身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

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第1章

目が覚めたら3

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生きてるってそんなの当然よ。だってあれは夢だったんだもん。斬られたはずの腕も、顔も、それどころか身体のどこにも怪我ひとつない。

 あんな酷い出来事が現実に起きていたはずはないじゃない。

 泣きじゃくるユラに、戸惑いながら視線を泳がせていると、部屋の戸が大きな音を立て開いた。

「テリア姉様!」


 そう叫んで入ってきたのは、私と同じピンクゴールドの髪を持ち、私と異なるサファイアの如く美しく潤んだ瞳を持つ、妹のフェリミア。…のはずなんだけど、何だか貴方、見た目が随分幼くない?

「やっぱり生きてた!ねぇさま、ねぇさま!」

 そう言って目に涙をいっぱにため、駆け寄ってくるフェリミアをよそに、私は驚いていた。

 だって、私とフェリミアは年子で、17歳になる私の1つ下の筈だ。なのに、その姿はまるで子供のようだ。
 そしてユラはユラで、フェリミアの姿を見て、尚更涙をボロボロと流して、私にしがみ付くフェリミアごと私を抱きしめる。

 ほら、いつも突っ込み役のアレンも呆然としているわよ。
 
 やっと良くわからない抱擁が終わったかと思ったら、2人は顔を見合わせて、何かを確かめだした。

「ユラ、貴方も 記憶を持っているのね?」

「はい。間違いありません。」

 ファミリアの言葉に深妙な顔をしてユラが頷いた。
 状況を理解する努力はしようと、2人に質問する。

「何?2人ともどうしたの?」


  私の問いかけに、静寂が訪れた。とても重たい雰囲気だったが、言い淀んでいた重い口を開いて、フェリミアがいった。


「信じてもらえるか分かりませんが…
私達は、処刑執行から7年の時を遡ったのですわ。」
 


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