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12.王子、王宮に帰る
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王妃様はついに、各方面の根回しをして、我が邸に、ユリウス第一王子を迎えに来た。
ユリウス王子は、コーデリアを見つめ一瞬悲しい顔をしたけれども、いずれこのような時が来ると覚悟していたためか、王宮に戻ることに同意した。
僕達は見送る育ての親みたいな気分になり、コーデリアは涙を流して、ユリウス王子と抱き合って、別れを惜しんだ。
そして、ユリウス王子は王宮に戻って行った。
その後、王宮内の主要の貴族が集まる会合で、王より発言があったらしい。
僕みたいな一般貴族は知らないが、その場で、僕をユリウス王子の側近に指名するとあったらしい。
噂を聞いた僕は驚いたけれども、その後、王妃様に呼び出され、
「あなたをユリウス王子付きにしたわ。
ユリウス王子は帰ってから、見違えるように頑張っているわ。
でも、時々寂しそうな表情をするのよ。
私達には言わないけれど。
だから、ユリウスのそばにあなたをつけることにしたわ。
ユリウスをそばで守ってやって。」
「承知しました。
必ずユリウス様の支えになると誓います。」
そう言うと、王妃様は満足気に頷いた。
「ところで、あなたの奥さんは何か得意なことがあるかしら?
ユリウスの教育係として、彼女もそばに置くことにするわ。」
「すみません、わかりません。」
「だったら、確認して来て。
歴史でも、語学でも、ダンスでもいいわ。」
「わかりました。」
その後の王宮内では、僕の異例の抜擢に嫌みを言うやつや、反対に僕に擦り寄って来るやつなどさまざまだったが、もう僕はそんなの気にしない。
僕はユリウス王子を守る側近に徹するのみ。
そこには、揺るぎない強い気持ちが存在していた。
いつから、僕はそんなに強い人間になったのだろう?
日々退屈しながらも、目立つことなく執務をやり過ごすのが、いつもの自分だった。
それが、コーデリアと出会ってからは、人に親切に世話することに、ためらいはなくなった。
それはコーデリアの影響であり、コーデリアのおかげと言える。
そして、コーデリアといるうちに気がついたら僕は、異例の出世まで果たした。
ユリウス王子を守るためなら、僕はどんな相手にもひるまないし、彼を全力で支えると誓う。
なんだかんだで、一番コーデリアによって、助けられ、感謝しているのは、結局僕だった。
ねぇ、コーデリア。
君は大好きな王子のそばに行くのに、何か人に教えられるほど、得意なことはあるかい?
僕にはやらかす君しか、思い出せないけれど。
完
ユリウス王子は、コーデリアを見つめ一瞬悲しい顔をしたけれども、いずれこのような時が来ると覚悟していたためか、王宮に戻ることに同意した。
僕達は見送る育ての親みたいな気分になり、コーデリアは涙を流して、ユリウス王子と抱き合って、別れを惜しんだ。
そして、ユリウス王子は王宮に戻って行った。
その後、王宮内の主要の貴族が集まる会合で、王より発言があったらしい。
僕みたいな一般貴族は知らないが、その場で、僕をユリウス王子の側近に指名するとあったらしい。
噂を聞いた僕は驚いたけれども、その後、王妃様に呼び出され、
「あなたをユリウス王子付きにしたわ。
ユリウス王子は帰ってから、見違えるように頑張っているわ。
でも、時々寂しそうな表情をするのよ。
私達には言わないけれど。
だから、ユリウスのそばにあなたをつけることにしたわ。
ユリウスをそばで守ってやって。」
「承知しました。
必ずユリウス様の支えになると誓います。」
そう言うと、王妃様は満足気に頷いた。
「ところで、あなたの奥さんは何か得意なことがあるかしら?
ユリウスの教育係として、彼女もそばに置くことにするわ。」
「すみません、わかりません。」
「だったら、確認して来て。
歴史でも、語学でも、ダンスでもいいわ。」
「わかりました。」
その後の王宮内では、僕の異例の抜擢に嫌みを言うやつや、反対に僕に擦り寄って来るやつなどさまざまだったが、もう僕はそんなの気にしない。
僕はユリウス王子を守る側近に徹するのみ。
そこには、揺るぎない強い気持ちが存在していた。
いつから、僕はそんなに強い人間になったのだろう?
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それが、コーデリアと出会ってからは、人に親切に世話することに、ためらいはなくなった。
それはコーデリアの影響であり、コーデリアのおかげと言える。
そして、コーデリアといるうちに気がついたら僕は、異例の出世まで果たした。
ユリウス王子を守るためなら、僕はどんな相手にもひるまないし、彼を全力で支えると誓う。
なんだかんだで、一番コーデリアによって、助けられ、感謝しているのは、結局僕だった。
ねぇ、コーデリア。
君は大好きな王子のそばに行くのに、何か人に教えられるほど、得意なことはあるかい?
僕にはやらかす君しか、思い出せないけれど。
完
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ありがとうございます
こちらは結構前の作品なので、読んでいただけるなんて、光栄です