無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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24.証言の代償

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 席に座った男性と向き合うと、

「それでは、お時間をいただきありがとうございます。

 早速、確認したいのですが、あなたが正義感を出したと言うのは、少し前、王宮で起きた令嬢の階段転落事件のことですか?」

 とキャロライナが話すと、

 それを聞いた瞬間、その男性は息をのんだ。

「どうしてそれを?」

「やはり、そうでしたか。
 自己紹介が遅れましたが、私はあなたが証言してくださった、無実の令嬢です。
 キャロライナ・グウェンと申します。

 お礼を申し上げるのが遅くなり、誠に申し訳ございません。

 それと、無実と証言してくれたこと、心より感謝申し上げます。」

 そう言って、キャロライナは立ち上がりカーテシーをする。

「えっ、あなたが?
 別人に思えるのですが。」

「ああ、彼女には、認識阻害魔法がかかっている。
 こうしたら、わかるかな?」

 そう言って、レオナルドがキャロライナの魔法を解くと、その男性は納得した顔をする。

「この人です。
 全然離れた位置にいたのに、何故か捕まえられていったのは。

 その当時、周りにいた人々はみんなおかしいと思っていながら、おかしいとは言えなかった。
 みんな巻き込まれたくなかったんですよ。

 こちらこそ、その場ですぐに言っていたら、変わっていたかもしれないと、後から、何度後悔したことか。

 でも、結局言い出すまで、2日間もかかりました。
 こちらこそ、勇気を出せなくて、すみません。」

 そう言って、男性は頭を下げる。

「気になさらないでください。

 実際、あなたが証言してくれた時には、無実を訴えるのを諦めて、こちら、レオナルド・ローレンスさんと言うのですけど、この方がダーネル王国に転移させて、くれたんですよ。」

「そうでしたか。
 良かった。

 僕が勇気を出さなかったせいで、一人の無実の女性が、罪に問われ、一生牢の中から出られないかもしれないと考えると、夜も眠れないほど、悩みました。」

「私はあの時、みんなに見放されたと思っていました。

 私のことを心配してくれた人がいたなんて、あの時の自分に教えてあげたかった。

改めて、ありがとうございます。
 失礼ですが、名前を伺っても?」

「私はエイデンと申します。
 王宮のウエイターをしていました。

 それで、あなたのことを見たのです。
 あなたはこの国の侯爵家の方ですからね。

 失礼のないようにするのは、王宮で働くものの基本です。」

「そうなのですね。」

「僕が当局に真実を訴えると、突き落とした女性が捕らえられました。

 しかし、無実のあなたを確認せずに捕らえたことで、近衛騎士達は責任をとらされたようで、私を恨んで嫌がらせをするようになりました。

 元々、この国の役人をよく思っていませんでしたが、ついに見切りをつけて、ダーネル王国に行くことにしたんです。

 でも、役人達はそれでも私に嫌がらせをし足りないのか、国境を越えさせないように、手をまわしたようです。 

 それで、仕方がないので、こちらで働かせてもらっていたのです。」

 やはり、私の無実の証言をした方は、巻き込まれたばっかりに、大変な思いをされていた。

「エイデンさん、ぜひ私達にダーネル王国に行くお手伝いをさせてください。

 その後、一日ぐらいは具合が悪くなるんですが、聞いていただけますか?」
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