無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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33.魔物の中心となるもの

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 次の日も朝から討伐隊の前線で闘う。

 すると、最奥に小さな朽ちた邸があった。

 そこから、魔獣達が湧き出ているようだった。

 魔獣を倒しながらも、少しずつ邸に入る。
 中は苔むしており、長い年月が感じられる。

「ここは昔誰かの邸だったのか?」

「そうでしょうね。」

「あそこの瘴気が一層濃いぞ。」

 近づいて、中に入るとそこは寝室のようで、部屋の中心にベッドがあり、ベッドの中に朽ちた骸骨のような人型が横たわっている。

 その周りには、ドレスを来た骸骨が椅子に縛られて、取り囲む異様な光景だった。

「これは。」

「多分、真ん中のベッドの人に捧げられた生贄のようなものなんだろう。

 それが長い時をかけて、瘴気を生み出しているんだろう。」

「気の毒に、周りの人達は犠牲になった女性達なんでしょうね。」

「ああ、多分。」

「じゃあ、この邸全体を浄化する。
 キャロ、ダニエル一緒にやるよ。」

「はい。」

 二人は頷き、レオナルドと魔力を合わせて、浄化をする。

 すると、だんだん瘴気は薄まり、それと同時に人型の骸骨達は煙のようになり、空に消えて行った。

 そこには、朽ちた邸とベッドだけが残された。

 ここには、恐ろしい魔物や大きな魔獣が住み着いた訳ではなく、元々は人の思いが、情念となり、魔物のように瘴気を生み出し、魔獣を生み出したようだ。

 キャロライナは、後始末する魔法騎士達を横目に、ダニエルにお願いし、一度ローレンス邸に戻り、庭園で美しい花と美味しいワインをトラバスにもらい、再び戻る。

 そして、寝室に花束とワインをたむけ、亡くなった人達が、心穏やかに眠れることを祈る。

 そして、討伐隊は救護テントのある本部へ戻った。

「ここは撤収だから、魔力残っているやつは、救護テントの人達を俺とダニエルと共に、王都の治療院へ全員転移させる。」

「今からですか?
 もう魔力はそれほど残っていません。」

「ダニエルはどう?」

「キイナとできるのであれば。」

 ダニエルは頷く。

「じゃあ、俺とダニエルでやってしまおう。」

 それから、レオナルドはダニエルと数十人の怪我人を王都の治療院に転移させた。

 隊員達はその魔力の差に何も言えず、見守る。

 そして、全員の怪我人を転移させると何事もなかったように、また、三人はローレンス邸に転移して帰って行った。

 残された隊員達は、その夜それぞれの健闘を讃え合い、夜を過ごし、翌日王都へと戻って行った。

 瘴気がなくなり、澄んだ空気を生み出す森は再び、動物達が住み良い、森へ戻って行った。
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