身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

文字の大きさ
上 下
35 / 121
第1章

義妹とお出掛けする事にしました6

しおりを挟む
 そう言ってテリアから右手が差し出された。
 2人の間に吹きぬける風が、瑠璃宮に咲き乱れる瑠璃の花びらを舞い上げ、その中で日の光を反射して輝く黄金色の瞳。

 刹那ー…カルロは、花びらに囲まれている少女の立ち姿が非常に美しく感じて息を呑んだ。

(ただの変な奴だと、ずっと思ってた。
だけど、たまにこの女…ー。)

「…アリスは、外へ行きたいのか?」

 無性に悔しくなって、奥歯を噛みしめたあとカルロはアリスティナへ問いかけた。

「はい、私は外に行きたいのです。」

「それは、昨日アリスが言っていた意味とは違う意図か?」

『誰にも見つからない場所で、静かに1人で死にたかったのです。』

 
 昨日アリスは、テリアに好感を抱いたから迷惑をかけないよう自分の望みは叶えないと言うような事を言っていた。
 なのに、こうも大人しく従っていると言うのは何故なんだ?
 別の理由が出来たとしか思えない。

「…はい、違います。」

「では何だ?何で昨日の今日で外に行きたいなどと言う。」

「皆が、私自身も私を諦めている中で、自らに降りかかり得る災いを承知で諦めないで最後まで足掻くと言ってくれる人がいる…。

それだけでは、理由になりませんか?」

 アリスが変わったと、昨日思っていたけれどまた変わってしまったようだ。
 そうだ、アリスが変わったのはごく最近で、このテリアに出会ってからだ。

 ずっと。吹けば消えるように儚く愛らしく笑っていたのに、今はその瞳の奥に希望を持っている様な、芯の強さを感じた。


「…ー。」

 俺の言った事に逆らう事なんかなかったアリス。

 でも、逆らってくれた事が嬉しいと感じてしまうのは、アリスは死を前向きに捉えるのをやめて、今は生きる為に足掻こうとしてくれているのがわかったからだ。
 そうだ、さっきイライラしていた原因がわかった。

 俺はアリスに生を諦めるのをやめろと、言いたかったのだと気付いた。

(くそ…これ以上反対する理由が…ーない。)

 目を閉じて
 
 深く
 
 深く息を吐いたカルロは、目を開けたと共に告げた。

「…夕刻までに戻れ。それが条件だ。」

  

しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう
恋愛
アンジェラ編 幼い頃から大好だった。彼も優しく会いに来てくれていたけれど… 彼が選んだのは噂の王女様だった。 初恋とさよならしたアンジェラ、失恋したはずがいつのまにか… ミラ編 婚約者とその恋人に陥れられて婚約破棄されたミラ。冤罪で全て捨てたはずのミラ。意外なところからいつのまにか… ミラ編の方がアンジェラ編より過去から始まります。登場人物はリンクしています。 小説家になろうに投稿していたミラ編の分岐部分を改稿したものを投稿します。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず
恋愛
 わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。  さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。  ……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。  ※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

純白の檻からの解放~侯爵令嬢アマンダの白い結婚ざまあ

ゆる
恋愛
王太子エドワードの正妃として迎えられながらも、“白い結婚”として冷遇され続けたアマンダ・ルヴェリエ侯爵令嬢。 名ばかりの王太子妃として扱われた彼女だったが、財務管理の才能を活かし、陰ながら王宮の会計を支えてきた。 しかしある日、エドワードは愛人のセレスティーヌを正妃にするため、アマンダに一方的な離縁を言い渡す。 「君とは何もなかったのだから、問題ないだろう?」 さらに、婚儀の前に彼女を完全に葬るべく、王宮は“横領の罪”をでっち上げ、アマンダを逮捕しようと画策する。 ――ふざけないで。 実家に戻ったアマンダは、密かに経営サロンを立ち上げ、貴族令嬢や官吏たちに財務・経営の知識を伝授し始める。 「王太子妃は捨てられた」? いいえ、捨てられたのは無能な王太子の方でした。 そんな中、隣国ダルディエ公国の公爵代理アレクシス・ヴァンシュタインが現れ、彼女に興味を示す。 「あなたの実力は、王宮よりももっと広い世界で評価されるべきだ――」 彼の支援を受けつつ、アマンダは王宮が隠していた財務不正の証拠を公表し、逆転の一手を打つ! 「ざまあみろ、私を舐めないでちょうだい!」

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

処理中です...