に引き止めたのは私がいたからだ。

 なのに、皇妃となったのはあろう事か貧乏子爵家のご令嬢。話を聞いた当時はそれこそ絶望したけれど、直ぐに気分は晴れた。
 聞くところによると寵愛を受けていないどころか2人の仲は険悪なのだとか。それもそうだ。前皇妃が私のようにカルロ様に力を与えてしまう人物を遠ざけた嫌がらせ同然の人選なのだから。


 今では無事カルロ様は皇帝になった。
 後盾も無く、ましてやカルロ様を苦しめた前皇妃の策略で用意された寵愛もない皇妃が、いつどんな理由で廃されてもおかしくは無い。 その時は、今度こそ私が皇妃となる出番がきた。
 
 私こそが寵愛を受けるに相応しい。カルロ様も昔会った私の事を覚えているだろう。我家門はずっとカルロ様の敵にはならなかった数少ない名門。

 早く、皇妃には退いてもらわないとって考えているうちに皇妃主催のお茶会が開かれた。


 とんだ面の皮の厚さに、驚いたけれど、この際だから思いっきり嘲りの笑みを浮かべてやった。

 全然動じる様子のない皇妃に苛立ちを覚えた。

(まさか、自分の方が立場が上だからと、己に力があると勘違いしている阿呆では?)


 余裕の表情で皇妃活動に前向きになっている様子に先日お父様と会話した事を思い出す。



『今度おまえが皇妃様の茶会に出席している間、皇帝におまえとの縁談話を持っていこうと思う。
表向きは側妃と打診はするが、今の皇妃は、皇帝を貶める為あてがわれた者、もう少しすると理由をつけて廃される筈だ。

そうしたら次はリリィ、やっとおまえの出番だ。

その美貌と後盾を見れば直ぐにでも、〝是非おまえを皇妃に〟とお考えくださるだろう。』



 (ふ…これから自分がどうなるかも分かって居ないのでしょうね。間抜けなこと。)


 そう思っていたのに、お茶会から3日後お父様からは信じられない言葉が出てきた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー

「どうやら、皇帝は皇妃のことは動かす気配がない。それどころか、暫くは側妃を置くつもりもないようだ。」

 「え?何故なのですか?カルロ様とて早く身を固め安定する必要があるはず、特に皇妃は今後公務を担う者で…」

「わからん。皇帝はおいそれと考えている事を表には出さない。現皇帝は尚更、未だ周囲に警戒を怠っていないからな。

だがもしかすると…今の皇妃を気に入っているのかも知れん。」

「そんなまさか。カルロ様を貶める為に用意された何のメリットもなく、自分の立ち位置を理解できずお茶会など悠長に開く愚鈍な女ですよ?」
 

「…うむ、考えすぎなら良いが…。とにかく、あの皇妃は邪魔な事この上ない。そろそろ、不相応な地位から退いてもらわなくてはならない時期だな。」
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...