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第1章
獣人の隠れ里3
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馬車の窓から見える景色が、深緑の木々一色になってきた頃、山道に入る前に馬車を近くの村に待機させ、アレンがアリスティナを抱えて急な山道を歩く事にした。
アリスティナは猫耳をピコピコさせて瞳を輝かせながら、辺りを見渡している。元々花や植物が好きなアリスティナは王宮では見た事もない植物に興味津々なようだ。
「凄い、人の気配が全く無いのね。それに何て澄んだ空気なのかしら。」
「そうですね…全く人の気配がありませんねぇ。」
アレンが相槌を打ちながらちらりとテリアを見る。
純粋に感動しているアリスティナとは違い、何処か含みのある言い方だ。
「いや、まだドルイドの滝に到着してないし!何その疑わし気な目は!!」
「…そもそも、そのドルイドの滝とやらにちゃんと着くのかも不安なのですが。」
視線を1番前に歩く猫にうつした。ドルイドの滝への道案内はやはり獣人の隠れ里が此処にあると知っているくらい、此処の道に詳しい猫に任せるのが1番だと思ったから後ろからついて行く事にしているのだけど。
さっきから人が通る道とは思えない所を多々通り数十分歩いている為、ただ適当に歩いてるだけでは無いかと言う疑惑がアレンから生まれているのが分かった。
アレンには全く忠義がたりてないと思う。
あからさまに私を痛い子だと思っている目だ。前世で最後まで私達の臣下で居たのは何かの間違いなのでは無いだろうかとさえ思う。
「全く、アレンはもっと私をうやま「この先に滝があるのは本当みたいですね。」
「へぇ?」
話を遮られた事で、変な声が出てしまった。
「滝?何処に?」
それから数分歩いて、岩場を潜った先には石垣に囲まれるも、岩で出来た神台に激しく滝が降り注ぎはねた水によりオーロラのみたいな虹がベールのように揺れている。
辺りは白い岩場に覆われており、草が一つもない。上を見上げると天井は空が見えるのみだ。
「これが、昔の聖女様が修行していた…。」
滝が降り注ぐ泉は青々としていて、確か底無しの泉とも呼ばれているらしい。
浅瀬まで歩みを進めて、水に手を浸らせるとしっとりとしていて、肌に心地よかった。
(美肌になりそう…いや、心無しか触った手が潤っている気がする。)
「アリスティナ姫、この泉の水、美肌になるかも知れませんよ!」
「て、テリア様!濡れた手で…」
濡れた手でアリスティナの頬をヒタリと触ったテリアに、ユラが慌てふためいて声をあげたが、アリスティナが気持ち良さそうに頬をほんのり紅くして笑むので言葉を止めた。
「浅瀬に足をつけてみませんか?
きっと気持ちが良いですよ!」
言いながらもテリアが1番はしゃぎながら靴を脱義捨てて、スカートをつまんで浅瀬でバシャバシャ足を突っ込み濡らしはじめていた。
その様子を見て、アリスティナがうずうずしてるようだったのでアレンはそのまま連れてゆき岸辺に座らせ、足を泉に浸してやると、泉にいた小魚が数匹集まってきた。
「わぁ…。綺麗な色。」
その小魚は彩り豊かで、王宮で飼われている魚と比べ物にならない位に美しい。
「外は、こんなにも美しい物で溢れていたのですね。」
「…。そうですね。」
アレンはアリスティナの言葉に相槌をうちながら、目を細めた。
「あれ、猫!そんな所で何をしてるの?」
滝の降り注ぐ裏側で、尻尾のみを出している猫に気が付いて、テリアは浅瀬から上がって石の足場をつたい、猫のいる場所まで歩いて行く。
(滝の裏側って迫力ある音して怖かったけど、こんな空間があるんだ…)
滝の裏側にある壁を猫は小さな手でカリカリと引っ掻いている。チラッとテリアを見て、肉球を引っ掻いていた場所に押し当てている。
「…。押せば、いいのね?」
