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3.妻が怪しい
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やっと体調が良くなったリカルドは王宮へ向かう。
「やあ、リカルド、もう大丈夫かい?」
「ああ、マーカス、もう全快だよ。」
「だろうな。
可愛いイライザ夫人に甘やかされて、デレデレしているリカルドが目に浮かぶよ。」
「まるで僕達を見ていたようだな。」
「図星かよ。
全くいつになったら、新婚気分が抜けるんだ?」
「多分、無いな。」
「本当に羨ましいよ。」
マーカスは僕と最も仲のいい友人で、僕達夫婦のことも大体知られている。
学院の頃から、僕の女性関係から好みまで、すべて把握しているのだ。
そして、僕の好みの令嬢が来ていると、あの舞踏会で教えてくれたのも、マーカスだった。
マーカスはその後、同じ侯爵令嬢と結婚し、今は二児の父である。
マーカスの妻となった女性は、子育てに力を入れているため、イライザとは挨拶程度の仲である。
「そう言えば、イライザがちょっと怪しいんだよ。
僕といる時は、いつも通りなんだが、ライナスも何か言いたそうだったし、僕と長年の付き合いの医師と二人で、目だけで会話していた。
イライザには、僕に知られたくない何かがあるんた。
だからって、その医師と秘密の交際をしているはずはないとは、思うけれど。
イライザと医師の年齢は、親子ほど違うし、僕はイライザが僕を裏切るとは、思えないんだよ。」
「おお、リカルドもそんなことを悩むようになったか、いいぞ。」
「何だそれ?」
「たまには、そう言うのも、刺激があっていいだろ?
その方が燃えるだろ?」
「他人事だと思って。」
「まあまあ、イライザ夫人に限って何もないんだろ?
わかっているくせに。」
「とは思うけれど、気にかかる。」
「じゃ、それとなく聞き出すか、内緒で嗅ぎ回るかの二択だな。」
「とりあえず、イライザと話してからだな。」
「ああ、そうしろ。
何が出てきても必ず俺に相談するんだぞ。」
「わかった。」
「おかえりなさい。」
「ああ、ただいま。
ライナスは?」
「さっき、侍女長と話していたわ。」
「そしたら、執務室に来るようにと、伝えてくれ。」
「お仕事ですか?」
「ああ、そんなものだ。」
僕は王宮から帰ると、いつものようにイライザを抱きしめて、頭にキスをし、執務室に向かう。
出迎えてくれたイライザは、今日も可愛いし、もう少し二人でゆっくり抱き合いたいが、今は話が先だ。
「リカルド様、お迎えできませんで、申し訳ありません。」
「いや、構わない。
少し話がしたいんだが。」
「はい、大丈夫です。」
ライナスと二人で、執務室のソファに座ると、ライナスがお茶を入れ、対面に座る。
「この前言いかけた事についてだが。」
「はい、リカルド様にお伝えしたいと思っておりました。
最近イライザ様は、昼間ご自身のみでお出かけになり、いつも王都の外れに馬車で向かわれます。
御者の話によると、どこかの邸ではなく、木の下が待ち合わせ場所だそうで、そこで待っていると、イライザ様が歩いてやって来るそうです。
なので、お茶会などではなく、誰かに会いに行っているのではないかとのことです。」
「なるほど。
邸の前に馬車をつけないのは、誰の邸に行っているのか知られたくないからだな。」
「はい、そうだと思われます。
そのことをリカルド様にお伝えしようか悩んでおりました。
リカルド様のイライザ様に渡している給金がほとんど使われて無くなっておりまして、最近では、イライザ様は新しいドレスなども、作られない状態です。
多分、そちらにお金が流れているのではないかと思いまして、心配でリカルド様にお伝えしました。」
「わかった。
それはいつからだ?」
「旦那様が亡くなった頃からでしょうか。」
「なるほど、調べてみる必要があるな。
この事は、絶対に母には内緒だ。」
「もちろんです、やっと落ち着かれているのですから、リカルド様も欠かさずキャサリン様のところへ向かわれてください。」
「ああ、わかっている。
イライザの件は、べモートに調べさせるか?」
「それが良いかと思います。
べモートは、口が硬いですし、探らせるのには、うってつけだと思われます。」
「じゃあ、早速連れて来てくれ。」
「失礼します。」
ライナスが連れて来たべモートは、この邸の私兵の一人で、侯爵家の暗部を引き受ける男である。
口が硬いし、他の使用人達と群れないのも気に入っている。
「べモート、早速だがイライザが、昼間御者と離れた後、どこに向かっているのか調べてほしい。
給金ははずむ。
だが、他言無用だ。
約束できるか?」
「はい、分かりました。」
そう約束すると、べモートは戻って行った。
「もう、お仕事は終わりましたの?」
「ああ。」
「今日も疲れたよ。
一緒に風呂に入った後、マッサージしてくれるかい?」
「ええ、リカルド様の体調がもう大丈夫でしたら。」
そんな僕の要求にも拒否することなく、顔を赤らめて答えるイライザは、可愛い。
もう十年も一緒にいるのに、僕に向かって、顔を赤らめ、紫の瞳で見つめてくる。
そんな反応されたら今すぐにと思うが、先に聞きたいことがある。
「僕が風邪をひいた時、ノーマン医師と何かあった?
