身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

祠の入り口

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 事は、カルロ達が山のふもとに到着する20分前に遡る。テリア達は祠に入るための方法を考えていた。

 壁を押しても叩いても、中に入れる気配がしなかったのだ。
 周囲を見渡しても何かスイッチがある訳でもない。

「えー、何でかなぁ。此処の祠で間違い無いと思うんだけど…。」

 テリアのため息に、いつの間にか一緒に探すことになったアレンが反応する。

「何かわかるんですか?」
「…うん、何かあの泉と同じ物を感じてるんだけど…ー。」
「……。」

 
  「ー…アレン様、すみませんがこの場でグルリと一周して、私が辺りを見渡せるようしてくださいませんか?」

 アリスティナが何か気付いたのか、抱えていたアレンの腕の中でその身をおこして地面を見ながらそう言った。

 視線の先にある地面に刻まれた模様をじっと見据えている姿に、アレンは軸を動かさずにその場で一周見渡せるように動いた。

「…、見た事があります。この地面に書かれているもの。」

「え、模様にしか見えませんが何か意味あるんですか?」

「はい、これは模様ではなくて文字です。

これは神殿の歴史書に載っている古代聖書の文字。意味はゲートです。」

「……ゲート?何だか入り口っぽい名前ね。」

 
 アレンはうんうんと頷いているテリアと、地面を見て呟いた。

「聖なる力で入る事が出来る…ゲート….

…テリア様、地面に手をついて聖なる力を注ぐ事は出来ますか?」

「地面?」

「はい、この文字の上で、聖なる力を流し込む…みたいな事は出来ませんか。」

「ぁあ!どうなんだろう?何の詠唱もなしに出せるかな?」

 ぺたりと言われるままに、地面に手をついて、普段詠唱で聖なる力を使う時にしているように手先に集中する。
 すると、地面の刻み込まれた文字がテリアの手をついてる場所を中心に文字の上に立つテリア達を吸い込むように、渦巻く風と青色の光が放たれた。


ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 気付けば先程の空洞ではなく、道が続く洞窟に4人は立っており、続く道の両サイドにある蝋燭が仄暗く道を灯している。

 それを理解した直後、頭に何かが囁く。

  ー聖なる力を持つ者よ。力を超えたる願いは身の破滅である事を心得よ。ー

ー心得たれば汝らに試練を与えよう。我は試練の先に居るー



「…ところで皆んなで瞬間移動しちゃったけど、これ帰りどうする?」

「テリア様、それより今頭の中に不穏な言葉が過ぎったのですが…」

「ぁあ、何か。試練の先に誰かいるって言ってたね。この道の先にいるって事かな…。どうしよう?道が暗くて割と怖いね。」

 暗い所は結構苦手だ。
 やっぱ入るの辞めておけば良かったかも知れない。
 

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