無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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27.諦めない

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 レオナルドに無理矢理転移させられたキャロライナはいつものローレンス邸の庭先にいた。

 ひどいわ、レオ。
 私がこんなことされて、喜ぶとでも。

 最後まで、レオと一緒なら、たとえ命を落とすとしても、すべてを受け入れるのに。

 泣いていても、仕方ない。
 諦めないわ、待ってなさい、レオ。

 キャロライナはローレンス邸に向かって、走りだした。

「トラバス、レオが大変なの、至急王宮に行きたいの。」

 トラバスが用意した馬車に乗り、王宮へ急いだ。
 リーフェン王に会い、挨拶もそこそこに大至急と言って、ダニエルを呼び出した。

「忙しいのに、ごめんね、ダニエル。
 レオが大変なの。
 一緒に魔獣討伐しているところに連れて行って。」

「久しぶりだね、キイナ。
 全然声がかからないから、さみしかったよ。」

「そうね、そうやって呼ばれるのも久しぶりだわ。
 早く行きましょ。」

 会話している時間すら、惜しい。

「わかったよ。
 じゃ手を繋いで。」

 二人は魔獣討伐の救護室に転移した。

 そして、隊はレオナルドの命で撤退し、全員無事であること知る。

 だが、レオナルドは魔力が不足して、動けず、その場に結界を張り、体力を回復すると言うが、隊員もそれぞれに魔力が枯渇していて、レオナルドを助け出しに向かうことはできないと聞かされる。

「じゃ、レオもとりあえず無事で、魔力さえ戻れば、転移して帰って来るのね。」

 キャロライナはほっとする。
 だか、一方でダニエルはその深刻さに気づいた。

「キイナ、表向きはそうなんだけど、中身はそうじゃない。

 結界を張りながら、魔力が戻ることはほぼ不可能なんだよ。

 レオナルド様の魔力がいつまでもつかわからないが、いずれ魔力切れで、命が失われるか、結界を破られ、魔獣にやられるかの、二択なんだ。」

 それを聞いたキャロライナはいても立ってもいられなくなり、ダニエルと共に、少しでも、多く魔力が残っている者に、レオナルドと最後に別れた場所に案内してもらうために、魔法騎士を連れて二人は転移する。 

 レオナルドはその後、一歩も動けなかったようで、隊員達と別れたその場所に倒れていた。

 案内してくれた魔法騎士を帰すと、二人は結界を張りながら、レオナルドに近づいた。

 レオナルドの周りには、すでに魔獣が取り囲み、レオナルドの結界が薄まるのを待っている。

 ダニエルは魔獣を結界で押しのけ、レオナルドの周りに張っている結界の外側に、二重になるように自分達も入れた結界を張る。

「これで、ひとまず大丈夫だ。」

「レオ、起きて、レオ。」

 レオナルドはピクリともしない。

「キイナ、レオナルド様が目覚めるか、魔力切れを起こして、結界がなくならない限りどうにもならないよ。

 僕の力では、レオナルド様の結界を破ることはできないんだ。」

「このまま、転移はできないの?」

「さすがにレオナルド様の結界があるから、それごと転移することはできない。
 待つしかないよ。」

「じゃあ、待つけど、この周りの魔獣達はどうにかならないの?

 みんなこっちを見てる。
 私達は檻に入った餌だと思われているのね。」

「そう言うことだよ。
 シュールだね、この状況。」

「もう、レオ、早く起きて。」

 叫んでみるが、レオナルドの結界のせいで、ゆすり起こすこともできない。

「ねぇ、案外長引いて何日も、レオの結界がそのままなら、逆にダニエルが、魔力切れ起こして私達の結界が先に破れることはないの?」

「あー、気づいちゃった?
 もしかしたら、あるかもね。

 僕だって、キイナがいるけど、今日はもう転移三回して、今、三人分の大きな結界張り続けているからね。

 僕はそもそもレオナルド様のほどの魔力もないし。

 とにかく、僕達が離れたら結界そのものがおしまいだから、手を繋ぐだけじゃなく、腕も組もうか。」

「そうね。
 今晩はこのまま寝ることになりそうだし。」

「キイナは案外肝がすわっているね。
 僕は魔獣に囲まれたまま眠れそうもないよ。」

 そう言う二人だか、魔力消費の疲労に勝てず、しだいにその場で眠ってしまった。
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