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小声でオパールに尋ねる。「どの木箱から力を感じるかわかる?」
残念ながらオパールは首を横に振って答える。
「力は感じますが、弱すぎて場所を特定できません。もっと近づければ。」
奥に踏み入ろうとしたら、御者から鋭い声が投げかけられた。
「それ以上行くな。鉱石なら一番手前の箱の物でも確認できるだろう?」
あまりの言葉の勢いに気圧されながら聞き返す。
「なぜ奥に言ってはダメなんですか?」
「何でもだ。ダメなもんはダメなんだ。」
仕方がない。ここはいったん引き下がって、メチールに交渉しよう。
一輌目に戻ると、渋い顔のメチールと目が合った。
「手前の鉱石で頼むと言ったじゃないかね。」
穏やかだが、責めるような含みが感じられる物言い。
あまり騒動は起こしたくはないが、オパールは絶対確認したほうがいいと言うし。
「すみませんでした。でも、どうしても確認させてほしいんです。」
明らかにメチールの表情に迷いのような感情が浮かぶ。
見られてはまずいような何かがあるのだろう。
「ここで見たことは他言しません。ですので奥を見せてはもらえないでしょうか?」
俺の言いたいことは理解したのだろう。メチールはゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「別にみられて困るようなものが乗っているわけではないんだ。
ただこの国の現実を見られるのが、そう、少々つらくてね。」
まっすぐにメチールを見つめる。
「ふう。仕方がない。行こうか。」
そう言ってメチールは馬車を降りた。
「おい、通してやってくれ。」
御者の男が戸惑いつつ聞き返す。
「いいんですか?」
「ああ、かまわん。」
メチールが言うと、男は外に向かって声をかけた。
「おおい、ちょっと手伝ってくれ。」
外にいた男たちが集まってくる。メチールが頷くと、
男たちは鉱石の入った木箱を馬車から運び出していった。
「あっ。」と、オパールが声を上げる。
周りの男たちには聞こえないようだ。
そもそも、力のないものにはオパールは見えないらしい。
「今運び出された木箱の中みたいですわ。」
「そうか。でも今はちょっと・・・」小声で答える。
「そうですわね。」オパールは頷くと俺から離れていった。
恐らく力を感じた木箱のところへ行ったのだろう。
「ん。どうしたかね。」俺の様子がおかしいことをメチールに見とがめられたが、
「別に。何でもないです。」と、とりあえずとぼけておいた。
残念ながらオパールは首を横に振って答える。
「力は感じますが、弱すぎて場所を特定できません。もっと近づければ。」
奥に踏み入ろうとしたら、御者から鋭い声が投げかけられた。
「それ以上行くな。鉱石なら一番手前の箱の物でも確認できるだろう?」
あまりの言葉の勢いに気圧されながら聞き返す。
「なぜ奥に言ってはダメなんですか?」
「何でもだ。ダメなもんはダメなんだ。」
仕方がない。ここはいったん引き下がって、メチールに交渉しよう。
一輌目に戻ると、渋い顔のメチールと目が合った。
「手前の鉱石で頼むと言ったじゃないかね。」
穏やかだが、責めるような含みが感じられる物言い。
あまり騒動は起こしたくはないが、オパールは絶対確認したほうがいいと言うし。
「すみませんでした。でも、どうしても確認させてほしいんです。」
明らかにメチールの表情に迷いのような感情が浮かぶ。
見られてはまずいような何かがあるのだろう。
「ここで見たことは他言しません。ですので奥を見せてはもらえないでしょうか?」
俺の言いたいことは理解したのだろう。メチールはゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「別にみられて困るようなものが乗っているわけではないんだ。
ただこの国の現実を見られるのが、そう、少々つらくてね。」
まっすぐにメチールを見つめる。
「ふう。仕方がない。行こうか。」
そう言ってメチールは馬車を降りた。
「おい、通してやってくれ。」
御者の男が戸惑いつつ聞き返す。
「いいんですか?」
「ああ、かまわん。」
メチールが言うと、男は外に向かって声をかけた。
「おおい、ちょっと手伝ってくれ。」
外にいた男たちが集まってくる。メチールが頷くと、
男たちは鉱石の入った木箱を馬車から運び出していった。
「あっ。」と、オパールが声を上げる。
周りの男たちには聞こえないようだ。
そもそも、力のないものにはオパールは見えないらしい。
「今運び出された木箱の中みたいですわ。」
「そうか。でも今はちょっと・・・」小声で答える。
「そうですわね。」オパールは頷くと俺から離れていった。
恐らく力を感じた木箱のところへ行ったのだろう。
「ん。どうしたかね。」俺の様子がおかしいことをメチールに見とがめられたが、
「別に。何でもないです。」と、とりあえずとぼけておいた。
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