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観察日記~休み時間編~

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 1時間目。2時間目。3時間目。4時間目。そして、休み時間。僕は神楽様の手の上で回るシャーペンを見ていた。彼女と一緒に。
 なぜだろうか。なぜだが、彼女の名前が思い出せない。人と関わってこなかったせいで、僕はついにクラスメートの名前も覚えられなくなったのかと、少々悲しくなった。
 おそらく、神楽様が人の名前を覚えるのが得意だからかもしれない。僕とは似ても似つかない、雲の上のような存在。それでも、せめて近づきたいという気持ちが湧き出てきた矢先にこれは、僕自身こころが痛い。ちくりとする。
 そして、その胸の痛みと同時に湧き出てきた僕の感情。なんだか、もやもやする。神楽様がカッコ良くては、みんなに愛されているのは今に始まった話ではないはずなのだが、どうしてだろうか。胃がむかむかするっていうか、お腹が痛いっていうか、吐き気がするっていうか。苦しいのだ。
 みんなのアイドル的存在。キラキラしたそんな憧れの存在。そういうのを全部含めてぼくは、彼が好きなのに。
 こんな自分が、なんだか、すごく、嫌だ。こんな僕を、神楽様はどう思っているのだろう。頭の中でこの問いが、聞こえた。どう、思っているか?いや、だって、今日だって、神楽様は。僕は重大なことに気がついた。僕が神楽様のことを好きなのかについては聞かれた。でも、それは僕が神楽様を好きかどうかの話だ。
 僕だって、そうやって神楽様に言われるまでは、そんなこと微塵も考えたことはなかった。だって、彼は、僕の憧れ。昔、小さい頃に見ていた正義のヒーローみたいな、そういう存在だった。好きだとかそういうのは、考えもしなかった。ましてや、同性の神楽様に対してだ。
 僕がしらない感情を神楽様は教えてくれた。では、神楽様の「感情」は?
 僕の中に、いっきに不安が電光石火かのように流れた。
 神楽様は僕のことを、どう思っているのだろうか。
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