無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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15.討伐の助手

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 ある日、王宮から討伐の依頼が来た。

 朝食の席で、
 
「俺、ちょっと魔獣倒しに辺境に行って来るから、キャロは留守番だよ。」

「えっ、一緒についてこいって言うところよ、それ。」

「だって、他のやつもいるところで、魔力アップするために手繋いで、魔獣と闘うってシュールだわ。
 そもそも、魔獣討伐で魔力不足とか、感じないし。」

 レオナルドは魔力アップのためとは言え、少しでも危険なところにキャロライナを連れて行きたくないので、誤魔化す。

「でも、私といたら、魔力が強いから、魔獣討伐が早めに終わって、傷つく人とか、少しでも減らせるのではないの?」

「それは、そうだけど、手繋いでって、なんかもう面倒だわ。

 討伐なのに、片手で闘い、なおかつ自分達には二人の結界をはって、全然集中できない。」

「そうね、わかったわ。
 せめて、本部を置くところで、待ってるのは?
 怪我人とか、出るでしょ。
 そこで私は待機してたらいいと思うの。」

「本部のやつらが、信用できない。」

「私には、この指輪があるから、魔力を奪おうとする人を弾き飛ばすもの、大丈夫よ。」

「心配なのはそれだけじゃない。」

「えっ、何?」

「わからないなら、いい。
 この話はおしまい。」

 そう言って、レオナルドは朝の鍛錬に行ってしまった。

「もう、レオったら。
 気持ちは話し合うって決めたばっかりなのに。」

「私から、お伝えしても?」

「トラバスなら、わかるの?
 さすが、付き合い長いだけあるわね。
 ぜひ、教えて。」

「はい。
 レオナルド様は自分がいない所で、他の男をキャロライナ様に近づけたくないのですよ。」

「魔力を奪うとかではなく?」

「はい、魔力関係なくです。」

「レオナルド様にとって、キャロライナ様は大切な存在だと言うことです。」

「えー、そんな理由?」

「はい、だから、今回は留守番をして差し上げたら、よろしいのでは?」

「うーん、納得できない気もするけど、闘いに集中できなくて、何か怪我とかしたら、大変だから、レオの言うことを聞くわ。」

「それが、よろしいです。」

 次の日、軍馬に乗って、レオナルドは辺境に旅だった。



 数日後、レオナルド宛てにオーブリー王国に住んでいる妹から、手紙が届き、トラバスが困っていた。

「キャロライナ様、レオナルド様はしばらく戻るのにかかるかもしれないのですが、妹さんからレオナルド様宛てに、すぐに助けに来て欲しいとの、手紙が届いてまして、いかがするべきか、困っております。」

「リーフェン様に手紙を書いて、誰か魔法師をつけてもらって、代わりに私が妹さんのところに行くわ。
 私はオーブリー王国にも詳しいし。」

「危険ではないですか?
 オーブリー王国では、二人はお尋ね者なのですよね?」

「ええ、だから、認識阻害魔法をかけてもらいながら、行くわ。」

「レオナルド様を待った方が良いのでは?」

「大丈夫よ。
 助けを待ってるのなら、行かないと。」



 リーフェン王はすぐに、魔法師を紹介してくれて、次の日には、その魔法師と二人で、オーブリー王国に転移した。

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