上 下
12 / 39

12.骨折を治す

しおりを挟む
 次の日、二人は魔獣討伐の本拠地に来ている。

 そこは、瘴気が薄らあり、薄暗い森が広がっている。

 救護室担当の隊員が、すぐに気づき、
 
「お久しぶりです、レオナルド様。
 体の方はもう大丈夫ですか?」

「もう噂になってた?
 かっこ悪いな。」

「いいえ、素晴らしいことだと思います。」

「まぁ、聞いているなら、話は早いな。
 毎日一人ずつのみだけど、俺達で骨折してる人を治そうと思ってる。」

「骨折治療ですか?
 大変助かります。
 一人でも、動ける者がほしいところなので。彼女の影響ですか?」

「まぁ、キャロがやりたいって、言うから。」

「では早速お連れします。」

 救護室の担当者はキャロライナをちらっと見て、二人を案内する。

 救護室に入るとそこには、10人ぐらいの怪我人が包帯を巻いて、ベッドに横たわっていた。

「では、この方をお願いします。
 この方は魔獣討伐で、右手・右足を骨折しています。」

「初めまして、私達は治癒魔法をしています。
 怪我を治しますね。」

 キャロライナが優しく声かける。

「本当なのか?
 だったら頼むよ。」

 レオナルドはキャロライナの手を繋いで、反対の手を怪我人にかざす。

 すると、怪我人の骨折と怪我は瞬く間に治る。

「本当だ。
 すべて治りました。
 歩いてみます。」

 その人は、起き上がりスタスタと歩く。

「ありがとうございます。
 一年は寝たきりになると思っていたところです。

 それにしても、レオナルド様に治癒していただけるなんて、光栄です。

 そっちのお姉さんがやってくれるのかと思ってました。」

 その元怪我人は笑顔で、感謝する。

 すると、周りにいるベッドに横たわる人々が、

「俺も頼めないだろうか?」

 と口々に頼み込む。

 担当者が、

「この方達はたくさんの力がなく、一日に一人と言う約束なんだ。」

 そう説明すると皆一様にがっかりした顔をする。

「ごめんなさい。
 私達は、力がほんの少ししかないんです。
 でも、皆さんの力になりたくて。

 そのかわり、できるだけ毎日来ますから、よろしくお願いします。」

 キャロライナがそう言うと、皆、来てくれただけで嬉しい、希望が持てる、と言ってくれた。

 キャロライナは少しだけ、人の役に立てていることに、胸がいっぱいになり、瞳を輝かせる。

 そんな、キャロライナをレオナルドは優しく、見つめる。

 二人で、救護室から出て、転移しようと歩いていると、男が後ろから走って来て、すれ違いざまにキャロライナに触ろうと手を伸ばした。

 すると、バチンと音がして、その男は倒れた。

 キャロライナは自分を触ろうとした人が、衝撃で倒れたので、びっくりする。

「えっ、この方どうしたの?」

「キャロ、気にするな。
 こいつは、お前の魔力を使おうとしただけだから。」

 レオナルドは倒れた男を睨んでいる。

「そう言えば、前にレオのくれた指輪は魔力を奪う人を攻撃するんだったわね。 

 綺麗なアクセサリーつけている気分だったから、忘れていたけど。

 でも、指輪で、魔力封じしてるのにどうしてわかったのかしら?
 それに、増強した魔力を何に使おうとしたのか、聞いてみたいわ。」

「魔力封じしても、残念ながら鑑定スキルあるやつには誤魔化せない。
 指輪は、完璧じゃないから、魔力を奪おうとするやつを弾き飛ばす結界も張ってある。
 だか、人には充分だが、魔獣には足りないから、気をつけて。

 もし、ギフトを使いたければ、ちゃんとキャロに頼めばいい。
 納得したら、一時的にその指輪を外せば大丈夫だ。

 魔力増強するギフトを勝手に使おうとするやつは、泥棒と一緒だから。」

「それも、そうね。
 レオはできる範囲で、何も知らない私を説得してくれたわ。
 誰よりも怪しかったけど。

 体を急に触ろうとする人を、私は受け入れることができそうにない。
 だったら、わざわざ話を聞く必要もないわ。

 ところで、私はギフトを使おうとしない普通の人とも、触ったりできないってこと?
 ダンスとか。」

「魔力を使おうとしない限り大丈夫。
 じゃないと、キャロに近づくのをみんな怖がるだろ。

 バチンと音がなって、倒れるぐらいには強力だから。」

「もう少し弱くできないの?
 なんだか申し訳なくて。」

「あのぐらいじゃないと、攫われそうになった時、キャロが逃げる時間を稼げない。」

「そうね。
 魔力目的で、攫われたくないわ。」

 レオナルドはいつも先回りして、キャロライナを助けてくれる。

 その一つ一つを知るたびに、キャロライナはレオナルドに守られている安心感で、嬉しくなる。

 明日も治療をしに来ると約束して、二人は転移して、ローレンス邸に戻った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています

朝露ココア
恋愛
「私は妹の幸福を願っているの。あなたには侯爵夫人になって幸せに生きてほしい。侯爵様の婚姻相手には、すごくお似合いだと思うわ」 わがままな姉のドリカに命じられ、侯爵家に嫁がされることになったディアナ。 派手で綺麗な姉とは異なり、ディアナは園芸と読書が趣味の陰気な子爵令嬢。 そんな彼女は傲慢な母と姉に逆らえず言いなりになっていた。 縁談の相手は『陰険侯爵』とも言われる悪評高い侯爵。 ディアナの意思はまったく尊重されずに嫁がされた侯爵家。 最初は挙動不審で自信のない『陰険侯爵』も、ディアナと接するうちに変化が現れて……次第に成長していく。 「ディアナ。君は俺が守る」 内気な夫婦が支え合い、そして心を育む物語。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。 ※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。  元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。  破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。  だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。  初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――? 「私は彼女の代わりなの――? それとも――」  昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。 ※全13話(1話を2〜4分割して投稿)

妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました

コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…

処理中です...