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第1章

テリアの心境

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『この決着は、皇太子が自らつけるのでしょう。私はそれを。ただ見ています。
だから貴方は皇帝になれません。』



(…何であんな事を…。だれか、私に〝目を覚ませ、正気に戻れ〟と殴ってください。)


「いつまでそうしているんですか?」


   アレンはベッドの上でうつ伏せになり、枕に顔を埋めているテリアに聞いた。

「…私さっき、遠回しにカルロ皇太子の肩持ってた?」

「そうですね。いつの間にそれ程仲良くなられたのか…」

「カルロ皇太子が皇帝になったら、私は処刑されるのだろうか?
その辺重要よね。」

「……されないとは、言えませんよね。
少なくともフェリミア様はされた訳ですし。」

 そうなんです。私は私を処刑するかもしれない人の肩を持つような事を言ってしまった。

 でも、アリスティナの話を聞いていたら、前世の事を思い出した。無実の罪で訳も分からず処刑された妹、フェリミアの事を。
 
 そうしたら、セリウムが赦せないと強く思ってしまい、頭に血が登ってたところに丁度よく現れるものだから…。

 これで後に私が処刑された日には…。

(私こそ哀れな存在に…)

「でも…。」

    アリスティナは言った。『本質はお優しい人です。』と。なら何故、カルロが皇帝となれた後に私の妹はあんな事になるのか。

 そう言えばフェリミアは『カルロ皇太子は変わります』と言ってたかな。

 異世界の聖女が現れて、その美貌にやられでもしたか?そんな、しょうもない理由だったらセリウム以上に赦せないけど…。

  ぐるぐる私がこうして考えても、真実は今のカルロにもわからない。
 過去のカルロにしか、わからないのだ。
 だからきっと、一生わかりようが無い。わかるとしたら、きっとこの先にいる未来のカルロに聞く他ない。






「…テリア様、これだけは言えます。
皇帝があの処刑を一切知らなかった訳も無いでしょう。

少なくとも、処刑を黙認しているはずです。」

「……。」

「ていうか、何悩んでるんですか?
今回のは究極の2択のうち選ぶならカルロ皇太子ってだけでしょう?」

「!」

「それとも、アリスティナ姫の言う通り、カルロ皇太子の側に居てずっと支えますか?」

「…そうね、そうだわ。この2択ならカルロ皇太子ってだけよ!

言わば私は究極の2択を選んだだけ!」


  そうだ。何を悩んで居たのだろうか。
 私はカルロ皇太子が権威を復活したらやっと、離縁の話を進めることが出来るようになる。


(そうよ、それに私はカルロ皇太子と約束したじゃない。)


 暗黒龍を討伐し、権威を復活出来た時に、事情は変わって多くの貴族がカルロの妃の座を狙ってくるだろう。

 言えば無事帰って来たら離縁の話はトントン拍子に前に進める環境になる。


「そ、そうか!」

 テリアが脈絡なく声を張り上げたので、アレンとユラは「?」と言った表情で見つめる。


 (カルロが出立前に言ってたあの言葉って…)


『帰ったら、覚悟しておけよ。』



(いよいよ、私とカルロ皇太子の初夜でした約束に本腰入れる事になるから、離縁の覚悟しておけよって事か。)

 納得したら妙にスッキリした。


「そうか…。なんだ。そうだよね。」

「?納得されたなら良かったです。
さぁ、今からダンスの先生が来ますから着替えて準備してください。」


 「はーい。」

 スッキリした事で、切り替え出来たテリアは身を起こして返事をした。


    (そうか…。そろそろ、その時が近いのか。)


 そして、準備をする為部屋から出て行ったアレンと、準備をしてくれているユラを見ながら、無意識に手が頬に触れる。


 見送りの時、腕を強く引かれて、カルロの胸板にくっついた頬が、今何となく気になったのだ。


「そっか……。」


  (納得してスッキリはしたんだけど、気持ちは晴れた気はしない。


…変な、気分……。)

 


 
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