上 下
30 / 121
第1章

義妹とお出掛けする事にしました1

しおりを挟む
 アレンを執事として王宮で雇いたい旨を申請すると、1週間くらいで通った。

 ユラの時は時間が掛かったけど、一応皇太子妃からの細やかなお願いは、通りやすいらしい。

 フェリミアのお茶会の後、私はアリスティナ姫の様子が気になって、毎日面白い話をする為に通った。(勿論カルロ皇太子の予定を見て、来ない時間に。)

 話していると、笑ってくれるし、とてもじゃ無いけど寿命が短いなんて信じられない。

 今日もアレンを紹介するために、会いに行ってみた。
 感性が鋭く、人間と関わるのが難しいと聞いているのが嘘みたいに、耳を嬉しそうにピコピコさせてユラとアレンが居ることを受け入れてくれた。

  だけど平穏に2週間が過ぎようとした帰り際、アリスティナは話したい事があると切り出したのだ。

「どうしましたか?アリスティナ姫。」

「テリア様、貴方気付いているのですよね。私がもう、永くはない事。」

 唐突に聞かれた言葉を聞かなかった事にしたかった。
 黙りをするテリアに、アリスティナはクスッと笑って言った。

「私は、もう長い事その覚悟をしてきたから。
怖い時もあったけど、もう良いとも思えるの。
だけど、心配が一つあって、カルロお兄様なのですが…」

「そうです。
あの皇太子はメンタル弱々なのでアリスティナ姫がそんなことになったら、メソメソしながら周りに大迷惑かけるので、永くないなんて…そんな事言うの、やめてください。」


「…ふふっ、お兄様がメソメソなんて…あははっ! テリア様ったら、面白い事を…」

(いや、冗談じゃなくて本気なんですよ。)

 クスクス笑うアリスティナにこの心の訴えは届かないようだ。

「急に、気弱な事を申されるので…
何か、あったのですか?」

「…何となくでしょうか、本当はもうとっくにこの命は終わると思っていたのですけど…テリア様に会ってから、何故か身が軽くなったんです。

でもそれも、そろそろ限界が来ました。
多分もって、あと3日でしょうか。」

「…何でそんな悲しい事を、言うんですか。

私と友達になってまだ1ヶ月しかたっていないから、私が、悲しくないと思いますか?」

 珍しく怒った口調のテリアに、アリスティナは少し驚いて目を見開いた。
 でも、次の瞬間には優しく慈愛に満ちた笑みを浮かべる。

「すみません。テリア様。
だけど、テリア様にどうしてもお伝えしたくて。」

「…遺言なら聞きません。
弱気な事ばかり言うからダメなのです。
前も予想が外れたのなら、また外れますよ。

だって、アリスティナ姫はまだ美しく笑えるのですから。」

 プイッとそっぽむいたテリアに、アリスティナは嬉しそうに目を細める。
 そっぽを向いてしまったテリアの頬に手を添えて言った。

「お願いします。テリア様。」

 
 アレンをテリアの執事にしてくれと言った時のフェリミアのすがる眼差しとよく似ている。
 妹大好きのテリアはこの表情に弱かった。

「…聞くだけですよ。」

 パァッと嬉しそうな表情をされたらもう、耳も塞げない。

「カルロお兄様の、側にずっと居て支えてあげて欲しいのです。
テリア様の言う通り、ぁあ見えてお兄様はずっと1人で怯えている哀れなお方ですから。」


(そのお願いはちょっと…難しい…かな……)

「そ…そんな、カルロ殿下はとっても強いですよ。もう私なんか居たら足手纏いですし。
あははっ。」

(あ。耳が…ペタンってなってる。)

「万が一、アリスティナ姫に…何かあったら、あくまでも、アリスティナ姫に何かあったらですよ。

まぁ…(側にずっといるかは置いといて。)カルロ皇太子の幸せを見届けましょう。」
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

処理中です...