オレ様&ドSな神楽様は、地味目な彼がお好きでした。

夕時 蒼衣

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神楽様は強引②

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 神楽様は教室に入ると、僕の目の前の席に何のためらいもなく座った。もちろん、ここは神楽様の席でもなんでもないのであるが、そんなことは気にしないのがこの神楽様という人間なのだ。僕にはできないことをする神楽様は、かっこよく見えた。別に、自分の席ではない席に座ることなど、誰だってできるようなことであり、実際に、ちょっと僕が席を離れた内に勝手に僕の席に座っている人は山ほどいる。臆病な僕はなんにもそこで言うことができないのであるが。
 僕は理由にもなっていない、理由を並べ、頭の中で神楽様をどんどん美化していくのだ。無意識的に。次から次へと。今の僕にとっては、彼がどんなことをしてもかっこいいし、美しい。
 そうこう考えているうちに、神楽様は足を組んで僕の顔を覗き込んできていた。ほんの少し小首をかしげ、不思議そうにのぞき込んでいるようにも感じられる。目を合わせられないでいる僕には本当のところは分からないが、なんとなく、そういう雰囲気だった。もちろん、僕の幻想かもしれないけれども。それに、いつもより、子どもっぽく感じられる。上目遣いというか、何て言うか。そう、あれ?、僕は、何を考えているのだろうか。不覚にも、僕は神楽様をかわいいと思ってる。なぜだろうか。僕は眼を合わすことに臆病になっていたはずなのに、今度は眼を合わせずにはいられなくなっていた。その、子どもっぽい、いたずっら子のその表情を見たくてたまらなくなった。どんどん、僕はその笑顔に引き付けられる。吸い込まれていた行くのだ。
 それは、どっかの白うさぎを追いかけるような感覚だった。僕は深い穴にためらいなく入るのだ。ゆっくりとゆっくりと、落とし穴に落ちていく。重力何て今の僕には関係ない。白うさぎの神楽様は、僕を穴の奥深くへと誘い込むのだ。
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