無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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7.王との接見

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 次の日、朝食の席でレオナルドは、

「そろそろ、俺の上司に今までのこと、報告に行かないといけないからさ、キャロも行くよ。
 エイダにローブ渡してあるから、それを着て。」

「わかりました。」



 そう言って連れて来られたのは、ダーネル王国の王宮だった。

 そして、それはオーブリー王国の王宮より、一回り大きく、荘厳だった。

 キャロライナは何故か王の間のソファに座り、王と親しげに話すレオナルドの話を聞いている。

 ダーネル王国の王は、はつらつとした中に高貴な雰囲気を漂わせた空色の瞳の中年の男性だった。

「そう言うことで、この子が俺の助手、キャロ。」

「キャロライナ・グウェンです。
 よろしくお願いします。」

 この国の正解が分からないけど、とりあえず、カーテシーする。

 もう、王に会うって、先に言っておいて、レオ。

「かしこまらなくて、いいよ。
 私はレオとは古い付き合いでね。

 私のことはリーフェンと呼んでくれ。
 リーでもいい。」

「私などが、愛称でお呼びするなど、リーフェン様と呼ばせてください。」

「ああ、それでいいよ。
 だけど、面白いね。

 この男は普段は他の者と連んだり、魔法の使い方を指導したりなど、一切しない一匹狼みたいな男なんだよ。

 私の頼みなら、渋々従うが。

 確かにキャロのギフトはレオにとっても、プラスになる。

 それでも、レオの場合、元々魔力は潤沢にあるから、あえて増やさないといけない場面はほとんどないんだよ。

 なのに、わざわざ指輪までつけさせて、連れて歩くなんて。」

 リーフェンはキャロライナとレオナルドを交互に見比べて、クスッと笑う。

キャロライナはリーフェンが何か誤解をしていると思って、慌てて説明する。

「違います。
 私は今回のことで、住む家も家族も失ってしまいました。

 レオナルド様は私を気の毒に思って、ローレンス邸においてくださっているのです。

 それに、私には魔力を隠すためのものが必要で、私がたまたまこの指輪を気に入っただけで、私達はそう言うんじゃ。」

「まぁ、いい。
 今日は面白いものが見れたよ。

 レオが無事だったことは良かったんだが、今君達は、オーブリー王国では、お尋ね者になっていると報告が上がっているよ。

 地下牢の中で転移魔法を披露したそうだからね。」

「ああ、それしか方法が無かったからな。」

「この国まで、追っ手が来るかもしれないから、充分気をつけるように。

 それにしても、オーブリー王国はレオのこと手放したのを、大分後悔してるだろうね。
 まぁ、手懐けることもできないだろうけど。」

「俺を手に入れたって、意味ないのにな。
 俺があいつらの言うこと聞くはずないのに。

 腐ってるよ、あの国。
 さすがに懲りた。

 もう行きたくないけど、妹が心配だから、どうするかなぁ。」

「影を使って、情報を探らせているから、しばらく大人しくしているといい。」

「うん、助かる。」

「退屈しのぎに森の湖の浄化に、二人で行かないか?
 キャロにも、いい経験になるだろ?」

「そうだな。
 キャロのギフトのすべてがわかったわけじゃないし、二人で魔力を使う訓練になるな。
 行ってくるよ。」

「じゃ、オーブリー王国のこと、何かわかったら、また呼び出すよ。」

 そう言って、リーフェン王は執務室へと戻って行った。

 王を見送ると二人はローレンス邸に戻った。

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