無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す

月山 歩

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5.知らなかったギフト

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 身支度を整えた後に、エイダに案内された食堂には、大きなテーブルがあり、整ったお顔の男性が、ガツガツとすごい勢いで目の前の料理を食べている。

「悪いけど、俺二週間ぐらいまともに食べてなかったから、先に食べてたよ。」

 その声は、レオ?
 お髭を剃り、髪を短く切ったらしく、別人のようになっている。
 銀髪に青色の瞳。
 意思の強そうな、キリッとした横顔。
 だか、栄養不足のためか、顔色は悪く、やつれている。

「はい、どうぞ。
 そんなに、牢の中にいたんですか?」

「ああ。
 とりあえず、好きなの食べて。」

「ありがとうございます。」

 目の前には体に良さそうなおかゆから、大きめの肉の塊まで、ありとあらゆる食べ物が広がっている。

「お二人がどのようなものを望んでいるのか、わかりませんでしたので、色々ご用意させていただきました。」

 執事のトラバスは悩んで、いっぱい準備してくれたようだった。

「ありがとう。
 俺もろくに食べてなかったから、自分でも何を食べるべきなのか、よくわからないよ。
 おかゆにすべきか、がっつり肉か。
 とりあえず、気になった物からすべて食べてた。」

 それから、二人はお腹が満足するまで、黙々と食べた。

 一通り食べ進めると、レオナルドは、

「満足したら、話は応接室でしようか。」

 と言い、キャロライナはとりあえず、頷いた。



 その後、二人は応接室で向かい合い、食後のお茶を飲んでいる。

「何から話そうか。

 ここはダーネル王国って言って、キャロのいたオーブリー王国の隣に位置している国だ。

 勘づいているかもしれないけど、俺は魔法師なんだ。

 それで、オーブリー王国に妹がいるんだが、子供が生まれたって連絡が来て、会いに行ったら、捕まって、オーブリー王国の役人に、

「ここで、王宮魔法師になれ。」

 って言われて、断ったら、首に魔力封じつけられて、あの地下牢に入れられたってわけ。

 どうにかすることも考えたけど、妹を盾に取られて、抵抗することを諦めたんだよ。」

「そんな酷い。」

「オーブリー王国は圧倒的に魔法師が少ないから、何が何でも捕まえたかったんだろうけど、オーブリー王国の魔法師なんて、最低だわ。

 何をやらされるか、わからない。

 キャロだってそうだろ?
 ろくに調べもしないで、罪人に仕立て上げられてさ。」

「うん。
 レオに会わなかったら、私、牢に一生幽閉だったし、レオのおかげで、それは免れたけど、結局、婚約破棄と家系からの追放だよ。

 私この先どうしたら、いいのかわからないわ。」

 キャロライナはがっくり項垂れる。

「それに関してだけど、俺の助手になって、ここに一緒に住まないか?」

「えっ、いいんですか?」

「まぁな、ここからが本題なんだけど、キャロはさ、自分のギフトに気づいてる?」

「ギフトですか?
 あの稀に天から授けらると、噂の?
 私何も持ってませんよ。」

「それがあるんだよ。
 じゃなかったら、牢の中から、俺達転移出来なかったよ。」

「えっ、あれってレオの力じゃないんですか?」

「俺あの時すでに、魔力を封じられていたから。
 ほら、これ。
 俺ずっとつけてるだろ。」

 そう言って、レオは首についた太くて、硬そうな鉄製の首輪を指差す。

「そう言われれば、ずっとつけてましたね。
 確かに。
 えっ、じゃどうして、魔力使えたのですか?」

「キャロのギフトが人の魔力を増強するものだからだよ。
 大体半分くらい増強するんだ。

 だから、俺レベルになると魔力封じつけられても、体の周りに湯気みたいに溢れているんだよ。

 その分を、キャロに増強してもらうだけで、転移魔法ぐらいは使えると言うわけ。

 ただ、発動方法が体の一部を必ずくっつけないといけないんだ。

 今まで、知らないやつに手を握られたり、体触られたことない?」

「あ、あります。
 何故かぶつかって来る人もいました。」

「多分、そいつら、魔法師。
 ぶつかったりして、一時的に魔力増強してたんだよ。」

「そんな、私はわからないのに、勝手にギフト使われてたってことですか?
 何か気持ち悪い。
 それって防げないですか?」

「できるよ。
 それも含めて、今後のこと話そうか。」


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