身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

文字の大きさ
上 下
7 / 121
第1章

迎え2

しおりを挟む
 
  このさいアレンが半信半疑なのは今そんな重要ではない。
 私はあの時何があったのか、フェリミアの口から聞きたいと思っていた。

 そしてフェリミアは私達に重い口を開いて教えてくれた。王宮内での出来事、宮殿での過ごしてきた日々、抱えていた不安、身に覚えのない噂や嫌疑を、取り調べられている時に知ったこと。

 処刑に至るまで。

 一通り語ったあと、私達は押し黙った。
 最後に付け足すように、フェリミアはぽつりと言う。

「ー…そして今日、もう直ぐ皇妃候補選別の使者が迎えに来ます。さっき日付を確認しました…」

 因みに私はいつ使者が来たのかなど覚えてはいない。

 それどころか、フェリミアが王城に招かれてから、寂しさを感じながらも貴族の令嬢らしく毎日平凡な中に幸せを見つけつつ過ごしてきた。いつ何をしていたか何てぼんやりしてる。

 でもきっと、フェリミアは違ったのだろう。
 誰よりも勤勉で、努力家な貴方はきっとこの国の皇妃となるにふさわしい人物になるように日々、研鑽してきたはずだ。

 皇妃候補にと、連れて行かれた日だって、そんな彼女は心に刻んで覚悟をしただろう。
 国母となるために頑張ると。

 貴方は大人しく淑やかに見えて、そんな芯の強い子だ。
 だからこそ、私も含めてこの屋敷にいる皆が貴方なら心配要らないと、きっと国民皆から愛され敬われると、あの時確信して見送った。

 (だけど…)

 この国は、無実の妹を処刑した。

 私は膝の上で拳を握る。

「お父様に、事情を話してそんな奴ら来たら追い返してもらいましょう。」

 立ち上がって、部屋を出ようとすると、私の前にアレンが立ち塞がる。

「テリアお嬢様なりません、一度落ち着いてください。」

「どうしてよ。このままじゃフェリミアがまた連れてかれちゃうわ。お父様だってこんな事になると知っていたらー…」

「今いっても、妄言と思われるだけです。

相手にもされないでしょう。

それどころか、この話は反逆的な内容が含まれております。そこかしこで広めればそれこそ処罰を受けかねません。」

「ならー…」

 言葉を紡ごうとした瞬間、部屋の戸を叩く音がして、外にいる使用人が告げた。


〝お嬢様方2人を旦那様が客間に呼んでいます。〟


しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

処理中です...