身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

義弟の訪問

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 今日は勉強の休息日。羽を伸ばして忍んで街中にでも行こうと思っていたけれど、突然の来訪者がテリアの宮へ訪問して来たので急遽会う事になった。

 相手はセリウム第2王子5歳で、義姉が出来て嬉しいのだとか。


「ずっと来ようと思ってたんだけど、ボクとお義姉様のいる宮は真反対でしょう?なかなかこれなくて……。」

  そう可愛くしょんぼりしているのを見ていると、寧ろこちらから挨拶に行ってあげたらよかったかなぁと思う。


(それにしても…。)


 ユラとアレンに目配せする。

 2人とも〝余計な事言うんじゃない〟と視線が訴えかけてくる。

(やっぱり聞いてみたいけどダメか…でも気になる。)


 目の前にいるセリウムの後ろには10人近くの若いメイドがいる。
 侍女ではなくて、キャピキャピした感じの空間を感じる。

(…いやいや、変な邪推してはダメよね。相手はまだ5歳なんだよ、テリア。
きっと何か事情があるのよ。)


 テリアの視線を受けて、セリウムは答えてくれた。

「ぁあ、この子達?皆ボクのお気に入りなんだ。老婆や男に居られるより居心地良いでしょ?」


(……。今時の子は色々進んでるのねぇ。)

 感心しているテリアに、セリウムは笑顔で今度は自分の質問に答えてくれと言わんばかりに聞いて来た。

「ところで、義姉様は2人しか世話係がいないの?」

「ええ、そうよ。正直2人でも普段は手が余っちゃうくらい暇だわ。」

「そうなんだぁ、何でこの2人を選んだの?」
「2人とも、元いた子爵家から仕えてくれているの。優秀なのよ?」

「へぇ~」

 感嘆の声を上げてくれる幼子相手に胸を張る。その様子を見てアレンもユラもやれやれと言った様子だ。

 この後普通に会話して、最後にセリウム王子はこう言った。

「今度はボクの宮殿へ遊びに来てよ!
とっても広いんだよ。ここよりずぅっと!」

    幼子の言う事だ。悪気は無いんだろうけれど少し引っかかる。
 ここの宮は規模で言えば1番小さい奥まった位置にあると思う。気にした事がないのでそのままながした。

「そうなんですか、それは見てみたいですね。」

 社交辞令を初めて述べたテリアに成長が垣間見えたその瞬間、セリウムは目をキラキラさせて嬉しそうに満面の笑みで言った。


「本当?じゃあさ、明日来てよ!」

「え?」

「…いや?」


  潤んだ瞳に、悲しそうな顔をされ、コテンと首を傾げた子供に罪悪感がわいた。

「いえ、いやとかでは。じゃあ明日のこの時間に行きますね。」

「やったぁ!あ、そうだあのね、来る時は女の使用人だけしか連れて来たらダメだよ?」

「?何故ですか?」

「ボクの宮にはね、偉い人も出入りするから、兄上のお妃様が変な噂されたら困るでしょ?」


 (なんか、カルロもそんな事言ってたなぁ…小さい子でも分かる程、王宮はそういう目が厳しいのね。
ここは助言に従っておくか。)

「わかりました。では明日。予定が終わり次第お伺いします。」


 こうして、テリアは何故か義弟と交流を深める事になった。
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