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第1章

限られた灯の先に1

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 後は壁で引き返すことなど出来ない。
 蝋燭で照らされている道は、私達から30メートル先程しか照らされておらず、その先には何があるのか分からない深い闇が広がっている。隙間風なのか変な音が聞こえて来て、闇と蝋燭のコラボレーションが異様さを放っているので先に進むのが正直怖い。
 そう、これは昔妹のフェリミアと読んでいた本に出てくるゾンビが出る密室に繋がる通路のシーンを彷彿とさせる雰囲気がある。


「ー…じゃあ、アレン、先頭は貴方お願いね!」
「いや。此処はテリア様が先頭の方がよろしいかと。」

 私の執事は私の前だと長年こんな態度なので普段は気にし無いけど、たまに素直な執事を雇えば良かったと後悔している。

「や、やだぁ。まさかアレンってば暗闇苦手?びびっちゃったの??ぷぷっ!」
「いえ、テリア様は目を離すと何をしでかすのかわかったものではありませんから。視界に入ってくださっていると楽と言いますか。」
「あの暗い闇の先から怪物出てきたらどうするの?」
「ここは神聖な祠の中ですよ。そんな所に怪物いたら神聖の意味がわからないじゃ無いですか。
…ぁあ、そう言えばテリア様真っ暗闇が嫌なんでしたっけ。確か屋敷が停電したときもー…「ユラが先頭でよいかな?」

 拉致があかないので話をふる人を変えることにした。
 決して昔屋敷が停電したときおねしょした話を出されるのが嫌だったからではない。あの時のあれは妹のフェリミアとゾンビの怖い話をした後だったからだ。

 しかしお願いしようとしたユラもこういうホラーちっくな雰囲気が苦手なのか青い顔して首を横に振っている。
 知ってた。貴方こういうの苦手よね。私より。

 「……アレン…。」
「あ、やっぱトラウマでしたか、そうですよねおね「別にそんなトラウマないけど?私先頭でも平気ですけど?」

 半ばやけくそになりながらも、ずんずん歩みを進めて行くと暗さみだった部分の蝋燭は縮まった距離の分だけあかりを灯した。どうやら一定に30メートル先を灯してくれるようだ。

 その事にホッと胸を撫で下ろしながらも、暗闇の先に進んで行くと道を塞ぐ扉が出てきた。迷いなく押してみたけれど、微動だにせず、引いてみるためのドアノブがない。

「すぐ行き止まりになっちゃったね。どうしようか?」

 振り返ってみると、ユラが別の方を向いてじっと食い入るように何かを見ているので、視線の先を辿ると扉の蝋燭付近にある板があった。

「何て書かれているのか…わかりませんね。さっきアリスティナ姫が此処に入る時言っていた古代聖書文字なんでしょうか?」
 
 ユラにそれを聞かれても私はわからないですね。言っても座学は元々苦手だし、それでも最近やりこんでた方だけど。過去の事まで勉強する域に達してないし。

 何これ。こんなの文字も覚えなきゃいけないんだ。
 聖女になるのって大変なんだなぁ…皇妃教育で外国語も覚えなきゃだけど別途こんなの覚えなきゃなんて。無理が過ぎると思うの。

 まぁ、私は聖女にも皇妃にもならないしね。聖女になるのは皇妃になった者か、異世界から来た者のみだしそこまで勉強が到達する頃にはおさらばしてるよね。

 そんな雑念をテリアが抱いてる中、アリスティナが文字を解読してくれていた。

「〝願いを抱きし聖なる力を持つものよ。次の問いに答え前へ進まれたし。〟どうやらこの下に書いてある古代聖書の文字を正しい答えに並び替えてって事みたいです。」

 アリスティナから並び替える古代聖書文字の読み方を聞いてみたが、謎の解き方がさっぱりわからない。

「まぁ、文字はアリスティナ姫が読めるし、焦らずじっくり考えれば大丈夫そうよね!」


 「いえ、どうやら時間制限ありのようです。」


 アレンの冷静な声とは裏腹な不穏な内容の言葉。

  蝋燭で灯されるのは前後30メートルの道のみで、元来た道は真っ暗闇。だから振り返らないようにしていたけれど、前方の隙間風とは違った音が、後方の元来た道の暗闇の中から聞こえて来る。

 私達のスタートしたところは行き止まりだった筈なのに、元きた道からと無数の足音が聞こえて来た。暗闇でまだその姿は見てないけれど、なんかヒタヒタ言ってる


(こ…こんなホラー展開考えてなかったよぉぉ…)


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