29 / 121
第1章
悲しき物語3
しおりを挟む
それまで2人の会話を見守っていたアレンはテリアの手に持っているカップの僅かな揺れに気付いていた。
そして一歩進み出る。
「テリアお嬢様、わたしからもお伝えしたい事があります。」
「どうしたの?アレン。」
「わたしをテリアお嬢様仕えの執事になれるよう、申請してください。」
「貴方を?
でも、そんな事したらフェリミアを1人にしてしまうわ。」
アレンの申し出を却下しようとしたテリアに、フェリミアが慌てて付け加える。
「テリアお姉様、私からもお願いします。
信用出来るものを多くその身の近くに置いてください。」
「でも……。」
(フェリミアはまだ前世で受けた仕打ちを忘れられていない。誰かが側にいた方が私も安心だわ。)
尚も拒否しようと、口を開きかけると、目の前には、その瞳に涙をいっぱい溜めて今にも縋り付きそうな勢いのフェリミアがいた。
「わ、わかったわ。でもアレン、貴方は本当に良いの?
王宮はとても危険な場所なのよ。」
「だからこそ、テリアお嬢様をこのままには出来ないでしょう。
わたしは貴方の、執事なのですから。」
久々に真剣で誠実な眼差しに、前世のアレンを思い出す。子爵家が落ちぶれて断罪されるも、最後まで仕えてくれた忠臣。
いつも小馬鹿にしてきたり、主人に対して毒舌な事を言ってくるが、本当に困った時にこの執事が頼りになる事は知っている。
だからこそ、ユラにもアレンにも王宮にはきて欲しくなかったけれど、自分が何も出来なかったと言う焦燥感も知っているだけに拒否をしきれない…。
「わかったわ、私は絶対生きて此処を出る。
勿論貴方達を守る為にも力をつけるわ。
だから、貴方も力を貸してくれる?」
そう言って首を傾けるテリアに、アレンは右手を左胸にあて、唇の両端をあげるとお辞儀をして答えた。
「仰せのままに。」
そして一歩進み出る。
「テリアお嬢様、わたしからもお伝えしたい事があります。」
「どうしたの?アレン。」
「わたしをテリアお嬢様仕えの執事になれるよう、申請してください。」
「貴方を?
でも、そんな事したらフェリミアを1人にしてしまうわ。」
アレンの申し出を却下しようとしたテリアに、フェリミアが慌てて付け加える。
「テリアお姉様、私からもお願いします。
信用出来るものを多くその身の近くに置いてください。」
「でも……。」
(フェリミアはまだ前世で受けた仕打ちを忘れられていない。誰かが側にいた方が私も安心だわ。)
尚も拒否しようと、口を開きかけると、目の前には、その瞳に涙をいっぱい溜めて今にも縋り付きそうな勢いのフェリミアがいた。
「わ、わかったわ。でもアレン、貴方は本当に良いの?
王宮はとても危険な場所なのよ。」
「だからこそ、テリアお嬢様をこのままには出来ないでしょう。
わたしは貴方の、執事なのですから。」
久々に真剣で誠実な眼差しに、前世のアレンを思い出す。子爵家が落ちぶれて断罪されるも、最後まで仕えてくれた忠臣。
いつも小馬鹿にしてきたり、主人に対して毒舌な事を言ってくるが、本当に困った時にこの執事が頼りになる事は知っている。
だからこそ、ユラにもアレンにも王宮にはきて欲しくなかったけれど、自分が何も出来なかったと言う焦燥感も知っているだけに拒否をしきれない…。
「わかったわ、私は絶対生きて此処を出る。
勿論貴方達を守る為にも力をつけるわ。
だから、貴方も力を貸してくれる?」
そう言って首を傾けるテリアに、アレンは右手を左胸にあて、唇の両端をあげるとお辞儀をして答えた。
「仰せのままに。」
0
お気に入りに追加
2,115
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

皆様ごきげんよう。悪役令嬢はこれにて退場させていただきます。
しあ
恋愛
「クラリス=ミクランジェ、君を国宝窃盗容疑でこの国から追放する」
卒業パーティで、私の婚約者のヒルデガルト=クライス、この国の皇太子殿下に追放を言い渡される。
その婚約者の隣には可愛い女の子がーー。
損得重視の両親は私を庇う様子はないーーー。
オマケに私専属の執事まで私と一緒に国外追放に。
どうしてこんなことに……。
なんて言うつもりはなくて、国外追放?
計画通りです!国外で楽しく暮らしちゃいますね!
では、皆様ごきげんよう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる