無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

文字の大きさ
上 下
31 / 39

31.魔獣討伐

しおりを挟む
 次の日の朝になると、約束通りダニエルがローレンス邸の庭先にやって来た。

 キャロライナの指に輝く指輪をめざとく見つけ、

「おはようございます。
 この指輪は?」

「レオが新しく作ってくれたのよ。
 ふふ、婚約指輪なの。」

「恐ろしいので、内容だけ伺っても?」

「ああ、わかり易く言うと、俺が認めたやつはキャロのギフトを使ってもいいけど、性的な目的で、キャロを触るとバチっと電気が流れる仕様にした。」

「なるほど。
 恐ろしい指輪ってことはわかりました。」

「電気流れても、倒れるぐらいで、凶悪なやつじゃないよ。」

「僕性的な意味で、キイナに触ったことないです。」

「まぁ、それを判断するのは、指輪だから。」

「やっぱり、怖い。
 僕の心臓大丈夫かな?」

「さあ、話はこれくらいにして、行こう。」

 レオナルドの言葉で、さっと真剣な顔つきに変わったキャロライナとダニエルは、三人で討伐隊の救援室へ転移した。





 瘴気の立ち込める森では、今も魔法騎士達が魔獣と戦っている。

「様子はどう?」

 救援室の隊員はレオナルドを見て明らかにほっとしたような笑顔を見せる。

「レオナルド様、もう体調は?」

「ああ、もういい。」

「それなら、良かったです。
 少しずつ最奥に近づいていますが、湧き出る魔獣の数がすごくて、相変わらずです。」

「そうか、俺達もこれから加わる。」

「ありがたいです。
 レオナルド様がいるのと、いないのでは、進み具合が雲泥の差ですから。」

「今は俺の魔力が増えているから。」

 レオナルドはちらっとキャロライナを見る。

「怪我人や骨折した人は大丈夫?」

 キャロライナは最近は魔獣討伐にかかりきりで、骨折を、治療できていないことが気掛かりであった。

「レオナルド様達が、討伐に行ってからは増える一方です。
 治癒魔法師だけでは、全く追いついていません。」

「そうなの。
 早く討伐を終わらせて、また治療したいわ。」

「そうなったら、ぜひお願いします。」

「じゃ、前線に行こう。
 ダニエル頼んだ。」

「はい。」

 ダニエルはキャロライナの手を掴み、二人の結界を作る。

 それをレオナルドは確かめ、自分の結界を張り、最奥を目指し、それぞれ転移する。



 転移した最奥では、魔法騎士団がおびただしい数の魔獣と闘っていた。

「レオナルド様、来て頂きありがとうございます。
 指揮をお願いします。
 私達はそれに従います。」

「ああ、わかった。
 じゃあ、早速俺を真ん中に隊列を組んで進む。

 自信のあるやつは一歩前に、魔力が減って来ているやつは一歩下がれ、お互いにフォローしながら進むんだ。」

「はい。」

 一斉に隊列は整う。

「ダニエル達は俺の後ろで、隊列より前には絶対に出るな。」

「わかりました。」

「じゃ全体行くぞ。」

 レオナルドが来たことで、魔法騎士達は士気があがり、どんどん先へ進んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪女の秘密は彼だけに囁く

月山 歩
恋愛
夜会で声をかけて来たのは、かつての恋人だった。私は彼に告げずに違う人と結婚してしまったのに。私のことはもう嫌いなはず。結局夫に捨てられた私は悪女と呼ばれて、あなたは遊び人となり、再びあなたは私を諦めずに誘うのね。

幽閉された王子と愛する侍女

月山 歩
恋愛
私の愛する王子様が、王の暗殺の容疑をかけられて離宮に幽閉された。私は彼が心配で、王国の方針に逆らい、侍女の立場を捨て、彼の世話をしに駆けつける。嫌疑が晴れたら、私はもう王宮には、戻れない。それを知った王子は。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた

月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

処理中です...