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10.治癒魔法の話

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 キャロライナが目が覚めると、ローレンス邸の客室のベッドの上だった。

 おぼろげながらの記憶を組み合わせると、レオナルドに抱えられて、ベッドに寝かされた気がする。

 レオナルドも同じように辛い状態なんだから、何とか自分でとは思うけれど、酷い脱力感で、結局自分ではどうにもできなかった。

「キャロライナ様、お目覚めですか?」

 心配そうなエイダが顔を覗き込む。

「ええ、私、レオに連れて来てもらったのよね。
 何となく覚えているんだけど。」

「はい、その後、眠られて、もう三日経ちました。」

「えっ、そんなに?」

「はい、とても心配しましたよ。
 目覚められたなら、もう大丈夫だとは思いますが、レオナルド様はまだ、お目覚めになっておりません。」

「えっ、そうなの。
 大丈夫かしら。」

「私どもは、何ともわからないのです。」

「そう。」




 その後、二日経っても、レオナルドは目覚めることはなく、キャロライナは庭園でお茶を飲みながらも、レオナルドを想い、心配げに俯いている。

 そこへ、

「やあ、元気がないね。
 もう五日間、目覚めないって聞いて、レオの様子を見て来たよ。」

 平服を着たリーフェン国王が木々の隙間から、現れた。

 どうやら、レオが心配で、王宮から転移して来たらしい。

「リーフェン様、お久しぶりです。」

 立ち上がって、礼をしようとすると、

「いいよ。
 今はレオの友人として来ているから。」

「リーフェン様にも、心配をおかけしてすみません。

 私が、治癒魔法を使ってほしいと言ったばっかりに、レオに魔力切れを起こさせてしまいました。」

「ああ、聞いたよ。
 悲しむ子供に同情したんだろう?」

「仕方ないさ。
 レオが元平民って言うのは知ってる?」

「はい、伺ってます。」

「あいつは、今回の子と同じように、母親を病気で亡くしている。

 妹がいるから、母親が亡くなった後も、一人ではないけれど、あの子が自分に重なって見えたんだろう。

 だから、レオナルドは、自分に魔力があるのがわかってからは、必死に治癒魔法の訓練をしていたんだ。

 結局、そっちは全然ダメで、妹を養うために、魔獣討伐の前線で、魔法騎士として魔獣を倒して、稼いでいたんだ。

 でも、本当はあいつが一番やりたかったのは、治癒魔法で、擦り傷程度しか治せないのに、魔力切れを起こしながら、必死になって訓練をやっていたのを思い出したよ。

 今回は、その母親をちゃんと治せたんだろう?
 だとしたら、一番喜んでいるのは多分あいつだよ。

 だから、キャロは気にしなくていい。
 どうやったって、今までできなかったことを、君のおかげでできたんだから。」

「そうだったんですね。
 私はレオが万能のように勘違いをして、レオに無理をさせてしまったって、後悔をしていました。」

「むしろ、あいつが起きたら、ありがとうって言ってやってくれ。

 おめでとうでもいいくらいだけど、さすがに、お前が言うなってつっこまれそうだけど。

 レオはそのうちちゃんと目覚めるから、大丈夫だよ。
 今まで何回も見て来た俺が、言うんだから。」

「ありがとうございます。
 とても心強いです。
 私にとってレオは、とても大切な存在なんです。

 彼がいて初めて、私でも人の役に立っているなって思えて、彼とずっと一緒にいたいんです。」

「すごいこと言ってる自覚ある?」

「えっ、おかしいですか?」

「いや、わからないならいいや。
 いつか、あいつに言ってやってくれ。

 あいつ、やばいだろうな。
 じゃ、忙しいからまたねー。」

 そう言って、木々の隙間に消えて行った。



 それから、レオナルドが目覚めたのは、さらに二日後だった。

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