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第1章
王宮を歩き回ってみた2
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様々な応酬をした結果、この精霊(?)の様な猫はただの猫であることがわかった。
特技は人間の言葉がわかる事だ。猫にしては凄いと思う。
このままでは猫と会話して1日終わるので、結局自分で木に飛び移る事にした。
出来るだけ部屋の奥から助走をつけて、バルコニーの淵へ一歩踏み出すと、そのまま2メートル先の木にジャンプする。
ギリギリいけるかと思ったけれど、後少し勢いが足りず、木の枝に手がかすって落ちると気付いた時には目を強く閉じた。
その瞬間、強風が追い風となり、私を安定した木の枝元に着地させた。
「凄い、私なんて強運なのかしら…。」
「にゃん」
気が付けば猫が私の肩にマフラーのように巻き付いている。
「あら、貴方も一緒にお城を回りたいの?しょうがないわね。」
このように可愛い動物に好かれて嬉しくない人間がいるだろうか。
居るだろうけど私にはわからない世界観だ。
モフモフに癒されながらも、木の枝に太い蔦を結んで、スルっと地面へと着地すると、猫のお供を連れて城内散策を始めることにした。
散策していて、目に付いたのは騎士の訓練場だった。
気になる理由は私も剣を習いたいという興味だ。だけど、皇妃教育にそんな科目はひとつもない。
ちょっとその辺の枝を使って素振りしてみたけど、こんな事しても強くなれる気がしなかったので、直ぐに枝を放り投げて別のところを散策する事にした。
ースコン
「った!」
どうやら投げた枝は思いの外勢いと風にのって等身大の茂みの向こうまで飛び、誰かに当たってしまったようだ。
茂みの向こう側へと足を進めて、角を曲がりながら謝った。
「すみませーん」
私の声で振り向いた紅蓮の髪をした人物を見て、くるりと反転した私はそそくさと逃げる様に元来た道へと足を動かしたが、ガシッと肩を掴まれて禍々しいオーラを感じて振り向けなかった。
「お ま え 此処で何をしているんだ?」
(まさか投げた小枝がカルロ皇太子殿下に当たっちゃうなんて思わなかった。)
「や…やだぁ、カルロ殿下ったらこんな所で何してるんですか?」
笑ってごまかすべく、振り返ると其処には凄まじく悪い目付きで私を睨みつけている。
「此処で見た事は、誰にも喋るなよ。」
(ん?)
そう言われてまじまじと様子を観察していると、王子の手には木刀が握られていた。
「剣術の練習をしていたのですか?」
「悪いか?」
「いいえ、私も興味があるので見学をしたいのですが宜しいですか?」
嬉しそうに目を輝かせているテリアに、チッと舌打ちすると「好きにしろ。」と言ってカルロは背を向けた。
特技は人間の言葉がわかる事だ。猫にしては凄いと思う。
このままでは猫と会話して1日終わるので、結局自分で木に飛び移る事にした。
出来るだけ部屋の奥から助走をつけて、バルコニーの淵へ一歩踏み出すと、そのまま2メートル先の木にジャンプする。
ギリギリいけるかと思ったけれど、後少し勢いが足りず、木の枝に手がかすって落ちると気付いた時には目を強く閉じた。
その瞬間、強風が追い風となり、私を安定した木の枝元に着地させた。
「凄い、私なんて強運なのかしら…。」
「にゃん」
気が付けば猫が私の肩にマフラーのように巻き付いている。
「あら、貴方も一緒にお城を回りたいの?しょうがないわね。」
このように可愛い動物に好かれて嬉しくない人間がいるだろうか。
居るだろうけど私にはわからない世界観だ。
モフモフに癒されながらも、木の枝に太い蔦を結んで、スルっと地面へと着地すると、猫のお供を連れて城内散策を始めることにした。
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気になる理由は私も剣を習いたいという興味だ。だけど、皇妃教育にそんな科目はひとつもない。
ちょっとその辺の枝を使って素振りしてみたけど、こんな事しても強くなれる気がしなかったので、直ぐに枝を放り投げて別のところを散策する事にした。
ースコン
「った!」
どうやら投げた枝は思いの外勢いと風にのって等身大の茂みの向こうまで飛び、誰かに当たってしまったようだ。
茂みの向こう側へと足を進めて、角を曲がりながら謝った。
「すみませーん」
私の声で振り向いた紅蓮の髪をした人物を見て、くるりと反転した私はそそくさと逃げる様に元来た道へと足を動かしたが、ガシッと肩を掴まれて禍々しいオーラを感じて振り向けなかった。
「お ま え 此処で何をしているんだ?」
(まさか投げた小枝がカルロ皇太子殿下に当たっちゃうなんて思わなかった。)
「や…やだぁ、カルロ殿下ったらこんな所で何してるんですか?」
笑ってごまかすべく、振り返ると其処には凄まじく悪い目付きで私を睨みつけている。
「此処で見た事は、誰にも喋るなよ。」
(ん?)
そう言われてまじまじと様子を観察していると、王子の手には木刀が握られていた。
「剣術の練習をしていたのですか?」
「悪いか?」
「いいえ、私も興味があるので見学をしたいのですが宜しいですか?」
嬉しそうに目を輝かせているテリアに、チッと舌打ちすると「好きにしろ。」と言ってカルロは背を向けた。
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