22 / 45
㉒
しおりを挟む
「森に」
「倒れていた?」
二人の男が示し合わせたように言葉を紡ぐのが、妙におかしい。
思わずふふっと笑ってしまった。
「何がおかしい。」
不機嫌そうに男が言う。
「ああ、気分を害されたなら申し訳ないです。
ただ、お二人の息ぴったりの質問がちょっとおかしかったもので。」
そう答えると二人は納得してくれたようだった。
この後、別の世界からやってきたことは伏せつつ俺は、ここ数日のことを語って聞かせた。
「攫われてきたわけでもなく、気が付いたらこの森にいたと?」
「そうです。」
「そんな不思議なことがあるんかいな。」
嘘は言ってないが、完全には信用してもらえてないようだ。
まあ、それはそうだろう。俺が彼らの立場なら、彼らと同様の反応を示すだろう。
あまりにも突拍子もない話には違いない。
しかしながら、少なくともこちらに敵意がないことはわかってもらえたようだ。
頭のおかしいかわいそうな子供と思われたのかもしれない。
そのおかげか、そのあとは比較的会話がスムーズに進行した。
御者の男は商人で名をメチール、もう一人は旅のお供でグリサン、他にお供が5人の
合計7人で商隊を組んで鉱山まで食料などを運び、そして鉱石を載せて帰るところだったらしい。
馬車は2頭立て3輌、他にポニーぐらいの大きさの馬が一頭、結構大きな商隊だ。
領主の依頼で2週間に一回ほどを定期的に往復しているのだそうだ。
ここは、ミトコーリアン王国のウィリャス伯爵領、
北にある鉱山は主にガーネットが産出するようだが最近はクズばかりだということ、
そして南にはアルコルと言う町があるようだ。
ただしその町までは馬車で2日ほど、
徒歩ではさらにもう4,5日かかるらしい。
「坊主はこの後どうするんだ?」
特に行く当てもないしどうしようかと考えていると、
「アルコンまででいいなら、乗せていってやるが。」
と望外な申し出を受けた。
「本当ですか?ぜひお願いします。」二つ返事で答えるのだった。
「ただ、それでだな。」言いにくそうにメチールが言い澱む。
「はい、なんでしょう?」
「さっき見せてもらった原石な。」
「はい。」
「あれを、譲ってはもらえないか?」
「えっ。オパールの原石ですか?」と聞き返す。
「そうそう、あの見事なオパールというものの原石だ。あんな宝石は見たことがないんだ。
大そう価値がありそうだが、どうだろう?」
価値があるか。確かに今回採掘した原石はどれもなかなかのものだったけど、
向こうで売れば目玉が飛び出るほど高いってものでもない。
譲ってもいいけど、かといって今の俺には
何かと交換できそうなものはあの原石しかないんだよな。
直ぐに答えずに考え込んでいると、売るのをためらっているとでも思われたのか
メチールから条件を提示してきた。
「もちろん乗車賃としてあれをくれとは言わんよ。
町まで行く間に荷駄にあるものから欲しいものを選んでくれていい。
足りそうもなければ、少々なら金も払おう。どうだ?」
「この3輌の中から選んでいいんですか?」
「ああ、馬車以外なら何を選んでくれてもいい。どうだ?」
荷物を見てみなければわからないが、悪い話ではなさそうだ。
「わかりました。では、その方向で荷物を物色させてもらっていいですか?」
「もちろんだ。」仮契約成立である。
「倒れていた?」
二人の男が示し合わせたように言葉を紡ぐのが、妙におかしい。
思わずふふっと笑ってしまった。
「何がおかしい。」
不機嫌そうに男が言う。
「ああ、気分を害されたなら申し訳ないです。
ただ、お二人の息ぴったりの質問がちょっとおかしかったもので。」
そう答えると二人は納得してくれたようだった。
この後、別の世界からやってきたことは伏せつつ俺は、ここ数日のことを語って聞かせた。
「攫われてきたわけでもなく、気が付いたらこの森にいたと?」
「そうです。」
「そんな不思議なことがあるんかいな。」
嘘は言ってないが、完全には信用してもらえてないようだ。
まあ、それはそうだろう。俺が彼らの立場なら、彼らと同様の反応を示すだろう。
あまりにも突拍子もない話には違いない。
しかしながら、少なくともこちらに敵意がないことはわかってもらえたようだ。
頭のおかしいかわいそうな子供と思われたのかもしれない。
そのおかげか、そのあとは比較的会話がスムーズに進行した。
御者の男は商人で名をメチール、もう一人は旅のお供でグリサン、他にお供が5人の
合計7人で商隊を組んで鉱山まで食料などを運び、そして鉱石を載せて帰るところだったらしい。
馬車は2頭立て3輌、他にポニーぐらいの大きさの馬が一頭、結構大きな商隊だ。
領主の依頼で2週間に一回ほどを定期的に往復しているのだそうだ。
ここは、ミトコーリアン王国のウィリャス伯爵領、
北にある鉱山は主にガーネットが産出するようだが最近はクズばかりだということ、
そして南にはアルコルと言う町があるようだ。
ただしその町までは馬車で2日ほど、
徒歩ではさらにもう4,5日かかるらしい。
「坊主はこの後どうするんだ?」
特に行く当てもないしどうしようかと考えていると、
「アルコンまででいいなら、乗せていってやるが。」
と望外な申し出を受けた。
「本当ですか?ぜひお願いします。」二つ返事で答えるのだった。
「ただ、それでだな。」言いにくそうにメチールが言い澱む。
「はい、なんでしょう?」
「さっき見せてもらった原石な。」
「はい。」
「あれを、譲ってはもらえないか?」
「えっ。オパールの原石ですか?」と聞き返す。
「そうそう、あの見事なオパールというものの原石だ。あんな宝石は見たことがないんだ。
大そう価値がありそうだが、どうだろう?」
価値があるか。確かに今回採掘した原石はどれもなかなかのものだったけど、
向こうで売れば目玉が飛び出るほど高いってものでもない。
譲ってもいいけど、かといって今の俺には
何かと交換できそうなものはあの原石しかないんだよな。
直ぐに答えずに考え込んでいると、売るのをためらっているとでも思われたのか
メチールから条件を提示してきた。
「もちろん乗車賃としてあれをくれとは言わんよ。
町まで行く間に荷駄にあるものから欲しいものを選んでくれていい。
足りそうもなければ、少々なら金も払おう。どうだ?」
「この3輌の中から選んでいいんですか?」
「ああ、馬車以外なら何を選んでくれてもいい。どうだ?」
荷物を見てみなければわからないが、悪い話ではなさそうだ。
「わかりました。では、その方向で荷物を物色させてもらっていいですか?」
「もちろんだ。」仮契約成立である。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる