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26.魔獣のおびただしい群れ
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キャロライナとレオナルドは、日課の魔獣討伐の救護室に骨折を治しに来ている。
毎日続けることで、最初は単純骨折のみ治癒できた二人だか、最近は複雑骨折や全身骨折だらけの人まで、治癒できるようになっていた。
「何か、最近前より、隊員達の骨折の仕方が悪くなってるような気がする。
人数も増えているし。」
「はい、魔獣が凶暴性を上げ、数も増えておりまして、討伐する魔法騎士を増やしていますが、対応しきれていないのです。」
救護室の職員は困ったようすで、頷く。
「リーは俺にまだ何も言って来てないけれど、そろそろ動くかな。」
「レオナルド様が一緒に闘ってくれたら、みんなの士気も上がります。」
「じゃあ、キャロ。
君を邸に送るよ。」
「また、留守番なの?
一緒にいさせて。」
「その話は片付いているけど。」
「今日は絶対に一緒に行く。
レオならできるよ。
手を繋いで、二人の結界張りながら、闘うぐらい。
その方が沢山魔獣を倒せるんだから。
あの頃より、二人は息合って来てるでしょ。」
「まぁ、そうだな。
じゃあ、やっぱり一緒に行くか。」
レオナルドは最近の怪我人の多さが気になって、キャロライナの安全は自分で守ることにして、二人は魔獣討伐に加わった。
レオナルドはキャロライナと手を繋いで、二人を結界で覆い、魔法を展開する。
レオナルドが、剣を振るうと最初はウヨウヨしていた魔獣も少しずつ数を減らした。
しかし、夕暮れになると討伐隊は皆、魔力が枯渇しだし、撤退を余儀なくされる。
倒しても湧くように出てくる魔獣は、奥に進むほど魔力を帯び、凶暴性を増す。
それを、三日間繰り返していると、先が見えない闘いに疲れ、次第に隊員達にも隙が生まれる。
若い討伐隊の背後を狙う魔獣を倒していると、咄嗟に振り向いたその隊員が、レオナルド達に体当たりしてしまう。
すると二人の繋いだ手が離れ、レオナルドは、急ぎキャロライナに結界を張る。
その瞬間に、魔獣の鋭い爪が、レオナルドの肩の肉をさく。
「レオっ。」
レオナルドの肩から血が流れ、キャロライナは急いで腕を庇うレオナルドのそばに戻る。
「大丈夫だ。
だけどこれで、キャロと手を繋いで、闘うのは無理だな。
キャロだけ、戻す。」
「やだ、ダメ。
レオも一緒に戻ろう。
明日魔力が戻ったら、治癒魔法で治して、またここに戻って来よう。」
「俺はこのくらいなら、いつでも闘って来た。
大丈夫だよ。」
レオナルドは若い討伐隊を残して、自分だけ、撤退することができなかった。
何故なら、それほどまでに、今残っている討伐隊は、魔力が残り少なく、隊をまとめる者を必要としていたし、自分がいなくなることで、何人もの隊員達が犠牲になるのも、目に見えてわかっているから。
レオナルドは、涙を浮かべるキャロライナを一瞬だけ見つめると、キャロライナ一人をローレンス邸に遠隔転移させた。
そして、再び討伐隊に加わるものの、キャロライナを失ったレオナルドは、魔力不足になっていた。
魔力を増強した状態で、朝から闘い続け、さらにキャロライナを遠隔転移させているので、魔力はもうどこまでもつのか、わからない。
だが、隊をまとめて、全体を撤退させるまで、この場を離れることはできない。
もう少しなら、大丈夫だ。
自分に言い聞かせ、魔獣を次々と討伐し、隊を集め、撤退の指示を出す。
隊が集まり、何とか全体が撤隊する時にはもう、レオナルドは膝から崩れ、立ち上がることができなかった。
レオナルドが肩を負傷し、血が流れたままであっても、隊の皆はそれぞれ、魔力が枯渇し、レオナルドを抱えた状態で、救護室まで転移できるものはいない。
「大丈夫だ。
俺はここで、結界を張って、魔力の回復を待つから。」
魔力不足の隊員達は、どうすることもできずに、レオナルドをそこに残して、その場を離れた。
一人なったレオナルドは、ついに横たわり、目を瞑る。
魔力が回復するまで、この結界がもつといいが、魔力を使いながらの、回復はほぼ見込めないのは、わかっている。
キャロ、俺はここで終わるのかもな。
最後に見たのが、涙じゃなく、笑顔だったら、良かったのに。
そう思いながら、レオナルドの意識は薄れ、ついになくなった。
毎日続けることで、最初は単純骨折のみ治癒できた二人だか、最近は複雑骨折や全身骨折だらけの人まで、治癒できるようになっていた。
「何か、最近前より、隊員達の骨折の仕方が悪くなってるような気がする。
人数も増えているし。」
「はい、魔獣が凶暴性を上げ、数も増えておりまして、討伐する魔法騎士を増やしていますが、対応しきれていないのです。」
救護室の職員は困ったようすで、頷く。
「リーは俺にまだ何も言って来てないけれど、そろそろ動くかな。」
「レオナルド様が一緒に闘ってくれたら、みんなの士気も上がります。」
「じゃあ、キャロ。
君を邸に送るよ。」
「また、留守番なの?
