身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

初夜を迎えました

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 つつがなく、式が行われました。当日は色々と忙しく時間が取れないので、フェリミアとアレンには明日面会できる予定だ。

 因みに、忙しい理由の一つが初夜の準備。

 全くもってふざけた理由だ。
 ただ一緒に寝るだけなのに、どんだけ丁寧に磨かれるのか。

 ベッドに私がいたらあの短気皇子怒り狂うぞ~。ソファで寝ろとか言われそう。
 絶対ベッドは譲らない。私これでも令嬢だからベッドじゃ無いと眠れないしね。

 早い者勝ちだと思った私は先にベッドに潜り込んで寝転んだ。

 これでベッドは私のもんだ。

ーガチャ


 部屋の扉が開いた。
(ふっ。一足遅かったね短気皇子。もはやベッドは私のものさ。)

 狸寝入りをして交渉の余地が無いことをアピールする。

 ベッドの反発感で、カルロがベッドに登ってきたのがわかる。

(私が寝てるか確認してるわね。
既に寝ている人間を起こさないでしょう。ふふふふ。諦めなさい。)

「おい。もっと詰めろ。」

「ん?一緒に寝る気なのですか??」

 思わずぱっちり目を開いて聞いてしまった。

「他に何処で寝るんだ。」

「ソファが、ほらそこに。」

「おまえがそっちで寝ろ。」

 「殿下私と同衾するのは平気なのですか?
何か潔癖なくらい女嫌いなんですよね?」

「…俺は、女が嫌いな訳じゃない。
嫌いな奴が多いだけだ。」

(そういや、フェリミアによると7年後は聖女とイチャラブしてたんだっけ。)

「そ。殿下が気にしないならいいのです。私は元々気になんないタイプですから。

おやすみ~」

 何だ、警戒してたより初夜チョロかった。
 取り敢えず一緒に寝るの今日だけだしね。

 眠りにつこうと、カルロに背を向けて目を閉じた。
 カルロは布団に足をいれたまま、座っている。何かを考えているようだった。
 背を向けているテリアを一瞥すると、話しかけた。
 
「…おまえ。」

「…?(何か話しかけられてる?)」

 背を向けていた身を反対に転がして、座ったままのカルロを見上げる。

「おまえが俺の思っていた奴と違うのは、もうわかった。
だけど、おまえは前提条件が悪すぎる。」

 (急に喧嘩売られた?買っとくか?)

「はぁ。」

「俺の妹を、見ただろ。あいつは、王宮での立場も弱ければ、致命的なまでに身体が弱い。

後ろ盾もないのに…適切な治療が無ければ…直ぐにでも死んでしまう。」

「…。」

「俺しか、あいつの後ろ盾になってやる奴が居ない。俺が王宮で舐められる訳にいかないんだよ。

俺が今から努力して何とかなる事なら何でもする。だがそれも、限界がある。

おまえには、皇位に着くまでに離縁する事に協力して欲しい。」

 ふとー…処刑場でフェリミアを見ている時の自分を思い出した。

ーごめん、ごめんね。腕も立たない、頭も悪い。貴方を救えないー

 私はあの時、努力なんかした事なくて、執事と侍女の助けがあって、辿り着いた処刑場で妹を連れ出すことも出来なかった。

(この皇子は私より全然ちゃんとしてたのね。短気だけど。)

 カルロ皇子は、文武両道と有名だ。
 最近は授業をサボっているとか言われているが、この間素振りをひたすらしていた所を見ると、事情があるんだろう。

 他人に厳しく叱咤するが、この人は自分に1番厳しい人なのだろう。

(参ったな…)

 フェリミアを見殺しにした人なんだけど、妹を思う気持ちに共感出来ない訳じゃない。

「成る程ね、良いですわ。

だから子供は安心して眠ってください。」

「…本当に意味理解してるか?」

「してますしてます。何なら条件良い嫁探しの相談も乗りますし、協力やお膳立てもしてやりますわ。任せてください。」

「良いのか?」

「条件としては、私と私の家に危害を加えないやり方での離縁にしましょう。おっけー?」

「あ…ぁあ。それは、勿論。だが。
おまえ、じゃあ何で皇妃候補に率先してなったんだよ。」

 そう聞かれたら、何でだっけな。

「そりゃ、…ノリと勢いですかね?」

「ふはっ。本当変なやつだな、おまえ。」

 
 私は初夜になって初めて、カルロが笑ったところを見た。
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