身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

義妹とお出掛けする事にしました6

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 そう言ってテリアから右手が差し出された。
 2人の間に吹きぬける風が、瑠璃宮に咲き乱れる瑠璃の花びらを舞い上げ、その中で日の光を反射して輝く黄金色の瞳。

 刹那ー…カルロは、花びらに囲まれている少女の立ち姿が非常に美しく感じて息を呑んだ。

(ただの変な奴だと、ずっと思ってた。
だけど、たまにこの女…ー。)

「…アリスは、外へ行きたいのか?」

 無性に悔しくなって、奥歯を噛みしめたあとカルロはアリスティナへ問いかけた。

「はい、私は外に行きたいのです。」

「それは、昨日アリスが言っていた意味とは違う意図か?」

『誰にも見つからない場所で、静かに1人で死にたかったのです。』

 
 昨日アリスは、テリアに好感を抱いたから迷惑をかけないよう自分の望みは叶えないと言うような事を言っていた。
 なのに、こうも大人しく従っていると言うのは何故なんだ?
 別の理由が出来たとしか思えない。

「…はい、違います。」

「では何だ?何で昨日の今日で外に行きたいなどと言う。」

「皆が、私自身も私を諦めている中で、自らに降りかかり得る災いを承知で諦めないで最後まで足掻くと言ってくれる人がいる…。

それだけでは、理由になりませんか?」

 アリスが変わったと、昨日思っていたけれどまた変わってしまったようだ。
 そうだ、アリスが変わったのはごく最近で、このテリアに出会ってからだ。

 ずっと。吹けば消えるように儚く愛らしく笑っていたのに、今はその瞳の奥に希望を持っている様な、芯の強さを感じた。


「…ー。」

 俺の言った事に逆らう事なんかなかったアリス。

 でも、逆らってくれた事が嬉しいと感じてしまうのは、アリスは死を前向きに捉えるのをやめて、今は生きる為に足掻こうとしてくれているのがわかったからだ。
 そうだ、さっきイライラしていた原因がわかった。

 俺はアリスに生を諦めるのをやめろと、言いたかったのだと気付いた。

(くそ…これ以上反対する理由が…ーない。)

 目を閉じて
 
 深く
 
 深く息を吐いたカルロは、目を開けたと共に告げた。

「…夕刻までに戻れ。それが条件だ。」

  

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