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馬車の窓から見える景色が、深緑の木々一色になってきた頃、山道に入る前に馬車を近くの村に待機させ、アレンがアリスティナを抱えて急な山道を歩く事にした。
アリスティナは猫耳をピコピコさせて瞳を輝かせながら、辺りを見渡している。元々花や植物が好きなアリスティナは王宮では見た事もない植物に興味津々なようだ。
「凄い、人の気配が全く無いのね。それに何て澄んだ空気なのかしら。」
「そうですね…全く人の気配がありませんねぇ。」
アレンが相槌を打ちながらちらりとテリアを見る。
純粋に感動しているアリスティナとは違い、何処か含みのある言い方だ。
「いや、まだドルイドの滝に到着してないし!何その疑わし気な目は!!」
「…そもそも、そのドルイドの滝とやらにちゃんと着くのかも不安なのですが。」
視線を1番前に歩く猫にうつした。ドルイドの滝への道案内はやはり獣人の隠れ里が此処にあると知っているくらい、此処の道に詳しい猫に任せるのが1番だと思ったから後ろからついて行く事にしているのだけど。
さっきから人が通る道とは思えない所を多々通り数十分歩いている為、ただ適当に歩いてるだけでは無いかと言う疑惑がアレンから生まれているのが分かった。
アレンには全く忠義がたりてないと思う。
あからさまに私を痛い子だと思っている目だ。前世で最後まで私達の臣下で居たのは何かの間違いなのでは無いだろうかとさえ思う。
「全く、アレンはもっと私をうやま「この先に滝があるのは本当みたいですね。」
「へぇ?」
話を遮られた事で、変な声が出てしまった。
「滝?何処に?」
それから数分歩いて、岩場を潜った先には石垣に囲まれるも、岩で出来た神台に激しく滝が降り注ぎはねた水によりオーロラのみたいな虹がベールのように揺れている。
辺りは白い岩場に覆われており、草が一つもない。上を見上げると天井は空が見えるのみだ。
「これが、昔の聖女様が修行していた…。」
滝が降り注ぐ泉は青々としていて、確か底無しの泉とも呼ばれているらしい。
浅瀬まで歩みを進めて、水に手を浸らせるとしっとりとしていて、肌に心地よかった。
(美肌になりそう…いや、心無しか触った手が潤っている気がする。)
「アリスティナ姫、この泉の水、美肌になるかも知れませんよ!」
「て、テリア様!濡れた手で…」
濡れた手でアリスティナの頬をヒタリと触ったテリアに、ユラが慌てふためいて声をあげたが、アリスティナが気持ち良さそうに頬をほんのり紅くして笑むので言葉を止めた。
「浅瀬に足をつけてみませんか?
きっと気持ちが良いですよ!」
言いながらもテリアが1番はしゃぎながら靴を脱義捨てて、スカートをつまんで浅瀬でバシャバシャ足を突っ込み濡らしはじめていた。
その様子を見て、アリスティナがうずうずしてるようだったのでアレンはそのまま連れてゆき岸辺に座らせ、足を泉に浸してやると、泉にいた小魚が数匹集まってきた。
「わぁ…。綺麗な色。」
その小魚は彩り豊かで、王宮で飼われている魚と比べ物にならない位に美しい。
「外は、こんなにも美しい物で溢れていたのですね。」
「…。そうですね。」
アレンはアリスティナの言葉に相槌をうちながら、目を細めた。
「あれ、猫!そんな所で何をしてるの?」
滝の降り注ぐ裏側で、尻尾のみを出している猫に気が付いて、テリアは浅瀬から上がって石の足場をつたい、猫のいる場所まで歩いて行く。
(滝の裏側って迫力ある音して怖かったけど、こんな空間があるんだ…)
滝の裏側にある壁を猫は小さな手でカリカリと引っ掻いている。チラッとテリアを見て、肉球を引っ掻いていた場所に押し当てている。
「…。押せば、いいのね?」
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