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4.別邸での暮らし
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別邸のタイラー様の部屋は、大きな窓から、庭園が見える窓がついている広い部屋だった。
タイラー様は、王都では暗く閉め切った部屋を好んでいたが、私もタイラー様のベッドサイドにいることが多いため、私とロドルフがカーテンや窓も開けても、彼はダメとは言わない。
なので、私はお部屋は明るい方が良いと思い、庭園で摘んだ花をお部屋の花瓶にいけることにした。
タイラー様の部屋に行くと、
「マリアは、随分長く庭園にいたね。」
「ええ。
この部屋に合うお花を摘んでいましたの。」
「ああ、声が聞こえていたよ。」
「うるさくて迷惑でした?
窓が開いているから聞こえるのね。」
「迷惑じゃないよ。
楽しそうだから、声だけじゃなく姿も見たいなぁと思っていたんだ。」
「でしたら、庭園に行く前にロドルフに背中の後ろに枕などを入れてもらって、タイラー様の体を起こすのはどうでしょうか?」
「君は、僕が姿を見たいと言っても、嫌じゃないの?」
「どうして?
嫌なわけないじゃないですか?
婚約者なんですから、姿を見たくても当然ですよ。」
「私だって、タイラー様が高熱を出している時、心配でもっと近くでタイラー様を見たいと言って、ロドルフに止められたのですから。」
「そうだったんだ。
知らなかった。
ロドルフは、君を病気から守ろうとしたんだよ。」
「ええ、伺いました。」
「でも、私は病気がうつってもいいから、タイラー様のそばに行きたかったです。」
「いや、それはダメだ。
ロドルフが正しい。」
「僕は、いつどうなるかわからない身なんだ。
熱が出ている時は、マリアは、僕に絶対に近寄ってはいけない。」
「そんな。
どうなるかわからないなら、なおさらそばにいたいのに。」
「ダメだ。
これだけは約束して。
君を巻き込みたくないんだ。」
「わかりました。」
わかってないけれど、そう言うしかないわね。
タイラー様が、わたしを大切に思っていてくれているのはわかるから。
「話は戻りますけれども、庭園でお花を摘む私をみたいなら、背中に枕を入れて、体を起こしてみますか?
ご飯を食べる時みたいに。」
「そうしてみるかな。」
タイラー様は、私のやっていることをみたいのね。
それを知った私は、ご飯を食べる時だけではなく、花をいけたり、本を読んだりする時もなるべく、タイラー様の寝室で行うようにする。
私をこんなに見たいと言ってくれる人は、初めてだったので嬉しく思う。
翌日から、
「ロドルフ、タイラー様の後ろに枕を入れて、タイラー様の体を起こして。」
「はい、いいですが、どうしてですか?」
「タイラー様が、お花摘みをする私を見たいのですって。」
「はい、わかりました。」
ロドルフはニヤニヤしながら、タイラー様の背中の後ろに枕を入れ、タイラー様の体を起こす。
「ロドルフ、何か言いたそうだな。」
「いえいえ、僕は何も。」
ロドルフは、私のお花摘みを手伝うために、一緒に庭園に出る。
そして、私がお花を摘んで、ロドルフが持つ。
その様子を見ていたタイラーは、庭園でのマリアを、見たいと言ったのは自分なのに、いざ見るとつらくなる。
本当は、僕が、マリアのお花摘みを手伝いたいのに。
庭園にいるマリアは、まるで天使のように美しい。
もし、君も僕のようにボツボツ顔であったのなら、僕はもう少し君と釣り合うのではないかと、思ってしまうんだよ。
君を抱きしめることすらできないのに、こんな僕を拒否しない彼女を、どんどん好きになってしまう。
君は、兄を本当に諦めることができるのだろうか。
兄と僕では、余りにも持ちうるものが違いすぎる。
僕は何もできないし、君に何もしてやれない。
なのに、君を離したくないと思い始めている自分が怖い。
「タイラー様~。」
そう言って、マリアは花を摘みながら、時折、僕を振り返っては、笑顔で手を振ってくる。
なんてかわいいんだろう。
マリアは美人だけど、それだけでなく、僕を気遣って、時々手を振ってくれる優しさもある。
無理だよ。
こんなの。
好きにならずにいられないよ。
僕はもう、自分の気持ちが無くなることはないことを認めた。
「ただいま、タイラー様。
今日は黄色いお花達を集めて来ました。
かわいいでしょ?」
「そうだね。」
もちろん、花束を持つ君が。
ロドルフは僕をチラリと見ると、わかります、わかりますと頷いた。
タイラー様は、王都では暗く閉め切った部屋を好んでいたが、私もタイラー様のベッドサイドにいることが多いため、私とロドルフがカーテンや窓も開けても、彼はダメとは言わない。
なので、私はお部屋は明るい方が良いと思い、庭園で摘んだ花をお部屋の花瓶にいけることにした。
タイラー様の部屋に行くと、
「マリアは、随分長く庭園にいたね。」
「ええ。
この部屋に合うお花を摘んでいましたの。」
「ああ、声が聞こえていたよ。」
「うるさくて迷惑でした?
