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ジュースの甘さ②

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 僕はありがとうと言って、そのペットボトルを受け取った。
 彼女はと言うと、先ほどの言葉を聞いて、満面の笑みで三浦君にありがとう!とお礼を言っていた。彼女のためと言った三浦君の言葉が嬉しかったのだと思う。素直でいい子だなと、思った。僕がもし、神楽様にこの学校で出会っていなかったら、きっとその可愛らしさに心を打たれていただろう。マシンガンで、猛烈な速さで射止められていたはずだ。そのくらいの可愛さが彼女にはあった。
 僕は受け取ったペットボトルのキャップに手をかけようとしていた。その時だった。彼女が桃のジュースを一口か、二口飲んだ後に、三浦君にこう告げたのだ。
「じゃあ、先に飲ませてくれたお礼に、口移しで飲ませてあげるね。」
 はい???今、何と言った?僕はキャップにかけていた手を止めた。もう、回す意識が僕にはない。彼女の突拍子もない発言に思わず、ドキドキさせられているのだ。何ていうことを言う女の子なんだという驚きとともに、自分にも、こうやって冗談でも人を惑わすようなことを言えたら、という淡い欲望をいだいた。
 彼女は口に何の躊躇もなく、桃のジュースを含んで、三浦君にくちを向けた。僕は本当だったら、目をそらした方がいいのかもしれないが、彼女の言動にもはや目を離さずにはいられなくなっていた。

 こいつは何を言い出しているのだろうか。俺は普段だったら、こんなことは絶対に自分からは言い出さない、こいつがかわいいことを言い出したことに違和感を感じた。だって、そうだろう?人前では、はるちゃんは、あまり、俺にくっつきたがらない。はるちゃんは、こっそり、人けのない廊下でイチャイチャしたいタイプなんだ。だから、こんな人目も気にせずにこんなことはできないだろうと、すぐに俺は悟った。
 何か企んでいる。口だけの言葉に、俺は素直に大人しくのっかることにした。もちろんそれは、はるちゃんが神楽の方を俺と話している間も、気にしていたからである。おそらく、神楽と島田にきっかけを与えようとしているのだと思う。だから、その計画を崩さない程度に俺ははるちゃんを困らせることにしてみた。
「ちょうだい?」
 声はいつもの調子で。ただ、しかし、その言葉の意味だけではるちゃんを困らせるには十分だった。俺ははるちゃんの目線まで、かがみこみ、にっこり微笑んだ後、唇を彼女の方に向ける。手に取るようにはるちゃんの考えていることがわかった。こうやって、困っているはるちゃんが俺は好きなんだ。俺のこういう時のいじわるな表情を見られるのも、はるちゃんだけだ。自分で言うのもあれだが、ギブアンドテイクの関係が成り立っていると思っている。
 顔を真っ赤にしたはるちゃん。俺ははるちゃん以上の子はいないと思っている。純粋で、素直で、守ってあげたい。俺は、実は、はるちゃん以上に彼女にぞっこんなのだ。
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