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第1章
義妹とお出掛けする事にしました1
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アレンを執事として王宮で雇いたい旨を申請すると、1週間くらいで通った。
ユラの時は時間が掛かったけど、一応皇太子妃からの細やかなお願いは、通りやすいらしい。
フェリミアのお茶会の後、私はアリスティナ姫の様子が気になって、毎日面白い話をする為に通った。(勿論カルロ皇太子の予定を見て、来ない時間に。)
話していると、笑ってくれるし、とてもじゃ無いけど寿命が短いなんて信じられない。
今日もアレンを紹介するために、会いに行ってみた。
感性が鋭く、人間と関わるのが難しいと聞いているのが嘘みたいに、耳を嬉しそうにピコピコさせてユラとアレンが居ることを受け入れてくれた。
だけど平穏に2週間が過ぎようとした帰り際、アリスティナは話したい事があると切り出したのだ。
「どうしましたか?アリスティナ姫。」
「テリア様、貴方気付いているのですよね。私がもう、永くはない事。」
唐突に聞かれた言葉を聞かなかった事にしたかった。
黙りをするテリアに、アリスティナはクスッと笑って言った。
「私は、もう長い事その覚悟をしてきたから。
怖い時もあったけど、もう良いとも思えるの。
だけど、心配が一つあって、カルロお兄様なのですが…」
「そうです。
あの皇太子はメンタル弱々なのでアリスティナ姫がそんなことになったら、メソメソしながら周りに大迷惑かけるので、永くないなんて…そんな事言うの、やめてください。」
「…ふふっ、お兄様がメソメソなんて…あははっ! テリア様ったら、面白い事を…」
(いや、冗談じゃなくて本気なんですよ。)
クスクス笑うアリスティナにこの心の訴えは届かないようだ。
「急に、気弱な事を申されるので…
何か、あったのですか?」
「…何となくでしょうか、本当はもうとっくにこの命は終わると思っていたのですけど…テリア様に会ってから、何故か身が軽くなったんです。
でもそれも、そろそろ限界が来ました。
多分もって、あと3日でしょうか。」
「…何でそんな悲しい事を、言うんですか。
私と友達になってまだ1ヶ月しかたっていないから、私が、悲しくないと思いますか?」
珍しく怒った口調のテリアに、アリスティナは少し驚いて目を見開いた。
でも、次の瞬間には優しく慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「すみません。テリア様。
だけど、テリア様にどうしてもお伝えしたくて。」
「…遺言なら聞きません。
弱気な事ばかり言うからダメなのです。
前も予想が外れたのなら、また外れますよ。
だって、アリスティナ姫はまだ美しく笑えるのですから。」
プイッとそっぽむいたテリアに、アリスティナは嬉しそうに目を細める。
そっぽを向いてしまったテリアの頬に手を添えて言った。
「お願いします。テリア様。」
アレンをテリアの執事にしてくれと言った時のフェリミアのすがる眼差しとよく似ている。
妹大好きのテリアはこの表情に弱かった。
「…聞くだけですよ。」
パァッと嬉しそうな表情をされたらもう、耳も塞げない。
「カルロお兄様の、側にずっと居て支えてあげて欲しいのです。
テリア様の言う通り、ぁあ見えてお兄様はずっと1人で怯えている哀れなお方ですから。」
(そのお願いはちょっと…難しい…かな……)
「そ…そんな、カルロ殿下はとっても強いですよ。もう私なんか居たら足手纏いですし。
あははっ。」
(あ。耳が…ペタンってなってる。)
「万が一、アリスティナ姫に…何かあったら、あくまでも、アリスティナ姫に何かあったらですよ。
まぁ…(側にずっといるかは置いといて。)カルロ皇太子の幸せを見届けましょう。」
ユラの時は時間が掛かったけど、一応皇太子妃からの細やかなお願いは、通りやすいらしい。
フェリミアのお茶会の後、私はアリスティナ姫の様子が気になって、毎日面白い話をする為に通った。(勿論カルロ皇太子の予定を見て、来ない時間に。)
話していると、笑ってくれるし、とてもじゃ無いけど寿命が短いなんて信じられない。
今日もアレンを紹介するために、会いに行ってみた。
感性が鋭く、人間と関わるのが難しいと聞いているのが嘘みたいに、耳を嬉しそうにピコピコさせてユラとアレンが居ることを受け入れてくれた。
だけど平穏に2週間が過ぎようとした帰り際、アリスティナは話したい事があると切り出したのだ。
「どうしましたか?アリスティナ姫。」
「テリア様、貴方気付いているのですよね。私がもう、永くはない事。」
唐突に聞かれた言葉を聞かなかった事にしたかった。
黙りをするテリアに、アリスティナはクスッと笑って言った。
「私は、もう長い事その覚悟をしてきたから。
怖い時もあったけど、もう良いとも思えるの。
だけど、心配が一つあって、カルロお兄様なのですが…」
「そうです。
あの皇太子はメンタル弱々なのでアリスティナ姫がそんなことになったら、メソメソしながら周りに大迷惑かけるので、永くないなんて…そんな事言うの、やめてください。」
「…ふふっ、お兄様がメソメソなんて…あははっ! テリア様ったら、面白い事を…」
(いや、冗談じゃなくて本気なんですよ。)
クスクス笑うアリスティナにこの心の訴えは届かないようだ。
「急に、気弱な事を申されるので…
何か、あったのですか?」
「…何となくでしょうか、本当はもうとっくにこの命は終わると思っていたのですけど…テリア様に会ってから、何故か身が軽くなったんです。
でもそれも、そろそろ限界が来ました。
多分もって、あと3日でしょうか。」
「…何でそんな悲しい事を、言うんですか。
私と友達になってまだ1ヶ月しかたっていないから、私が、悲しくないと思いますか?」
珍しく怒った口調のテリアに、アリスティナは少し驚いて目を見開いた。
でも、次の瞬間には優しく慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「すみません。テリア様。
だけど、テリア様にどうしてもお伝えしたくて。」
「…遺言なら聞きません。
弱気な事ばかり言うからダメなのです。
前も予想が外れたのなら、また外れますよ。
だって、アリスティナ姫はまだ美しく笑えるのですから。」
プイッとそっぽむいたテリアに、アリスティナは嬉しそうに目を細める。
そっぽを向いてしまったテリアの頬に手を添えて言った。
「お願いします。テリア様。」
アレンをテリアの執事にしてくれと言った時のフェリミアのすがる眼差しとよく似ている。
妹大好きのテリアはこの表情に弱かった。
「…聞くだけですよ。」
パァッと嬉しそうな表情をされたらもう、耳も塞げない。
「カルロお兄様の、側にずっと居て支えてあげて欲しいのです。
テリア様の言う通り、ぁあ見えてお兄様はずっと1人で怯えている哀れなお方ですから。」
(そのお願いはちょっと…難しい…かな……)
「そ…そんな、カルロ殿下はとっても強いですよ。もう私なんか居たら足手纏いですし。
あははっ。」
(あ。耳が…ペタンってなってる。)
「万が一、アリスティナ姫に…何かあったら、あくまでも、アリスティナ姫に何かあったらですよ。
まぁ…(側にずっといるかは置いといて。)カルロ皇太子の幸せを見届けましょう。」
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