一緒にいさせて。」
「その話は片付いているけど。」
「今日は絶対に一緒に行く。
レオならできるよ。
手を繋いで、二人の結界張りながら、闘うぐらい。
その方が沢山魔獣を倒せるんだから。
あの頃より、二人は息合って来てるでしょ。」
「まぁ、そうだな。
じゃあ、やっぱり一緒に行くか。」
レオナルドは最近の怪我人の多さが気になって、キャロライナの安全は自分で守ることにして、二人は魔獣討伐に加わった。
レオナルドはキャロライナと手を繋いで、二人を結界で覆い、魔法を展開する。
レオナルドが、剣を振るうと最初はウヨウヨしていた魔獣も少しずつ数を減らした。
しかし、夕暮れになると討伐隊は皆、魔力が枯渇しだし、撤退を余儀なくされる。
倒しても湧くように出てくる魔獣は、奥に進むほど魔力を帯び、凶暴性を増す。
それを、三日間繰り返していると、先が見えない闘いに疲れ、次第に隊員達にも隙が生まれる。
若い討伐隊の背後を狙う魔獣を倒していると、咄嗟に振り向いたその隊員が、レオナルド達に体当たりしてしまう。
すると二人の繋いだ手が離れ、レオナルドは、急ぎキャロライナに結界を張る。
その瞬間に、魔獣の鋭い爪が、レオナルドの肩の肉をさく。
「レオっ。」
レオナルドの肩から血が流れ、キャロライナは急いで腕を庇うレオナルドのそばに戻る。
「大丈夫だ。
だけどこれで、キャロと手を繋いで、闘うのは無理だな。
キャロだけ、戻す。」
「やだ、ダメ。
レオも一緒に戻ろう。
明日魔力が戻ったら、治癒魔法で治して、またここに戻って来よう。」
「俺はこのくらいなら、いつでも闘って来た。
大丈夫だよ。」
レオナルドは若い討伐隊を残して、自分だけ、撤退することができなかった。
何故なら、それほどまでに、今残っている討伐隊は、魔力が残り少なく、隊をまとめる者を必要としていたし、自分がいなくなることで、何人もの隊員達が犠牲になるのも、目に見えてわかっているから。
レオナルドは、涙を浮かべるキャロライナを一瞬だけ見つめると、キャロライナ一人をローレンス邸に遠隔転移させた。
そして、再び討伐隊に加わるものの、キャロライナを失ったレオナルドは、魔力不足になっていた。
魔力を増強した状態で、朝から闘い続け、さらにキャロライナを遠隔転移させているので、魔力はもうどこまでもつのか、わからない。
だが、隊をまとめて、全体を撤退させるまで、この場を離れることはできない。
もう少しなら、大丈夫だ。
自分に言い聞かせ、魔獣を次々と討伐し、隊を集め、撤退の指示を出す。
隊が集まり、何とか全体が撤隊する時にはもう、レオナルドは膝から崩れ、立ち上がることができなかった。
レオナルドが肩を負傷し、血が流れたままであっても、隊の皆はそれぞれ、魔力が枯渇し、レオナルドを抱えた状態で、救護室まで転移できるものはいない。
「大丈夫だ。
俺はここで、結界を張って、魔力の回復を待つから。」
魔力不足の隊員達は、どうすることもできずに、レオナルドをそこに残して、その場を離れた。
一人なったレオナルドは、ついに横たわり、目を瞑る。
魔力が回復するまで、この結界がもつといいが、魔力を使いながらの、回復はほぼ見込めないのは、わかっている。
キャロ、俺はここで終わるのかもな。
最後に見たのが、涙じゃなく、笑顔だったら、良かったのに。
そう思いながら、レオナルドの意識は薄れ、ついになくなった。
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