窓が開いているから聞こえるのね。」
「迷惑じゃないよ。
楽しそうだから、声だけじゃなく姿も見たいなぁと思っていたんだ。」
「でしたら、庭園に行く前にロドルフに背中の後ろに枕などを入れてもらって、タイラー様の体を起こすのはどうでしょうか?」
「君は、僕が姿を見たいと言っても、嫌じゃないの?」
「どうして?
嫌なわけないじゃないですか?
婚約者なんですから、姿を見たくても当然ですよ。」
「私だって、タイラー様が高熱を出している時、心配でもっと近くでタイラー様を見たいと言って、ロドルフに止められたのですから。」
「そうだったんだ。
知らなかった。
ロドルフは、君を病気から守ろうとしたんだよ。」
「ええ、伺いました。」
「でも、私は病気がうつってもいいから、タイラー様のそばに行きたかったです。」
「いや、それはダメだ。
ロドルフが正しい。」
「僕は、いつどうなるかわからない身なんだ。
熱が出ている時は、マリアは、僕に絶対に近寄ってはいけない。」
「そんな。
どうなるかわからないなら、なおさらそばにいたいのに。」
「ダメだ。
これだけは約束して。
君を巻き込みたくないんだ。」
「わかりました。」
わかってないけれど、そう言うしかないわね。
タイラー様が、わたしを大切に思っていてくれているのはわかるから。
「話は戻りますけれども、庭園でお花を摘む私をみたいなら、背中に枕を入れて、体を起こしてみますか?
ご飯を食べる時みたいに。」
「そうしてみるかな。」
タイラー様は、私のやっていることをみたいのね。
それを知った私は、ご飯を食べる時だけではなく、花をいけたり、本を読んだりする時もなるべく、タイラー様の寝室で行うようにする。
私をこんなに見たいと言ってくれる人は、初めてだったので嬉しく思う。
翌日から、
「ロドルフ、タイラー様の後ろに枕を入れて、タイラー様の体を起こして。」
「はい、いいですが、どうしてですか?」
「タイラー様が、お花摘みをする私を見たいのですって。」
「はい、わかりました。」
ロドルフはニヤニヤしながら、タイラー様の背中の後ろに枕を入れ、タイラー様の体を起こす。
「ロドルフ、何か言いたそうだな。」
「いえいえ、僕は何も。」
ロドルフは、私のお花摘みを手伝うために、一緒に庭園に出る。
そして、私がお花を摘んで、ロドルフが持つ。
その様子を見ていたタイラーは、庭園でのマリアを、見たいと言ったのは自分なのに、いざ見るとつらくなる。
本当は、僕が、マリアのお花摘みを手伝いたいのに。
庭園にいるマリアは、まるで天使のように美しい。
もし、君も僕のようにボツボツ顔であったのなら、僕はもう少し君と釣り合うのではないかと、思ってしまうんだよ。
君を抱きしめることすらできないのに、こんな僕を拒否しない彼女を、どんどん好きになってしまう。
君は、兄を本当に諦めることができるのだろうか。
兄と僕では、余りにも持ちうるものが違いすぎる。
僕は何もできないし、君に何もしてやれない。
なのに、君を離したくないと思い始めている自分が怖い。
「タイラー様~。」
そう言って、マリアは花を摘みながら、時折、僕を振り返っては、笑顔で手を振ってくる。
なんてかわいいんだろう。
マリアは美人だけど、それだけでなく、僕を気遣って、時々手を振ってくれる優しさもある。
無理だよ。
こんなの。
好きにならずにいられないよ。
僕はもう、自分の気持ちが無くなることはないことを認めた。
「ただいま、タイラー様。
今日は黄色いお花達を集めて来ました。
かわいいでしょ?」
「そうだね。」
もちろん、花束を持つ君が。
ロドルフは僕をチラリと見ると、わかります、わかりますと頷いた。
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