無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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12.骨折を治す

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 次の日、二人は魔獣討伐の本拠地に来ている。

 そこは、瘴気が薄らあり、薄暗い森が広がっている。

 救護室担当の隊員が、すぐに気づき、
 
「お久しぶりです、レオナルド様。
 体の方はもう大丈夫ですか?」

「もう噂になってた?
 かっこ悪いな。」

「いいえ、素晴らしいことだと思います。」

「まぁ、聞いているなら、話は早いな。
 毎日一人ずつのみだけど、俺達で骨折してる人を治そうと思ってる。」

「骨折治療ですか?
 大変助かります。
 一人でも、動ける者がほしいところなので。彼女の影響ですか?」

「まぁ、キャロがやりたいって、言うから。」

「では早速お連れします。」

 救護室の担当者はキャロライナをちらっと見て、二人を案内する。

 救護室に入るとそこには、10人ぐらいの怪我人が包帯を巻いて、ベッドに横たわっていた。

「では、この方をお願いします。
 この方は魔獣討伐で、右手・右足を骨折しています。」

「初めまして、私達は治癒魔法をしています。
 怪我を治しますね。」

 キャロライナが優しく声かける。

「本当なのか?
 だったら頼むよ。」

 レオナルドはキャロライナの手を繋いで、反対の手を怪我人にかざす。

 すると、怪我人の骨折と怪我は瞬く間に治る。

「本当だ。
 すべて治りました。
 歩いてみます。」

 その人は、起き上がりスタスタと歩く。

「ありがとうございます。
 一年は寝たきりになると思っていたところです。

 それにしても、レオナルド様に治癒していただけるなんて、光栄です。

 そっちのお姉さんがやってくれるのかと思ってました。」

 その元怪我人は笑顔で、感謝する。

 すると、周りにいるベッドに横たわる人々が、

「俺も頼めないだろうか?」

 と口々に頼み込む。

 担当者が、

「この方達はたくさんの力がなく、一日に一人と言う約束なんだ。」

 そう説明すると皆一様にがっかりした顔をする。

「ごめんなさい。
 私達は、力がほんの少ししかないんです。
 でも、皆さんの力になりたくて。

 そのかわり、できるだけ毎日来ますから、よろしくお願いします。」

 キャロライナがそう言うと、皆、来てくれただけで嬉しい、希望が持てる、と言ってくれた。

 キャロライナは少しだけ、人の役に立てていることに、胸がいっぱいになり、瞳を輝かせる。

 そんな、キャロライナをレオナルドは優しく、見つめる。

 二人で、救護室から出て、転移しようと歩いていると、男が後ろから走って来て、すれ違いざまにキャロライナに触ろうと手を伸ばした。

 すると、バチンと音がして、その男は倒れた。

 キャロライナは自分を触ろうとした人が、衝撃で倒れたので、びっくりする。

「えっ、この方どうしたの?」

「キャロ、気にするな。
 こいつは、お前の魔力を使おうとしただけだから。」

 レオナルドは倒れた男を睨んでいる。

「そう言えば、前にレオのくれた指輪は魔力を奪う人を攻撃するんだったわね。 

 綺麗なアクセサリーつけている気分だったから、忘れていたけど。

 でも、指輪で、魔力封じしてるのにどうしてわかったのかしら?
 それに、増強した魔力を何に使おうとしたのか、聞いてみたいわ。」

「魔力封じしても、残念ながら鑑定スキルあるやつには誤魔化せない。
 指輪は、完璧じゃないから、魔力を奪おうとするやつを弾き飛ばす結界も張ってある。
 だか、人には充分だが、魔獣には足りないから、気をつけて。

 もし、ギフトを使いたければ、ちゃんとキャロに頼めばいい。
 納得したら、一時的にその指輪を外せば大丈夫だ。

 魔力増強するギフトを勝手に使おうとするやつは、泥棒と一緒だから。」

「それも、そうね。
 レオはできる範囲で、何も知らない私を説得してくれたわ。
 誰よりも怪しかったけど。

 体を急に触ろうとする人を、私は受け入れることができそうにない。
 だったら、わざわざ話を聞く必要もないわ。

 ところで、私はギフトを使おうとしない普通の人とも、触ったりできないってこと?
 ダンスとか。」

「魔力を使おうとしない限り大丈夫。
 じゃないと、キャロに近づくのをみんな怖がるだろ。

 バチンと音がなって、倒れるぐらいには強力だから。」

「もう少し弱くできないの?
 なんだか申し訳なくて。」

「あのぐらいじゃないと、攫われそうになった時、キャロが逃げる時間を稼げない。」

「そうね。
 魔力目的で、攫われたくないわ。」

 レオナルドはいつも先回りして、キャロライナを助けてくれる。

 その一つ一つを知るたびに、キャロライナはレオナルドに守られている安心感で、嬉しくなる。

 明日も治療をしに来ると約束して、二人は転移して、ローレンス邸に戻った。


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