無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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13.鍛錬

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 午前中はレオナルドが執務をしているので、キャロライナと救護室に転移して、治療をするのは、たいてい昼過ぎだった。

 なので、キャロライナは午前中、マルコに読み書き計算を教えている。

「ねぇ、明日からもう少し勉強始めるの、遅くしていい?」

 マルコが、もうしわけなさそうに言う。

「いいけど、どうして?」

「朝はレオナルド様とこの邸の騎士さんとかが、剣の鍛錬をしているんだ。

 僕は魔力もないし、ママを守りたいから、将来騎士になりたくて、トラバスさんに相談したんだ。

 そしたら、朝の鍛錬に参加してもいいって言われたから。
 悪いけど、その後、勉強にしたくて。

 ごめんなさい。
 せっかく、キャロライナ様が勉強教えてくれてるのに。」

「そんなの全然気にしないわ。
 レオは朝鍛錬をしているのね。

 知らなかったわ。
 私もレオが鍛錬をしているところ、見てみようかしら。」



 次の日の朝早くに、エイダに頼んで身支度を整えると、鍛錬場にトラバスに案内してもらう。

「キャロライナ様、あちらが鍛錬場でその隣が、厩舎と馬場です。」

「この邸にはこう言うところもあったのね。
 普段は庭園にいることが多いから、知らなかったわ。」

 キャロライナが見渡すと鍛錬場では、たくさんの騎士とレオナルドが剣を振り、稽古している。

 その中にはマルコもいて、真剣な顔つきで、指導を受けている。

 以前、森の浄化に向かった時、レオナルドはおびただしい数の魔獣と闘っていた。

 普段から、こうして、鍛錬をしているから、すぐに闘うことができるのね。

 最近では、私と治癒魔法を使うことが多いけど、本当は魔獣討伐の方が、彼の能力を最大限に発揮できるんだわ。
 きっと。

 でも、私と一緒だと、魔力は増えるものの、魔獣討伐する時に足手まといになるのは、確実だから、本当は私に構っている時間があるなら、一人で魔獣討伐に行った方がいいのかしら。

 行き場を無くした私に、レオは助手って言ってくれて、いつもそばにいたけれど、レオにとっては、私はいない方がいいのかもしれない。

 レオの優しさに甘えていたわ。

 本当はここを出て、一人で生きていくべきなのかしら。

 レオからしたら、魔力増強が必要な時だけ、一緒にいれば、いいのだろうし。

 どうしたらいいのかわからないけれど、とにかくレオの負担にはなりたくない。

「トラバスありがとう。
 お部屋に戻るわ。」

 そう言うと、逃げるように部屋に戻った。

 レオナルドは最初は楽しそうに、鍛錬を見ていたキャロライナが、次第に眼に涙を溜め、走り去るのを見て、慌てて、トラバスに駆け寄る。

「キャロなんで泣いたんだ?」

「はい?
 泣いてましたか?」

「わからないなら、いい。」

 レオナルドは急いで、キャロライナの後を追う。

 キャロライナの部屋の前で、話しかける。

「キャロ、一緒に馬で遠出しないか?」

 ドアの中から、キャロライナは返事をする。

「マルコに勉強教える時間だから。」

「マルコには、庭師についてもらって、野菜の育て方を学ばせるよ。
 もし、村に帰ったとしたら、必要だから。」

「わかったわ。」

 キャロライナは部屋のドアを開けた。
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