37 / 89
第四節
シナモンは人を選ぶ(11)
しおりを挟む
老婦は、渋々、三百円を受け取り、マスクを渡した。
「お告げだ。皆よ、よく聞くが良い」
老婆は言うと、客の皆は注目する。
「午後六時、午後九時、午前零時のいずれかに一人死ぬ」
老婆はそう告げた。
ふと、時計を見る。
間もなく、午後六時を迎えようとしていた。
これから何日、この者達とここに居れば良いのだろう。
私は不安に駆られる。
「そうかい、誰が死ぬかは預言出来るのかい?」
老父は老婆なや訊ねる。
「それは出来ない。しかし、悪魔にならない為に出来る事はある」
老婆は答える。
「なんだい、それは」
「食事を用意せよ。太古より、人は食べる事で活力を見出してきた。悪魔は活力のある者をそう簡単に喰ろうとはしない」
「悪魔は弱っている者から食べるのか?」
「そうに決まっているだろう。弱っていれば、抵抗されないからな」
老婆は静かに答える。
「それじゃあ、私が作ってくるかね」
老婦はそう言うと立ち上がる。
「私も手伝います」
妻も腰を上げる。
「いいや、大丈夫ですよ」
老婆は妻の言葉を制止させるように重ねて言う。
妻は戸惑いながら、腰を下ろす。
「わかりました、お願いします」
妻は答えた。
老婦は厨房へ向かった。
「皆、大した料理は作れないから、あまり期待しないでくれよ」
老父は我が物顔で客の皆に言う。
老婦の背が陰る。
娘はカーテンをちらりと捲り、外を見る。
暗闇に深い濃霧が漂っている。
その中に、ぼんやりと赤い光が漂っていた。
その赤い光は複数存在し往来していた。
「何をしている!」
老婆は慌てて立ち上がると怒鳴った。
娘は、ぱっとカーテンを閉じて、老婆を見た。
「もし悪魔に見つかったらどうするんだ!」
老婆は早口で怒鳴る。
娘は、しゅんと俯く。
その老婆の剣幕に、娘の目はうるうると涙を滲ませる。
老婆は席に座る。
「でも、これでわかっただろう。あれは、悪魔の目だ。もう間近に、悪魔が居る」
老婆は穏やかに言った。
「わしらは助かるのか?」
老父は聞く。
「必ず助かる。アーが自衛隊と共に駆けつけてくれる」
「アーは神なのか?」
「アーは誰よりも近しい存在だ」
老婆は答えた。
「お告げだ。皆よ、よく聞くが良い」
老婆は言うと、客の皆は注目する。
「午後六時、午後九時、午前零時のいずれかに一人死ぬ」
老婆はそう告げた。
ふと、時計を見る。
間もなく、午後六時を迎えようとしていた。
これから何日、この者達とここに居れば良いのだろう。
私は不安に駆られる。
「そうかい、誰が死ぬかは預言出来るのかい?」
老父は老婆なや訊ねる。
「それは出来ない。しかし、悪魔にならない為に出来る事はある」
老婆は答える。
「なんだい、それは」
「食事を用意せよ。太古より、人は食べる事で活力を見出してきた。悪魔は活力のある者をそう簡単に喰ろうとはしない」
「悪魔は弱っている者から食べるのか?」
「そうに決まっているだろう。弱っていれば、抵抗されないからな」
老婆は静かに答える。
「それじゃあ、私が作ってくるかね」
老婦はそう言うと立ち上がる。
「私も手伝います」
妻も腰を上げる。
「いいや、大丈夫ですよ」
老婆は妻の言葉を制止させるように重ねて言う。
妻は戸惑いながら、腰を下ろす。
「わかりました、お願いします」
妻は答えた。
老婦は厨房へ向かった。
「皆、大した料理は作れないから、あまり期待しないでくれよ」
老父は我が物顔で客の皆に言う。
老婦の背が陰る。
娘はカーテンをちらりと捲り、外を見る。
暗闇に深い濃霧が漂っている。
その中に、ぼんやりと赤い光が漂っていた。
その赤い光は複数存在し往来していた。
「何をしている!」
老婆は慌てて立ち上がると怒鳴った。
娘は、ぱっとカーテンを閉じて、老婆を見た。
「もし悪魔に見つかったらどうするんだ!」
老婆は早口で怒鳴る。
娘は、しゅんと俯く。
その老婆の剣幕に、娘の目はうるうると涙を滲ませる。
老婆は席に座る。
「でも、これでわかっただろう。あれは、悪魔の目だ。もう間近に、悪魔が居る」
老婆は穏やかに言った。
「わしらは助かるのか?」
老父は聞く。
「必ず助かる。アーが自衛隊と共に駆けつけてくれる」
「アーは神なのか?」
「アーは誰よりも近しい存在だ」
老婆は答えた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
Strange Days ― 短編・ショートショート集 ―
紗倉亞空生
ミステリー
ミステリがメインのサクッと読める一話完結タイプの短編・ショートショート集です。
ときどき他ジャンルが混ざるかも知れません。
ネタを思いついたら掲載する不定期連載です。
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
眼異探偵
知人さん
ミステリー
両目で色が違うオッドアイの名探偵が
眼に備わっている特殊な能力を使って
親友を救うために難事件を
解決していく物語。
だが、1番の難事件である助手の謎を
解決しようとするが、助手の運命は...
【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる