無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

文字の大きさ
上 下
16 / 39

16.レオナルドの妹の悩み

しおりを挟む
 リーフェン王が紹介してくれたのは、若い魔法師だった。

 優しい微笑みは穏やか人柄を表し、二人はすぐに打ち解けた。

 手を繋がないと私のギフトが使えないので、二人は夫婦という設定で、新婚旅行にやって来ていることにした。

 魔法師はダニエルと言う名前で、認識阻害魔法を使い、キャロライナの瞳を紫にし、髪は茶色から、シルバーに変えてくれた。

 オーブリー王国では、私はお尋ね者なので、キイナと言う偽名を使うことにする。

 そして、指輪はレオナルド以外が、私の魔力を使えないようになっているので、外して持った。

「ダニエル、ここだわ。」

 転移魔法で、オーブリー王国に転移し、トラバスに聞いて来たレオナルドの妹の家の前に立って、呼び鈴を鳴らす。

 そして、出て来た若い女性に、

「こんにちは、私レオの代理で来たの。
 キイナと呼んで欲しいわ。」

 と明るく話かけるが、

 レオナルドの妹のサマーは不信そうに二人をじろじろ見る。

「本当にレオの代理で来たのか、信じられないよね。」

「はい」

 「急ぎで対応した方がいい手紙がサマーさんから、レオのところに来たから、私が代理で来たの。

 今、レオは辺境に行ってて、すぐにこちらに来ることはできないの。

 じゃあ、信じてもらえるようにレオのことを話すわ。」

「はい。」

「邸の執事はトラバス。
 親友はリー。
 軍馬を飼っていて、お気に入りの場所は丘の上。
 子供の頃の夢は治癒魔法師よ。」

「あなたはレオとどう言う関係?
 恋人なの?」

「それは違うけど、私達は魔法を使うパートナーなの。」

「ふーん。
 まぁ入って。」

 家の中に入って、テーブルを囲み、座る。
 居心地の良さそうな、子供用ベッドに赤ちゃんが眠っている。

「こちらは、リーフェン様から、紹介してもらった魔法師のダニエルよ。
 
 私は本当はキャロライナと言う名前なの。
 でも、外では絶対にキイナで、呼んでね。
 私もレオと同じく、お尋ね者なのよ。

 早速だけど、何があったの?
 聞かせてくれる?」

「はい。
 息子のトミーが、魔力があることがわかると、役人が来て、魔法師にするって、連れて行こうとしたの、私とトミーを。

 魔力のコントロールが必要だから、教会で暮らすようにって。

 トミーはまだ、一歳にもみたないのに。 
 私達家族を離れ離れに、しようとしたのよ。

 それで、夫のジョンが抵抗したら、役人達が、ジョンを無理矢理連れて行ったの。

 ジョンを解放したければ、トミーを教会に入れるようにって、言っていたわ。」

 そう言って、サマーは泣き出す。

「最初からレオの言うことを聞いて、ダーネル王国に住めば良かった。

 レオはトミーに魔力があるから、いつか役人に目をつけられる可能性があるって心配していたの。

 でも、ジョンはこっちの国の人で、こっちがいいって言うから、住んでいたけど、レオに続いて、ジョンも捕まるなんて。

 レオは魔力があるから、何とか牢から逃れたけど、ジョンは魔力もないし、どうしたらいいのかわからないわ。」

「なるほどね。
 相変わらず酷いわね、この国は。

 ダニエル、例えば私と二人で役人に捕まって、牢に入った後、ジョンさんも一緒に三人で転移して、脱出することは可能かしら?」

「残念ながら、僕はレオナルド様ほど魔力が強くないんだ。
 でも、キイナと魔力合わせるなら、できるかもしれない。
 三人転移か、どうだろう。

 キイナの魔力を合わせるとどうなのかが、わからないよ。」

「とりあえず、サマーさんとトミーを転移させれるか、やってみましょうか?」

「そうだね。
 それできてからだよな、牢に入るのは。

 リスクが高いし、先にサマーさん達を安全なところに避難させた方が良い。」

「サマーさん、とりあえず、もうこの国に住むのは、諦めてもらっていいですか?

 私、牢に入ったことあるんですが、あそこでは、話なんて聞いてもらえません。
 自分達で逃げるしかないんです。

 逃げた後は、お尋ね者になってしまうので、この国にはもう住めなくなるんです。

 ジョンさんを転移させれるかは、やってみないとわかりません。

 サマーさん達の安全確保をするために、ジョンさん救出の前に、サマーさんとトミーをレオの邸に転移させます。

 その後、ジョンさんを救出にむかいます。」

「どうして、そこまでしてくれるの?」

「私はレオに助けてもらって、今、こうして自由にしていれています。

 もし、レオならサマーさん達を絶対に助けると思うから、私も助けます。

 ダニエルはどう?
 ジョンさんの方は帰れなくなる危険も伴うから、先にサマーさん達を転移させて、レオを待つって言う選択肢もあるわ。」

「僕は大丈夫だよ。
 うまくいかなくても、後からレオナルド様来るだろ?」

「多分」

「じゃサマーさん、持って行きたい荷物をまとめて。
 まず、それを転移させようか。

 箱で二つにして。
 僕とキイナで一つずつ持つから。」

「ふふ、引っ越しみたいね。」

「うん、もうここに住めないって、そう言うことだからね。

 本当は必要な物を全部運んでやりたいけど、ジョンさんも心配だから、何回も転移を繰り返す時間がない。

 それと、サマーさん、一つ伝えないといけないことがあるんですが、転移すると、魔力酔いって言って、一日ぐらいは具合が悪くなるから、そこは我慢してほしい。」

「わかりました。
 よろしくお願いします。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪女の秘密は彼だけに囁く

月山 歩
恋愛
夜会で声をかけて来たのは、かつての恋人だった。私は彼に告げずに違う人と結婚してしまったのに。私のことはもう嫌いなはず。結局夫に捨てられた私は悪女と呼ばれて、あなたは遊び人となり、再びあなたは私を諦めずに誘うのね。

幽閉された王子と愛する侍女

月山 歩
恋愛
私の愛する王子様が、王の暗殺の容疑をかけられて離宮に幽閉された。私は彼が心配で、王国の方針に逆らい、侍女の立場を捨て、彼の世話をしに駆けつける。嫌疑が晴れたら、私はもう王宮には、戻れない。それを知った王子は。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた

月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚約して三日で白紙撤回されました。

Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。 それが貴族社会の風習なのだから。 そして望まない婚約から三日目。 先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。

処理中です...