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第1章
1度めの人生
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私の名前はテリア・ロナンテス
処刑場に今、立っているのは旧姓フェリミア・ロナンテス。この国の皇妃にして セリーヌ子爵家の娘でそして、私の妹。
数日間尋問され続けて、生気を感じさせなくなった虚ろな瞳。こけた頬。
私の妹は、異世界から現れた聖女を害すると言う大罪を犯した。
勿論、私達の生まれ育ったセリーヌ子爵家も爵位剥奪の上、国外追放は免れなかったけれど。
端的に言うと、取り敢えず国外追放途中で私は逃げた。
だって道中に兵士たちから聞いてしまったから。
『明日の午後 皇妃が処刑される』
いても立ってもいられなかった私は外套に身を包み、フードを深く被って広場に侵入していた。
だからと言って、身を隠しながらの私から処刑場は遠すぎて
何とかぎりぎりまで近寄ったものの、ここから人をかき分けて、妹を連れ去るなんて無理だと馬鹿な私でもわかった。
物陰にいた私は、処刑台に立たされた妹を見て、思わず己の身を抱きしめた。
『お姉様、テリア姉様』
こんなに近くにいるのに、私は馬鹿だから妹をあそこから連れ出す手立てを思いつかない。
こんなお馬鹿で間抜けな私を慕ってくれた妹を助けられないなんて
いつの間にか、自分が追放されて護送中の所を逃げてきた事なんか頭からすっかり飛んで、必死で人垣を掻き分けて進む。
多分かなり火事場の馬鹿力と言うものが出ていたと思う。でもそれ程に必死だった。
気付けば民衆が処刑を見学するには絶景だろう1番最前列にいた。
だけど、手を伸ばしても全然届かない距離だ。
本当に馬鹿で、チャランポランで、私は何て役立たずなのー…
そんな最中、処刑執行の時間が訪れる。
オノで首を切る為、正面をむかされた妹は、虚ろな瞳に僅かな光を宿した。
群衆の中、正確に私の姿を捉えると
口を小さく動かしていた。
私には、なんて言っているのか、その声が聞こえてくるようだった。
〝ごめんね、おねぇさま〟
「ーー…っ」
時間がおしているのか、処刑人は妹の頭を乱暴に押さえつけ、オノを振りかぶった。
やめて、やめてよ。そんな事したら
ーフェリミアが死んじゃうじゃないー
『テリア姉様。』
ー・プチン
頭の中の、何かが切れる音がした。
「ーー…っ。やめてって言ってるでしょ!!!」
民衆の歓声が煩い。そんな中でも一際大きい声で叫び声をあげながら、手に持つ短剣を持って処刑台に登ろうとした。私の周りの民衆は悲鳴をあげて、逃げ惑う。
「それ以上やったら、容赦しないんだから!!私が貴方達を殺してやるから!」
誰かに掴まれて、フードがはだけ、妹と同じピンクゴールドの髪が露わになる。
広場が騒めく中、私は兵士に止められたけれど、刃物を持って抵抗する私に慈悲もなく
最後に覚えているのは、目の前に迫りくる兵士の剣が見えて、途端に何も聞こえず見えず
真っ暗になった。
処刑場に今、立っているのは旧姓フェリミア・ロナンテス。この国の皇妃にして セリーヌ子爵家の娘でそして、私の妹。
数日間尋問され続けて、生気を感じさせなくなった虚ろな瞳。こけた頬。
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勿論、私達の生まれ育ったセリーヌ子爵家も爵位剥奪の上、国外追放は免れなかったけれど。
端的に言うと、取り敢えず国外追放途中で私は逃げた。
だって道中に兵士たちから聞いてしまったから。
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だからと言って、身を隠しながらの私から処刑場は遠すぎて
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物陰にいた私は、処刑台に立たされた妹を見て、思わず己の身を抱きしめた。
『お姉様、テリア姉様』
こんなに近くにいるのに、私は馬鹿だから妹をあそこから連れ出す手立てを思いつかない。
こんなお馬鹿で間抜けな私を慕ってくれた妹を助けられないなんて
いつの間にか、自分が追放されて護送中の所を逃げてきた事なんか頭からすっかり飛んで、必死で人垣を掻き分けて進む。
多分かなり火事場の馬鹿力と言うものが出ていたと思う。でもそれ程に必死だった。
気付けば民衆が処刑を見学するには絶景だろう1番最前列にいた。
だけど、手を伸ばしても全然届かない距離だ。
本当に馬鹿で、チャランポランで、私は何て役立たずなのー…
そんな最中、処刑執行の時間が訪れる。
オノで首を切る為、正面をむかされた妹は、虚ろな瞳に僅かな光を宿した。
群衆の中、正確に私の姿を捉えると
口を小さく動かしていた。
私には、なんて言っているのか、その声が聞こえてくるようだった。
〝ごめんね、おねぇさま〟
「ーー…っ」
時間がおしているのか、処刑人は妹の頭を乱暴に押さえつけ、オノを振りかぶった。
やめて、やめてよ。そんな事したら
ーフェリミアが死んじゃうじゃないー
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ー・プチン
頭の中の、何かが切れる音がした。
「ーー…っ。やめてって言ってるでしょ!!!」
民衆の歓声が煩い。そんな中でも一際大きい声で叫び声をあげながら、手に持つ短剣を持って処刑台に登ろうとした。私の周りの民衆は悲鳴をあげて、逃げ惑う。
「それ以上やったら、容赦しないんだから!!私が貴方達を殺してやるから!」
誰かに掴まれて、フードがはだけ、妹と同じピンクゴールドの髪が露わになる。
広場が騒めく中、私は兵士に止められたけれど、刃物を持って抵抗する私に慈悲もなく
最後に覚えているのは、目の前に迫りくる兵士の剣が見えて、途端に何も聞こえず見えず
真っ暗になった。
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