見つめあっていたように思えるんだが?」
「いいえ、そんな事ありませんでしたわ。」
「僕にはそう見えたんだが。」
「違いますよ。
リカルド様を診ていただいたから、軽く会釈をしただけです。」
「そうか。
最近、新しいドレスを作っていないと、ライナスが言っていたよ。」
「ええ、充分に持っていますし、いらないかと。」
「給金が足りないわけじゃないのかい?」
「まぁ、大丈夫ですけれど、いただけるなら、嬉しいです。」
「ドレスを作らないとしたら、何に一番かかっているんだい?」
「街で美味しい物を食べたり、劇をみたり。」
「最近誰と行っているんだ?
仲が良かった夫人は、親の介護とかで、領地に戻っているのではなかったかい?」
「まぁ、そうですねぇ。
友人は他にもおりますから…。」
イライザは最後はしどろもどろになりながら、僕の気を逸らすために、抱きついてキスをして来た。
それは、効果抜群で、僕は今はこれ以上の追求をやめることにして、キスを深めた。
「やあ、リカルド、もう大丈夫かい?」
「ああ、マーカス、もう全快だよ。」
「だろうな。
可愛いイライザ夫人に甘やかされて、デレデレしているリカルドが目に浮かぶよ。」
「まるで僕達を見ていたようだな。」
「図星かよ。
全くいつになったら、新婚気分が抜けるんだ?」
「多分、無いな。」
「本当に羨ましいよ。」
マーカスは僕と最も仲のいい友人で、僕達夫婦のことも大体知られている。
学院の頃から、僕の女性関係から好みまで、すべて把握しているのだ。
そして、僕の好みの令嬢が来ていると、あの舞踏会で教えてくれたのも、マーカスだった。
マーカスはその後、同じ侯爵令嬢と結婚し、今は二児の父である。
マーカスの妻となった女性は、子育てに力を入れているため、イライザとは挨拶程度の仲である。
「そう言えば、イライザがちょっと怪しいんだよ。
僕といる時は、いつも通りなんだが、ライナスも何か言いたそうだったし、僕と長年の付き合いの医師と二人で、目だけで会話していた。
イライザには、僕に知られたくない何かがあるんた。
だからって、その医師と秘密の交際をしているはずはないとは、思うけれど。
イライザと医師の年齢は、親子ほど違うし、僕はイライザが僕を裏切るとは、思えないんだよ。」
「おお、リカルドもそんなことを悩むようになったか、いいぞ。」
「何だそれ?」
「たまには、そう言うのも、刺激があっていいだろ?
その方が燃えるだろ?」
「他人事だと思って。」
「まあまあ、イライザ夫人に限って何もないんだろ?
