無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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20.それぞれの妹

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 キャロライナとレオナルドは、森から転移して、ローレンス邸に戻って来た。

「なぁ、キイナってどこいうこと?」

「キイナは私の偽名。
 オーブリー王国では、私はお尋ね者だから、役人達にバレないように、使ってたの。」

「ふぅん、まぁだったら、仕方ないけど、ダニエルと仲良さげだったね。」

「うん、新婚夫婦って言う設定でオーブリー国に行ってたから。」

「その設定いる?」

「いるよ。
 私、レオ以外と魔力合わせるには、レオからもらった指輪を外さないといけなくて、そうすると、ダニエルに常に認識阻害魔法かけてもらわないといけないから、手をずっと繋いでいないといけなかったの。」

「指輪に俺以外を近づけない魔法を込めたのが、完全に災いしてる。

 それはそれで、逆に不便だから、もう一個指輪を作るよ。」



「レオ。
 来ちゃった。」

 サマーさんがトミーを連れて、レオナルドがいる庭園にやって来た。

 そして、レオナルドの反応を伺っている。

「ああ、聞いたよ。
 ここで一緒に住むといい。
 嫌なら、離れに家を作ってやってもいい。」

「迷惑じゃないの?」

「別に。」

 サマーは一瞬悲しい顔をする。

「もう、レオ。
 私が言うのもなんだけど、そこは仲良く暮らそうって言うところよ。
また、一緒に暮らせて嬉しいくせに」

「まぁな。」

 「サマーさん、改めて私もよろしくね。」

「ありがとう。
 心強いわ。
 もう、キャロって言った方がいいかな。
 ダーネル王国は安全だから。

 迎えに来てくれたこと、こちらで受け入れてくれたこと、本当に感謝してる。」

「うん、我ながら、少しは役に立つのよ。
 私も。ふふ。」

 レオナルドはサマーから、トミーを抱き上げ、笑いかける。

「それにしても、ちょっと見ないうちに、トミー大きくなったな。」

「ええ、子供は成長が早いから。」

「明日、ジョンを救出に行ってやるから。
 だから、心配するな。」

「ありがとう。」

 サマーさんはやっと笑顔を見せた。



 翌日、キャロライナとレオナルドは認識阻害魔法を使い、オーブリー王国に入り、役人に危害を加えるふりをして、あっさりと牢に侵入することに成功した。

 前回のように、レオナルドは魔力封じをされ、二人の牢の位置関係も同じだった。

 レオナルドの入った牢には、ジョンがいて、痩せてはいたが、衰弱はそれほどでもない。

「大丈夫か?
 見張りがいなくなったら、動くからな。
 それまで、頑張れ。」 

 レオナルドは他の者に聞こえないように、小声でジョンに話す。

 ジョンはほっとしたように頷く。

 見張りの近衛騎士が去ったら、前回と同じように転移して、終了のはずだったが、予想外の人物が、キャロライナと同じ牢の中にいた。

 シーラ、どうしてここに。
 
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