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メチールは俺の反応に呆れたり、驚いたり、同情しながらも獣人について色々と語ってくれた。
内容はこんなところだ。
彼が生まれるずっと以前だが、気が付けば獣人という存在が認知されていた。
ある意味突然現れたといった認識らしいので、その出自ははっきりしていない。
どのような獣人がいるのかも判っていないらしい。狼や犬、猫、兎、熊などは比較的みかけるが、
そのほかどういった種の獣人がいるのか完全には把握されておらず、
噂レベルの目撃情報なども結構あるらしい。
その数は総じて少なく、その理由は人間の迫害によるところが大きいとのことだ。
獣人は見た目には人間とさほど変わらないが、よく見れば耳などが異なり、
また普通は服の下に隠されている(表に出しているとすぐにばれるため)が尻尾も生えている。
獣人の持つ特性によりいくつかの能力が、人間のそれより優れているとのことだ。
例えば、彼女たち狼類の獣人は、スタミナや嗅覚、走る速さなどは格段に優れおり、
力や跳躍力なども人間に比べ大分勝っているらしい。
この、人間よりも優れた能力を有していることが、
皮肉にも彼女たちが迫害される大きな理由となってしまっている。

「なんでそれが理由になってるんですか?」と、俺は尋ねる。
「考えてもみろ。きっかけが何にせよ、もし彼女たちとの戦いともなれば、
基本的に人間は彼女たちには敵わない。そして、もし彼女たちが徒党を組んで
人間に反旗を翻したとしたら。」
「そんなことがあったんですか?」
「いや、一度もない。しかしな坊主。人間というのは常に自分本位でな、
自分たちの都合ばかりを優先して考える愚かしくも卑怯な生物なんだ。」
俺にも思い当たる節がある。
「だからな、実際に起こっていなくてももしそれが起こったらと考えると、
たちまちその恐怖に憑りつかれちまうのさ。
そしてな、だったらその原因をあらかじめ取り除いちまえばいい、
力を削いでおけばいいと考える。そんな連中の背中をちょっと押してやる存在がいれば、
今の世の出来上がりというわけさ。」
「その存在が王や領主?」
「そういうことだ。彼女たちを迫害する理由なんてなんだっていいんだ。
だいたいが言いがかりレベルだしな。
今となってはその言いがかりさえあるか怪しいもんだ。」
「そんなことで民衆が言うことを聞くんですか?」
「ああ、聞くんだ。奴らは軍隊という名の暴力装置を持っている。
民が言うことを聞かなければ、そいつらをちらつかせればいい。
大体はそれで解決だ。そして、一度そういった迫害に協力しちまえば、
タガが外れたように、そういったことに対する疑問なんかは抱かなくなっちまうのさ。」
吐き捨てるようにメチールは言う。
「尤も、この私だって偉そうなことは言える義理じゃないがな。」
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