わかっているくせに。」
「とは思うけれど、気にかかる。」
「じゃ、それとなく聞き出すか、内緒で嗅ぎ回るかの二択だな。」
「とりあえず、イライザと話してからだな。」
「ああ、そうしろ。
何が出てきても必ず俺に相談するんだぞ。」
「わかった。」
「おかえりなさい。」
「ああ、ただいま。
ライナスは?」
「さっき、侍女長と話していたわ。」
「そしたら、執務室に来るようにと、伝えてくれ。」
「お仕事ですか?」
「ああ、そんなものだ。」
僕は王宮から帰ると、いつものようにイライザを抱きしめて、頭にキスをし、執務室に向かう。
出迎えてくれたイライザは、今日も可愛いし、もう少し二人でゆっくり抱き合いたいが、今は話が先だ。
「リカルド様、お迎えできませんで、申し訳ありません。」
「いや、構わない。
少し話がしたいんだが。」
「はい、大丈夫です。」
ライナスと二人で、執務室のソファに座ると、ライナスがお茶を入れ、対面に座る。
「この前言いかけた事についてだが。」
「はい、リカルド様にお伝えしたいと思っておりました。
最近イライザ様は、昼間ご自身のみでお出かけになり、いつも王都の外れに馬車で向かわれます。
御者の話によると、どこかの邸ではなく、木の下が待ち合わせ場所だそうで、そこで待っていると、イライザ様が歩いてやって来るそうです。
なので、お茶会などではなく、誰かに会いに行っているのではないかとのことです。」
「なるほど。
邸の前に馬車をつけないのは、誰の邸に行っているのか知られたくないからだな。」
「はい、そうだと思われます。
そのことをリカルド様にお伝えしようか悩んでおりました。
リカルド様のイライザ様に渡している給金がほとんど使われて無くなっておりまして、最近では、イライザ様は新しいドレスなども、作られない状態です。
多分、そちらにお金が流れているのではないかと思いまして、心配でリカルド様にお伝えしました。」
「わかった。
それはいつからだ?」
「旦那様が亡くなった頃からでしょうか。」
「なるほど、調べてみる必要があるな。
この事は、絶対に母には内緒だ。」
「もちろんです、やっと落ち着かれているのですから、リカルド様も欠かさずキャサリン様のところへ向かわれてください。」
「ああ、わかっている。
イライザの件は、べモートに調べさせるか?」
「それが良いかと思います。
べモートは、口が硬いですし、探らせるのには、うってつけだと思われます。」
「じゃあ、早速連れて来てくれ。」
「失礼します。」
ライナスが連れて来たべモートは、この邸の私兵の一人で、侯爵家の暗部を引き受ける男である。
口が硬いし、他の使用人達と群れないのも気に入っている。
「べモート、早速だがイライザが、昼間御者と離れた後、どこに向かっているのか調べてほしい。
給金ははずむ。
だが、他言無用だ。
約束できるか?」
「はい、分かりました。」
そう約束すると、べモートは戻って行った。
「もう、お仕事は終わりましたの?」
「ああ。」
「今日も疲れたよ。
一緒に風呂に入った後、マッサージしてくれるかい?」
「ええ、リカルド様の体調がもう大丈夫でしたら。」
そんな僕の要求にも拒否することなく、顔を赤らめて答えるイライザは、可愛い。
もう十年も一緒にいるのに、僕に向かって、顔を赤らめ、紫の瞳で見つめてくる。
そんな反応されたら今すぐにと思うが、先に聞きたいことがある。
「僕が風邪をひいた時、ノーマン医師と何かあった?
見つめあっていたように思えるんだが?」
「いいえ、そんな事ありませんでしたわ。」
「僕にはそう見えたんだが。」
「違いますよ。
リカルド様を診ていただいたから、軽く会釈をしただけです。」
「そうか。
最近、新しいドレスを作っていないと、ライナスが言っていたよ。」
「ええ、充分に持っていますし、いらないかと。」
「給金が足りないわけじゃないのかい?」
「まぁ、大丈夫ですけれど、いただけるなら、嬉しいです。」
「ドレスを作らないとしたら、何に一番かかっているんだい?」
「街で美味しい物を食べたり、劇をみたり。」
「最近誰と行っているんだ?
仲が良かった夫人は、親の介護とかで、領地に戻っているのではなかったかい?」
「まぁ、そうですねぇ。
友人は他にもおりますから…。」
イライザは最後はしどろもどろになりながら、僕の気を逸らすために、抱きついてキスをして来た。
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