101 / 121
第2章
その夜は テリアside
しおりを挟む
夜もふけて皆が寝静まった頃、テリアは本殿敷地内の夜道を散歩しようと外に出た。
夜道は薄暗いので、片手に洋燈を持ち足元に気を付けてゆっくりと歩く。
このように遅い時間帯でも、此処から離れた位置に、見える舞踏会場は明るい。
ーーまだ、会場に人がいるのかしら。
そんな事を考えながら、辺りを見渡した。
強い光を放つ舞踏会場とは対照的に、暗闇で華やかさが鳴りを潜めた本殿敷地内は、点在しているランプの光が仄かな灯りで周囲を照らしている。
暖色の穏やかな明かりが、テリアの心を気持ちだけ落ち着けてくれた。
日中は存在感を放つ大木も、夜の中ではただ、枝先の葉が風に揺られ揺らめく音のみだ。
ーー大木か…此処へくる前は、木に登るの好きだったな、流石に今はしないけど。
目端に入った池に、ふと、フェリミアと幼い頃に言い争ったことを思い出した。
池にいる魚は眠るのか、眠らないのか。今思えば、些細なことだったのに私はムキになって魚も眠ると主張し続けたなぁ…。
根拠はなかったけど。
実際はどうなのか、少し興味が沸いたテリアは確かめるべく、忍び足で池に近寄ると、テリアの後ろから、可愛らしい声が呼びかけてきた。
「テリアお義姉様」
その声がフェリミアのものだと思ったのは、私はこの方と出会ったときから、2人を重ねて見ていたせいなのだろう。
「アリスティナ姫…」
自由に歩けるようになったアリスティナ姫は、最近外出する機会が格段に増えた。
数年間で王宮内の情勢が変わる中、自由に歩き回れるようになったアリスティナ姫もまた、どんどん成長して目覚ましく変わったと思う。
現在、外に行って何をしているのかは、カルロにすら秘密にしていると言う事だったけれど、アレンが得た情報では、獣人達も通える学校を創設する夢の為に奔走しているらしく、まずは獣人達の生活の安定化をすべく、地道に努力をしているようだ。
近頃では吹けば儚く散ってしまいそうだった少女の面影は既になく、今はそこには、気高く強く優しく成長をしている王族が居る。
「テリアお義姉様、私のことはアリスと呼んでくださいと何度も申し上げましたのに…」
夜道は薄暗いので、片手に洋燈を持ち足元に気を付けてゆっくりと歩く。
このように遅い時間帯でも、此処から離れた位置に、見える舞踏会場は明るい。
ーーまだ、会場に人がいるのかしら。
そんな事を考えながら、辺りを見渡した。
強い光を放つ舞踏会場とは対照的に、暗闇で華やかさが鳴りを潜めた本殿敷地内は、点在しているランプの光が仄かな灯りで周囲を照らしている。
暖色の穏やかな明かりが、テリアの心を気持ちだけ落ち着けてくれた。
日中は存在感を放つ大木も、夜の中ではただ、枝先の葉が風に揺られ揺らめく音のみだ。
ーー大木か…此処へくる前は、木に登るの好きだったな、流石に今はしないけど。
目端に入った池に、ふと、フェリミアと幼い頃に言い争ったことを思い出した。
池にいる魚は眠るのか、眠らないのか。今思えば、些細なことだったのに私はムキになって魚も眠ると主張し続けたなぁ…。
根拠はなかったけど。
実際はどうなのか、少し興味が沸いたテリアは確かめるべく、忍び足で池に近寄ると、テリアの後ろから、可愛らしい声が呼びかけてきた。
「テリアお義姉様」
その声がフェリミアのものだと思ったのは、私はこの方と出会ったときから、2人を重ねて見ていたせいなのだろう。
「アリスティナ姫…」
自由に歩けるようになったアリスティナ姫は、最近外出する機会が格段に増えた。
数年間で王宮内の情勢が変わる中、自由に歩き回れるようになったアリスティナ姫もまた、どんどん成長して目覚ましく変わったと思う。
現在、外に行って何をしているのかは、カルロにすら秘密にしていると言う事だったけれど、アレンが得た情報では、獣人達も通える学校を創設する夢の為に奔走しているらしく、まずは獣人達の生活の安定化をすべく、地道に努力をしているようだ。
近頃では吹けば儚く散ってしまいそうだった少女の面影は既になく、今はそこには、気高く強く優しく成長をしている王族が居る。
「テリアお義姉様、私のことはアリスと呼んでくださいと何度も申し上げましたのに…」
0
お気に入りに追加
2,116
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる