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第1章

見送りの…

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 ある日王宮には特大ニュースが流れた。皇太子が暗黒龍討伐に乗り出したと言うニュースだ。

 王宮内での騒ぎをアレンとユラが教えてくれた。

 何でも、皆追い詰められた皇太子が血迷った行動を取り始めたと。

 そう言っていたらしい。

 今まで異世界の聖女がいないのに、暗黒龍討伐に乗り出した皇帝は建国以来居なかったと言う。

 何故なら異世界の聖女がつかう浄化の力で暗黒龍に物理攻撃可能にし、プラスアルファで皇帝にしか使えない大剣の威力を大幅強化するからだ。

 つまり異世界の聖女無くしてまず、物理攻撃出来るのかと言う疑問は当然皆湧いている。


 だけど、カルロは誰にも何も言わなかったらしい。

 討伐方法も、目的地も。思い立った理由も。

 


 余程、王宮内に信用している者が居ないのだろう。よく一緒に見かける護衛は皇帝が用意した人間だと言う。

 カルロはきっと、その人も心底信用している訳ではない。


(なのに、なんで。私達には話したんだろう。『昔此処に居た者が…手配してくれた』と。
確かに、今はいない聖女の力を頼らず。でもだから半年程も時間の掛かる方法がある。

外に協力者が居て、その人が獣人の隠れ里にある〝聖女の泉〟を探し当てて居たのなら、あの泉は、異世界の聖女の力が今もなお宿っている。それを使えば確かに可能になるのかも…ー)


 「おい。」


 「!カルロ皇太子、あれ、今日行くんじゃ…。」

「おまえは、俺の妻である自覚はゼロか?」


 (そうか。見送りに行かなきゃ可笑しいのか。こういう時。)


 テリアの様子を見て、カルロは小さくため息をついた。

「はぁ。もういい。
ただ念押しに来ただけだ。セリウムには近寄るなよ。下手な隙を作るな絶対に。」

(作ったらどうなるんだろう。この間、ユラに鞭を打とうとしてたし、セリウム王子は余程何かあるのかな…。

わかるのは、カルロ皇太子は、今から自分が危険な旅に出るのに。

私の心配をしてくれている。)



 初めの頃とは、違って来ている。


「……。」

  
「じゃあな。」


  黒いマントをバサリと翻して背を向けたカルロに、テリアは呼び掛けた。


「ちょっと待って。」

「…ー?」


 その呼びかけに足を止め、振り返ったカルロに、自分の首から外したネックレスをかざした。


「これ、アリスティナ姫が結婚前日に私にくれたやつ。御守り。多分ご利益ある。」

「?」


「あんたに貸すから。戻ってきたら返してよ。」

「……ー。」


    カルロは一瞬停止したが、次の動作はそのネックレスを受け取って、胸ポケットにしまった。


「ちゃんと。返してよ。」


    あまりにさっきカルロ皇太子が私に念押しをするものだから、私も何だかうつってしまった。

 カルロはただ突っ立って動かなくなった。(なかなか動かないなぁ)と思い、テリアが近くに寄って覗き込もうとした時ー…

 カルロがテリアの腕を引っ張り、その胸元に頬がついた。


「……??」

「……。いってくる。

帰ったら、覚悟しておけよ。」


  

 それから腕を離されて、唖然とした私を残して、カルロは暗黒龍の討伐に向かったー…。

 
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