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バラ園で、通じ合う心

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ほどなくして、ようやく2人はバラ園にて落ち合った。

バラ園の見える噴水のへりに2人で並んで腰掛け、エリザベートはシリルの様子がいつもと少しだけ違うことに気づいていた。

「シリル様、どうかしましたか?」
「いや……なんでもない」
「なんでもないならそんな顔はしないと思いますわ」
エリザベートがそう言うと、シリルはしばらく間を置いてから、観念したように口を開いた。
「……あの男は、恋人なのか?」
「最初に一緒にいた方のことですか?」
「そうだ」
「あの方は……私の婚約者です」
「婚約者……エリザベートには婚約者がいたのか」
シリルは何かが抜け落ちたような、呆然といった顔をした。

「でも、私の叔父が決めたんです。それに彼は他のご令嬢に夢中で、私も彼のことは理解できなくて……」
シリルの様子を見て、エリザベートがした説明は、なぜかとても言い訳がましいものだった。

「そうか。じゃあ恋人はいないんだな」
「ええ、まあ……婚約者がいる身でありながら恋人なんて作れませんから」
「じゃあ君の婚約者はどうなる?」
「たしかにそうですわ」
思わず自嘲めいた笑みが出てしまう。シリルの指摘は的確で、エリザベートがいる場でありながら他のご令嬢と堂々と逢い引きするジャックの方がどうかしているのだと実感できた。


「エリザベートはあの男とは結婚したくないんだろう」
「そりゃあ……しなくてもいいなら本当はしたくありませんけれど……」
彼もああですし、と言うとシリルは勿体ない、とぼそりと呟く。確かにジャックのような好条件の方との結婚を嫌がるなんて勿体ないのかもしれない。やっぱり私もおかしいんだわ、と思ってエリザベートは自棄になり。
「確かにあの方との結婚を嫌がるなんて、私は勿体ないことをしているのかもしれませんね」
「…………?」
エリザベートが言うなりシリルは怪訝な顔でこちらを見る。
「どうかなさいました?」
「……君は、なんだか自己肯定感が低いみたいだな」
「っな!どういうことです!?」
勢いづいてエリザベートは身を乗り出す。それをシリルはどうどう、とおさめた。
「さぁ、どういうことだろうな」
「シリル様……!」
からかわれているような気分になったエリザベートはシリルを睨む。けれど、彼は睨まれてなお、楽しそうに笑っていた。



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