オレ様＆ドＳな神楽様は、地味目な彼がお好きでした。

僕が彼を神楽様と呼ぶ理由②

　なんで僕の名前を？呆気にとられていると、連中がその言葉を聞き逃している訳もなくすぐさま突っかかる。
「なんだ？お前。コイツの知り合いかよ。」
　どうしよう。僕のせいで、初日から知らない人を巻き込んでしまった。眼鏡をただ、拾っただけだというのに、なんていうことだろう。僕はひとりで焦っていた。僕はクラスの皆にどう思われても構わない。しかし、関係のない彼が周りから変な目でこれから見られるのは、駄目な気がした。彼をそんな人に留めてはいけないと、僕の警鐘が鳴った。
「彼は僕とは全く関係が、…」
　僕の心もとない小さい声は、直ぐに彼、本人によってかき消された。
「いや？知り合いではないよ、今のところはね。今こうして初めて話している訳だし。」
　すらすらと流れるように彼は話していった。
「お前、だって…こいつの名前、」
「嗚呼、名前ね。聞いてなかったの？入学式で一人ずつ呼ばれてただろう？さすがに学年全員の名前には興味ないけど、同じクラスの人くらいは覚えておいて損はないと思ってね。」
　それを聞いて連中の間抜けな顔といったら。ポカンと口を開け、まさに開いた口が塞がらないといった様子だ。彼らは入学式当日に、クラス全員に阿呆面をさらすこととなった。
「マジで？マジで言ってるのか？」
「嘘ついて、どうするさ。本当だよ、坂田くん。」
　そう言って彼は、白馬から降りた王子並みのスマイルを彼らに浴びせた。微笑みは、本当に美しかった。思わず見とれてしまった。