無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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32.日帰り討伐

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「今日はここまでだ、撤収。」

 夕暮れ近くなると、レオナルドは全体に指示を出して、救援室のテントまで戻る。

 隊員達は近くに野営用のテントがあり、そこに寝泊まりしている。

「じゃあ、俺達は行くか?」

 そう言って、レオナルドはキャロライナとダニエルを連れて、ローレンス邸まで転移した。



 残った隊員達はあれほど、魔力を消費しながら闘った後、何事もなかったように、自分の邸まで戻る潤沢な魔力が羨ましいが、そもそもレベルが違うと諦める。

 自分達はテントで体を休め、何とか明日までに、魔力を回復するのでいっぱいいっぱいだ。

 魔獣討伐を毎日日帰りするなんて、聞いたことはない。

 だか、それをやるのが、レオナルド様で、昔は一緒にテントで寝起きしたものだが、キャロライナさんを連れている今、絶対にないだろう。

 キャロライナさん自体は気さくに、骨折を治すために、声をかけてくれる。

 でも、その時は必ず、レオナルド様かダニエルさんがいる。

 鉄壁の守りなのだ。
 その上、何も言ってないけれど、キャロライナさんは、何となくやたらと魔力を感じる指輪までするようになった。

 多分、近づいたら、命に関わるものがついている筈だ。

 そんなことを考えながら、隊員はご飯を食べて、浄化魔法をかけ、明日に備えて眠る。



 ローレンス邸に転移した三人は、

「お疲れ様。
 ダニエルは今日も自分の家に帰るの?
 レオもいるから、今日こそご飯食べて行かない?

 いつも、手伝ってくれているのに、おもてなしもしないで申し訳ないわ。」

「キイナ、魔獣討伐中におもてなしの心配するの、キイナだけだよ。
 笑える。」

「そうなの?
 魔獣討伐が人生で初めてだから、正解がわからないわ。

 それに私達討伐中も基本的に見てるだけだから、体はラクよね。」

「うん、僕も結界張りながら、討伐隊について行ってるだけだからね。

 レオナルド様や他の魔法騎士達は大変そうだけど。」

「だって、ダニエルったら、途中から、結界の中にいい香りするようにしたでしょ。」

「あっ、気づいてた?
 周りは血なまぐさいでしょ。

 キイナにそんな匂いがついたら、困るし、僕も余裕があったから、色々考えてさ。」

「ふふ、途中、爽やかなフルーツの香りになったから、何か討伐の風景までもが、変わって来る気がするから、不思議ね。」

「ダニエルもう、解散だ。」

 レオナルドは、これ以上我慢ができそうもないので、終わらない二人の会話を、無理矢理切る。

「はい、お疲れ様です。
 では明日。」

 ダニエルは今日も帰って行った。

 すぐに、レオナルドはキャロライナを抱きしめ、キスする。

「俺、いつまでキャロといちゃつくあいつを見ながら、闘うんだ?

 今度、リーにあったら、絶対に女性魔法師を送ってくるように、文句を言ってやる。」

「女性魔法師の方もいるの?」

「ああ、いるにはいるけど、俺達が絡む任務は危険を伴うものばかりだから、来てくれないだろうな。

 何しろ、他国の牢からの救出と魔獣討伐前線だから。」

「そうね。
 私達はダニエルのおかげで、安心していれるから、レオそこは、我慢よ。」

「つらい。」

「じゃあ、ご飯食べたら、いちゃついて、レオのイライラ解決しましょ。」

「あー、言ったね。」

「うん、私もいちゃつきたい。」

 そう言って、二人は明日に備える。



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