16 / 121
第1章
王宮を歩き回ってみた2
しおりを挟む
様々な応酬をした結果、この精霊(?)の様な猫はただの猫であることがわかった。
特技は人間の言葉がわかる事だ。猫にしては凄いと思う。
このままでは猫と会話して1日終わるので、結局自分で木に飛び移る事にした。
出来るだけ部屋の奥から助走をつけて、バルコニーの淵へ一歩踏み出すと、そのまま2メートル先の木にジャンプする。
ギリギリいけるかと思ったけれど、後少し勢いが足りず、木の枝に手がかすって落ちると気付いた時には目を強く閉じた。
その瞬間、強風が追い風となり、私を安定した木の枝元に着地させた。
「凄い、私なんて強運なのかしら…。」
「にゃん」
気が付けば猫が私の肩にマフラーのように巻き付いている。
「あら、貴方も一緒にお城を回りたいの?しょうがないわね。」
このように可愛い動物に好かれて嬉しくない人間がいるだろうか。
居るだろうけど私にはわからない世界観だ。
モフモフに癒されながらも、木の枝に太い蔦を結んで、スルっと地面へと着地すると、猫のお供を連れて城内散策を始めることにした。
散策していて、目に付いたのは騎士の訓練場だった。
気になる理由は私も剣を習いたいという興味だ。だけど、皇妃教育にそんな科目はひとつもない。
ちょっとその辺の枝を使って素振りしてみたけど、こんな事しても強くなれる気がしなかったので、直ぐに枝を放り投げて別のところを散策する事にした。
ースコン
「った!」
どうやら投げた枝は思いの外勢いと風にのって等身大の茂みの向こうまで飛び、誰かに当たってしまったようだ。
茂みの向こう側へと足を進めて、角を曲がりながら謝った。
「すみませーん」
私の声で振り向いた紅蓮の髪をした人物を見て、くるりと反転した私はそそくさと逃げる様に元来た道へと足を動かしたが、ガシッと肩を掴まれて禍々しいオーラを感じて振り向けなかった。
「お ま え 此処で何をしているんだ?」
(まさか投げた小枝がカルロ皇太子殿下に当たっちゃうなんて思わなかった。)
「や…やだぁ、カルロ殿下ったらこんな所で何してるんですか?」
笑ってごまかすべく、振り返ると其処には凄まじく悪い目付きで私を睨みつけている。
「此処で見た事は、誰にも喋るなよ。」
(ん?)
そう言われてまじまじと様子を観察していると、王子の手には木刀が握られていた。
「剣術の練習をしていたのですか?」
「悪いか?」
「いいえ、私も興味があるので見学をしたいのですが宜しいですか?」
嬉しそうに目を輝かせているテリアに、チッと舌打ちすると「好きにしろ。」と言ってカルロは背を向けた。
特技は人間の言葉がわかる事だ。猫にしては凄いと思う。
このままでは猫と会話して1日終わるので、結局自分で木に飛び移る事にした。
出来るだけ部屋の奥から助走をつけて、バルコニーの淵へ一歩踏み出すと、そのまま2メートル先の木にジャンプする。
ギリギリいけるかと思ったけれど、後少し勢いが足りず、木の枝に手がかすって落ちると気付いた時には目を強く閉じた。
その瞬間、強風が追い風となり、私を安定した木の枝元に着地させた。
「凄い、私なんて強運なのかしら…。」
「にゃん」
気が付けば猫が私の肩にマフラーのように巻き付いている。
「あら、貴方も一緒にお城を回りたいの?しょうがないわね。」
このように可愛い動物に好かれて嬉しくない人間がいるだろうか。
居るだろうけど私にはわからない世界観だ。
モフモフに癒されながらも、木の枝に太い蔦を結んで、スルっと地面へと着地すると、猫のお供を連れて城内散策を始めることにした。
散策していて、目に付いたのは騎士の訓練場だった。
気になる理由は私も剣を習いたいという興味だ。だけど、皇妃教育にそんな科目はひとつもない。
ちょっとその辺の枝を使って素振りしてみたけど、こんな事しても強くなれる気がしなかったので、直ぐに枝を放り投げて別のところを散策する事にした。
ースコン
「った!」
どうやら投げた枝は思いの外勢いと風にのって等身大の茂みの向こうまで飛び、誰かに当たってしまったようだ。
茂みの向こう側へと足を進めて、角を曲がりながら謝った。
「すみませーん」
私の声で振り向いた紅蓮の髪をした人物を見て、くるりと反転した私はそそくさと逃げる様に元来た道へと足を動かしたが、ガシッと肩を掴まれて禍々しいオーラを感じて振り向けなかった。
「お ま え 此処で何をしているんだ?」
(まさか投げた小枝がカルロ皇太子殿下に当たっちゃうなんて思わなかった。)
「や…やだぁ、カルロ殿下ったらこんな所で何してるんですか?」
笑ってごまかすべく、振り返ると其処には凄まじく悪い目付きで私を睨みつけている。
「此処で見た事は、誰にも喋るなよ。」
(ん?)
そう言われてまじまじと様子を観察していると、王子の手には木刀が握られていた。
「剣術の練習をしていたのですか?」
「悪いか?」
「いいえ、私も興味があるので見学をしたいのですが宜しいですか?」
嬉しそうに目を輝かせているテリアに、チッと舌打ちすると「好きにしろ。」と言ってカルロは背を向けた。
1
お気に入りに追加
2,121
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる