無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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11.治癒魔法の後始末

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 朝起きると、エイダがレオナルドが目覚めたと教えてくれた。

 キャロライナは、嬉しくなり、急いで、着替えをして、食堂に入る。

 レオナルドは長く寝込んだために、やや痩せていたが、目の前に広がるたくさんの料理をすごい勢いで食べている。

「レオ、目覚めて良かった。
 ごめんなさい。
 そして、ありがとう。」

「ん?
 とりあえず、話は後。」

 何かこの感じは前にもあった。

 あの時は、お互いにほぼ初対面なのに無言でお腹がいっぱいになるまで、食べていたんだった。

 でも、レオがもりもり食べているのを見るのが、こんなに幸せなことだなんて、前は思わなかった。

 横には、笑顔のトラバスがいて、レオナルドを見つめている。

「トラバスさん、私、トラバスさんの気持ちが、わかるようになりました。」

「そうですか。
 仲間ができて、嬉しいです。」

「何の話?
 俺が寝てる間に何かあった?」

 レオナルドは、二人の顔を交互に見る。

「いえ、ただ共感しただけです。」

「何だよ、それ。」

「いいから、レオは食べて。
 ふふ。」

「変なやつ。」

「さぁ、キャロライナ様も食べてください。」

「ありがとう。」

 そう言って、二人はトラバスが用意したたくさんの料理を、すごい勢いで食べた。




 食事を食べ終わると、キャロライナとレオナルドは庭園に移動し、お茶を飲む。

「レオ、改めてありがとう。
 レオが寝ている間に、リーフェン様がいらして、落ち込む私を励ましてくださったわ。」

「リー来てたの?」

「はい、レオが心配でいらしたみたいで、顔を見て、大丈夫っておっしゃってくださいました。
 そして、レオに今回のことをおめでとうって言えば、喜ぶと。」

「あいつ、そんなことまで話したの?
 しゃーないやつ。
 まぁ、いいけど。
 昔の話だから。」

「思ったのですが、二人がいれば、瀕死の人は負担が大き過ぎるけど、骨折くらいなら、治せますよね。

 だったら、毎日一人ずつ骨折している人を治していきませんか?
 骨折が治ったら、大分生活し易くなりますよ。」

「そりゃそうだけど、そんなことしたら、骨折してるやつが、国中から殺到する。

 そして、その中から、毎日一人選ぶのしんどいよ。
 選ばれないやつが、文句を言ってくるだろうし。」

「そうですね。
 重症な人からって言っても、私達には見た目ではわかりませんしね。
 みんなの助けになりたいのに。」

「まぁ、あるとしたら、魔獣と闘う魔法騎士が、中心かな。
 彼らは、王国の民のために働いているから。

 彼らには、治癒魔法師ついてるけど、数が足りないだろうから。

 治癒魔法を受けるのは、死にそうなやつが優先だから、骨折程度なら、放置されているだろう。」

「それなら、私達でも活躍できますね。
 じゃあ、早速行きましょう。

 コツコツと地味でも続けたら、結果がついてきます。」

「おい、俺、今日目覚めたばっかりだせ。
 扱い荒くない?」

「そうでした。
 すみません。」

「まぁ、一人ぐらいなら、何とかなるから、散歩がてらに行ってみるか?」

「はい。」

「レオナルド様、今よろしいでしょうか?」

 トラバスが親子を伴って、近づいて来る。

「お姉さ~ん。」

 そう言って駆け寄って来るのは、あの時の少年マルコだった。

「ママを治してくれて、ありがとう。
 お姉さんはもう大丈夫?」

「久しぶりね、こんにちは。
 私は元気よ。
 どうしてここに。」

「レオナルド様から、連れて来るように指示されておりまして、先程、馬車でこちらに到着しました。」

 トラバスが説明する。

「そうですか、レオが?」

「ああ、実際、病気は治ったとしても、二人だと生活が成り立たないから。 

 しばらく、ここで療養して、落ち着いたら、村に帰ってもいいし、このまま、ここで働いてもいい。」

「治療していただき、ありがとうございます。
 それに、その後の生活まで見ていただけるなんて。

 夫を早くに亡くし、息子と二人で頑張って来ましたが、私が病気になってしまってからはどうにもならなくて。
 感謝しても、しきれません。」

「まぁ、しばらく休んで元気になったら、これからのことを考えたらいいよ。」

 そうレオナルドが言うと、二人は何度もお礼を言いながら、トラバスに案内されて、使用人用の棟に戻って行った。

 見送るキャロライナは、

「レオ、いつの間に、二人がこちらに来れるようにしていたの?
 あの、魔力切れの時?
 凄すぎるわ。
 ありがとう。」

「俺はトラバスに指示しただけだ。
 実際に馬車を手配したりしたのは、トラバスだから。」

 キャロライナは強い脱力感で、動けもしなかった自分と、瞬時に判断して動くレオナルドの違いが、わかりすぎて、感謝と共に羨望を覚えるのだった。
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