身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

義妹とお出掛けする事にしました3

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  次の日も、テリアは瑠璃宮を訪れた。
 テリアの中で出した結論と共に。

「アリスティナ姫、王宮から出ましょう。」

「え?」

  驚いてぱちぱち瞬きを繰り返しているアリスティナに、目の前に置かれた紅茶を一気に飲み干したテリアは、ティーカップをガチャンとおきそうになって、途中で我にかえってそっと置く。

「前に王宮から出たいって言ってたじゃないですか!
あれは、自由な外の景色を見て、こう…元気になりたかったんですよね!」

「いや…あ、あれは……。」

「確かに、感性が敏感である猫の獣人の姫様が、得体の知れないこと考えてる人達がウヨウヨいる所に閉じ込められたら、気が滅入るのもわかります。
病は気からと言いますし。

外に出るという方法も一理あります。」

「でも、もし外出先で私に万が一の事があったら…、テリア様が…ー」

「大丈夫、外の空気吸えば元気になりますよ。」

 アリスティナは戸惑いながら、テリアの隣でげっそりしている執事と侍女を見つめる。
 ユラは首を横に振って、アリスティナの耳元で小さい声で言った。

「止めるだけ無駄です。
私達も昨日からこれを聞いて散々止めました。」

 呆然としているアリスティナに、風呂敷を広げてテリアは服を取り出した。

「はい!外に出るには身軽な格好ね、ユラ、アリスティナ姫の着替えを手伝ってあげて!」

「かしこまりました。」

 テリアはアレンをつれて、一旦外に出て身支度を整えるのを待った。
 その間、瑠璃宮殿の廊下にかかる写真を指差しながらはしゃいでいる。

「見てアレン、この人髭がへんだわ。でもかなり念入りにセットしないとこの形は無理よね…。」

「そんな事より、もう一度聞きますが本当に何をしようとしてるのか分かってますか?」

「わかってるわよ、でもこのまま何もしないなんて有り得ないわ。可能性があるなら試すべきよ。」
.
「貴方は、人の事に構ってるほど余裕は無いのも知っていますか?
ユラとわたしも危険なのですが。」

「あら、こんな私と共に宮殿に来ると、覚悟を決めたのではなかったの?

怖いなら、今からでも子爵家に戻すよう手配するわ。」

  にやりと笑うテリアの顔に、アレンは目を細めて口角を上げた。
 

「ー…ご冗談を。


我儘をお申し付けくださりこの上なき誉です。テリアお嬢様。」

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