2 / 121
第1章
皇妃として処刑されました
しおりを挟むー助けて お姉様、私は此処で殺されてしまう。ー
私の名前はフェリミア・ロナンテス
この国の皇妃となる者。
皇帝も何だか目付きが怖いし、婚約者の皇太子も皇帝そっくりで眼光が鋭くて、話しかけてもそっけなくて。使用人も含めて皆が冷たいの。
宮殿の中で引き篭もって本を読んでいるのだけれど、親しい人は誰も居ないから胸の内にどんどん不安だけが募っていく。
セリーヌ子爵家での日々を思い出しては家族に恥じぬよう、せめて役目を果たさなくてはと、沢山勉強したし、何食わぬ顔で公務もこなしてきた。
だけど皆んな冷たくて、誰も信用出来ないの。
それでも役目を果たして、宮殿で結婚式を大々的に挙げたさい皇妃様と皆に敬われた時になってやっと自信がついてきた。
それから間も無くして、神殿側が聖女召喚を成功させたと言う知らせが届いた。
この国の慣しで、異世界から現れた聖女は皇后となり国を治めるという。
長い間空席だった皇后の席は、聖女出現により埋まることになった。
ある日、聖女と陛下が睦まじく王宮内を歩いている姿が良く目に入った。
陛下はとても嬉しそうで、幸せそうだったけれど、私は別に何とも思わなかった。
だって、私は勉強や仕事をこなす事はしてきたけれど、殆ど交流が無かったのだもの。
でも周りはそう思っていなかった。
気付かない間に、私が陛下と聖女の仲睦まじさに嫉妬していると噂が流れていた。
そんな時に聖女の暗殺未遂事件が起きた。
私は尋問を受けるその時まで、そんな事つゆほども知らなかった。
否定したけど、誰も私の言葉を信じてもらえず、受け入れてはくれなかった。
もう私の気持ちは決め付けられていたから。
数日間ずっと、尋問され続けた。
処刑が決まった時には、もう何もかも、どうでも良くなっていて
処刑場にのぼって久しぶりに太陽の光を目にした。
最後の景色は、群衆が処刑場を取り囲み、非難と好奇の目が私へと一身に降り注いでいる。
セリーヌ子爵家での日々が、遠い夢のようだった。
前を向かされて、群衆の顔がよく見える。その中で私は見つけたのだ。
この場で唯一、避難でも、好奇な視線でもなく、ただ私の姿に悲しんでくれているその姿を。
フードを深く被っているけれど、誰かが分かる。
テリアお姉様だ。
そうだ、私は自分の事ばかりで思い浮かばなかった。
あの後、セリーヌ子爵家はどうなったの?
私が罪人とされているなら、お姉様達が今ただで済んでいるはず無いのだ。
ごめんなさい、お姉様
ごめんなさい。
あんなに、大切にしてくれて
あんなに。可愛がってくれたのに
ちゃんと、立ち回れなくて。
この時になって初めて、罪悪感がわいた。
私が詫びるとしたならば、聖女でも国の人々でも無くて、私の家族にだ。
ずっと水を飲まなかったせいか、声を紡ぐ事をやめていたせいか、上手くは言葉に出せないけれど
心から そう思ったのだ。
「ごめんね、おねぇさま。」
2
お気に入りに追加
2,115
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる