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7.綺麗な肌

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 しばらく、酷い匂いをみんなで我慢すると、タイラー様の肌は見違えるほど、綺麗になった上に、白い顔は、シミ一つなかった。

 きめ細かな肌は、いつもクリームを塗っている私の肌にも、負けない滑らかさだった。

 そして、何より、顔の作りは、驚くほど整っている。

 そして、紫色の瞳に金髪で、とても美しい。

「タイラー様、タイラー様って、かっこいい方だったんですね。」

「えっ、そうなのか?」

「そうです。」

 ロドルフは、自慢気に答えると、鏡を持って来た。

 タイラー様は、自分のお顔をしげしげと見ている。

「そうだね。
 僕、かっこいいね。」

「はい。」

「ふふふ。
 三人で、かっこいい、かっこいいって。

 でも、タイラー様は、体を掻いても、顔まで手を伸ばすのが大変で、顔は、掻いてなかったですね。

 それが、良かったのかも。

 そして、外にも出ないから、シミもないですし。」

「これで、少しはマリアと釣り合う男になれたかな?」

「タイラー様、最初から、タイラー様は、私にもったいないくらい優しい方でした。」

「そう言われたら、嬉しいな。
 なんか、体も動くんだよ、前より。

 ブツブツが無くなると、皮膚が突っ張らないからだと思うんだけどね。」

「タイラー様、素晴らしいですわ。

 だったら、タイラー様、車椅子に乗って、お散歩に行きませんか?

 庭園まで。」

「ああ、それぐらいならすぐできそうだよ。

 以前は、皮膚が突っ張って、すぐにやめたけれど、最近は起きてる時間が長くても、大丈夫になって来てたんだ。」

 タイラー様は、ロドルフに、ベッドから移してもらい、車椅子に座った。

「ああ、皮膚がひきつれて、痛くなることもないや。
 これなら、座っていられる。」

 庭園では、ロドルフが、車椅子を押し、私はタイラー様の車椅子の横を歩く。

「風が気持ちいいね。」

「ええ、タイラー様とお散歩できるなんて、夢のようですわ。」

「僕もそう思うよ。」

「マリア、お花摘みしないかい?
 君が摘んだ花を持つのが、夢だったんだ。」

「はい、そうしましょう。」

「私も夢でした。」

 私達は、私が花を摘んで、タイラー様に持ってもらい、ロドルフが車椅子を押す。

 この些細なことで、幸せいっぱいだった。 

 そして、それは、日課になり、しだいにタイラー様は、お花摘みを、ゆっくり歩いて行えるまで、回復して行った。

 動けるようになって来ると、タイラー様は、昼間は、この別邸の執務をしたり、私と散歩したり、ゆっくりならば、すべてのことができるようになっていた。

 二人で手を繋いで、庭園を歩いていると、これはお世話なのか、ただのカップルの散歩なのか、もうわからない。

 タイラー様は、顔のブツブツが消えてから、かっこ良くなったので、以前よりもっと私は、二人でいると、胸がドキドキしている。

 でも、それは、タイラー様には、秘密である。

 もう、タイラー様は、安定して歩けるようになったから、もう手を繋ぐのはやめますかと、聞いたら、絶対にダメと珍しく強く否定された。

 だから、これはカップルの散歩なのでしょう。


 そんな、ある日、王都のタイラー様のお父様から、タイラー様宛に、書状が届く。

 それを見て、タイラー様は、険しい顔を浮かべる。

「マリア、王都に戻らないといけなくなった。

 第一王子が、ご成婚されるそうだ。
 だから、貴族は全員、ご成婚披露パーティーに出席しなければならない。

 僕は、療養中だから、無理しなくていいとあるが、兄とマリアの妹さんが、父の邸にいる。

 君は、彼らと一緒にパーティーに出席しなければならないから、僕も行くよ。」

「そうですか。
 タイラー様も来て頂けるなら、心強いです。」

「急いで、僕達の衣装を作ろう。」

「はい。」

 その日から、半年後の、ご成婚披露パーティーまでに、揃いのドレスやタキシード、王都で着るドレスなど、数着揃えて、作った。

 私は、もうカーステン様のことは、何とも思っていなかった。

 でも、タイラー様は、私が初めてカーステン様と会うことを、とても気にしているように思えた。

 その理由は、王都に着いて、カーステン様と会った時にわかるのだった。

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